『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、2020年の日本について予測する。
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今年は日本の"ガラパゴス"がいよいよ崩壊する元年になるのではないかとみています。きっかけはもちろん東京五輪。世界中のメディアから注目され、さまざまな視点が持ち込まれることで、これまで言語の壁もあり"内側の論理"でうやむやに乗り切れていた多くの課題、矛盾が明らかになるでしょう。
例えば環境問題では、石炭火力に頼り切ったエネルギー政策をいつまで続けるのか本格的に問われる。原発政策を推進しようとしていたさなか、2011年の福島第一原発事故によって脱原発へ急激に方針転換......という「事情」など、国際世論は知ったことではありません。
その他のイシューも同様です。移民受け入れ、女性差別、プラスチックゴミ、動物愛護(食肉問題)、大麻解禁――主に先進国で議論されているあらゆる社会課題にどんな姿勢で臨むのか、その根拠はなんなのか。もちろん国際世論がすべてひとつにまとまっているわけではありませんが、そこには大きな"流れ"があるわけです。
それすら知らない状態で、「日本には日本の事情がある」「他国の常識を持ち込むな」と日本語で叫び続けることの無意味さを実感する一年になるかもしれません(その無意味さにさえ気づかず、生涯叫び続ける人もいるでしょうが)。
もし日本が今後も主要先進国の一員として国際舞台で存在感を示し続けたいのであれば(経済面を考えればどう考えても必要なことです)、論理的な批判には論理で向き合うしかない。中国のように「内政に干渉するな!」と突っぱねることはできないでしょうし、するべきでもないと思います。
この"外圧"は「安倍政権を揺るがす」というような短期的な話ではなく、日本社会にもっと根源的な変化をもたらすことになるかもしれません。
一方で、インバウンドの波は頂点に達し、日本の津々浦々にますます多くの外国人がやって来ます。最近とみに感じることですが、今や訪日外国人はいわゆる観光地にばかり行くわけではなく、なんでもない地方にも訪れている。
その流れがさらに強まるにしたがって、デフォルメ化されていない"本当にすごい日本"がSNSなどで口コミ的に広がり、定住者も本格的に増えてくるのではないかと思います。
特に中国人富裕層にとってみれば、日本は水も空気もきれいで治安が良く、街の景観も美しい。子育て世帯であれば「こんな国で子供を育てたい」と考えるのは自然なこと。
日本人からすれば、都市部は地価が高すぎるとか、待機児童問題があるとか、不満も多々あると思いますが、彼らから見た「日本」は、完全に別の国です。安心と安全、そしてセレブ気分がお手頃価格で手に入る素晴らしい環境といえるでしょう。
すると、何が起きるか。僕の予測は、「外国人が増えるのはいいことか、悪いことか」という不毛な二元論が風化するというものです。労働市場でも外国人の比率はますます増え、ガラパゴスな制度により守られていたセクターにも競争が生まれる。
変化を自然に受け入れられる人にはエキサイティングな時代の始まりであり、変化を恐れ、拒む人はぶつけようのない不快感とともに取り残されていく。そんな一年になる気がします。
●モーリー・ロバートソン(Morley Robertson)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(関テレ)、『水曜日のニュース・ロバートソン』(BSスカパー!)、『Morley Robertson Show』(Block.FM)などレギュラー出演多数。2年半に及ぶ本連載を大幅加筆・再構成した書籍『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)が好評発売中!