相次ぐ公文書の改竄・隠蔽によって激しい批判を浴びている安倍政権。しかし、地方議会に目を向けると、もっとヤバイ腐敗が起きていた!
奈良県北東部に位置する宇陀市の市議会で大勢の議員がグルになって、ある議員の口封じをしているというのだ。早速、現地で関係者に直撃取材を敢行。すると、事態は思わぬ方向に転がって、地元で人気だったというその若手議員の素行にも問題が…。前編記事に続き、レポートする!
■辞職勧告の本当の理由
国会でも与党議員の質問タイムを多く配分することで、野党議員の追及質問を封じようとする動きがあるが、宇陀市はその比ではない。辞職勧告で議員の発言の場を奪い、市に不都合な質問ができないようにするなんて、民主主義の破壊行為だ。
さらに真相に迫るべく、勝井市議を村八分にする市議会議員を取材してみた。ところが、意外な反論が。なんと辞職勧告は談合疑惑を解明しようという勝井市議の質問封じのためではなく、セクハラ、パワハラ防止のためだというのだ。一体、どういうこと!?
議場退出者のひとり、西岡宏泰市議がこう証言する。
「勝井さんは普段から素行が悪くて、これまでにも暴力、暴言などを繰り返してきたんです」
特に酒を飲むと、誰もが顔をしかめるハラスメント男に豹変(ひょうへん)するという。
「懇親会でカラオケに行くと、勝井さんは『ウルトラマンタロウ』の歌をよく歌う。自分の名前も太郎なので、愛唱歌にしているのでしょう。ところがあるとき、勝井さんは『タロウ! タロウ! タロウ!』と熱唱した後、突然、マイクで議長の頭をボッコーンと殴ってしまったんです。店員さんを殴ったり、飛び蹴りすることも珍しくありませんでした」(西岡市議)
宇陀市議会の関係者もこう証言する。
「懇親会、それも2次会、3次会とお酒が入るほど勝井さんは暴れますね。暴力だけでなく、店に居合わせた一般女性のバストをむんずとつかむセクハラ騒ぎを起こしたこともありました」
同市議会の上田德(のぼる)議長に確認してみた。
「カラオケマイクで叩かれたのは私でなく、前の議長です。勝井さんは相手が先輩だろうが、市の職員だろうが関係ありません。まだ若いし、彼には家族もいるから、みんな我慢してきたんですが、もうかばいきれません。辞職勧告はそんな市議会の意思、と受け止めています」
勝井市議への辞職勧告決議案を提出した松浦利久子市議がこううなずく。
「フェイスブックへの不適切な書き込みはきっかけにすぎません。これまでの勝井市議の数々の問題行動が積み重なり、2度の辞職勧告となったんです。全員協議会(議案審議以外の市政上の重要問題を議員全員が検討する場)で勝井市議がセクハラ、パワハラを認め、謝罪している録音テープもある。勝井市議のセクハラ、パワハラは本当のことです」
真っ向から食い違う両者の主張
松浦市議は勝井市議の主張に「すり替え」があると批判する。
「昨年12月のフェイスブックの書き込みで、勝井市議が問題にしていたのは榛原総合センター改修工事の契約変更、追加工事のこと。ところが、この2月末のフェイスブックの投稿ではそれが入札制度のあり方にすり替わっている。
入札制度については市議会もより良いものにしなければいけないと思っているし、他の議員が勝井市議に発言をやめろと強要したこともない。彼は論点のすり替えで、自らのこれまでの行動を正当化しようとしているのです」
こうなると、勝井市議の釈明を聞かなければならない。伝書バトのようにあっちへ行ったりこっちに来たり、全く忙しい。
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―他の市議が辞職勧告はハラスメントが原因だと言っていますが。
「全く身に覚えがありません。そういうことを言っている人は、私に『黙れ』と脅しをかけているんだと思います」
―議長の頭を叩いたり、女性のオッパイをもんだりはしていない?
「本当に記憶にないんです。ある懇親会の時、いったん帰ろうとしたんですが、他の市議たちから呼び戻された。『もっと飲め』と言われて、酒を飲んだのですが、その後の記憶がなくなりました。でも、後日、何も言われませんでしたし…」
―反省の弁が入った録音テープもあるそうですが?
「あれは当時の議長から迫られて、謝罪の弁を口にしただけ。でも、トラブルがあったわけではありません。むしろ、今のような事態に備え、私を口封じするために意図的に謝罪を録音していたのではないか?とさえ思えてきます」
* * *
オイオイ、ここでも勝井市議と宇陀市議会の主張は真っ向から食い違っているじゃないか。不正はあったのか、なかったのか? 村八分にされた市議はハラスメント男だったのか、そうでなかったのか? 混迷する議会の状況に、前出の宇陀市議会関係者がため息をつく。
「フェイスブックへの談合疑惑の書き込みと素行の悪さ。このふたつの理由を抱き合わせて辞職勧告したのがそもそもの間違いなんですよ。素行の悪さの一点に絞って勝井市議に辞職勧告すべきでした。そうしておけば、談合疑惑隠しのために勝井市議を『村八分』にしたのでは、という疑惑も生じていなかったはずです」
いろんな意味で、地方議会の闇は深い。
(取材・文・撮影/ボールルーム)