孤立主義を進めれば、アメリカ自身の長期的な国益も損なわれると語るモーリー氏。

3週間後に迫った米朝首脳会談のカギは、アメリカがいかにして北朝鮮の核廃棄を約束させるかだ。

だが、そのアメリカ自身が国際的な「約束」を軽視する動きを続けている…。これは何を意味するのか?

『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが語る!

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アメリカのトランプ大統領がイラン核合意からの離脱を発表しました。米英仏独中ロの6ヵ国とイランが、オバマ政権時代の2015年に結んだイラン核合意は、経済制裁を解除する代わりにイランの核開発能力を大幅に制限するという内容ですが、トランプは大統領選の頃からこれを「不十分だ」と批判してきました。今秋の中間選挙に向け、自身の支持層に対して「約束は守ったぞ」とアピールする狙いもあるのでしょう。

ただし、この発表で中東情勢は一気に不安定化。イランがイスラエル軍の拠点をロケット攻撃し、イスラエル軍もシリア領内のイラン軍の拠点を報復攻撃するなど、軍事衝突も勃発しています。これが本格的な戦争の予兆なのかどうかはまだ判断がつきませんが、イスラエルが「どうせ戦うなら、イランが核保有国となる前がベター」と判断しても不思議ではありません。

いずれにせよ今後、イランはウラン濃縮用の遠心分離機をフル稼働させ、それを見たサウジアラビアも核保有を本格検討するでしょう。また、先日のイラク国会選挙ではイランと通じるシーア派政党が躍進し、IS掃討作戦が一段落したイラクにおけるアメリカの居場所はいよいよなくなりそうです。さらに、中東諸国は在イスラエル米大使館のエルサレム移転強行に対しても反発を強めています。

このように、トランプの外交施策はことごとく中東の混迷を深めていると言わざるをえません。しかし、もっと深刻な問題は、こうした動きが世界全体に対して中・長期的に与える影響です。

例えば、NATO(北大西洋条約機構)はなぜ生まれたのでしょうか。それは第2次世界大戦後、国際的な安全保障の枠組みを固定化することで、同盟国の政権がそれぞれ交代してもその影響を受けないようにするためでした。次なる大規模戦争を避け、秩序を保つために西側諸国(=民主主義陣営)が行なった“投資”だったわけです。

しかし、今回の核合意離脱に代表されるように、トランプはそうした国際主義を真っ向から否定しています。経済面で中国包囲網を築こうとしたTPPしかり、環境問題の悪化を地球規模で食い止めようとしたパリ協定しかり、前政権下で進められた多国間の約束事を破り捨てるような行動を繰り返しています。

ディール(交渉)の達人を自任するトランプが考える世界観とは、極端に言えば仮にヒトラーのような独裁者がいても、自分たちに害がなければいいというものなのでしょう。欧州をヒトラーに任せ、彼を窓口にして自分たちが得するディールをやればいい。そうとしか見えません。

「自国の平和や経済は自国で守れ」と言えば聞こえはいいですが、こうした孤立主義を進めれば、アメリカ自身の長期的な国益も損なわれます。一部の支持者を熱狂させるだけの浅はかな決断は、数年後には同時多発的に不利益をもたらすことになるでしょう。

◆北朝鮮は「トランプ後」に核実験を再開する!? この続きは『週刊プレイボーイ』23号(5月21日発売)「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画【拡大版】」にてお読みいただけます!

●モーリー・ロバートソン(Morley Robertson)国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。日テレ系情報番組『スッキリ』の木曜コメンテーター。ほかに『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送、隔週土曜出演)、『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送、毎週火曜出演)などレギュラー多数。

■2年半におよぶ本連載を大幅加筆・再構成した待望の新刊書籍『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)が好評発売中!