『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、当事者意識を持てない日本人に警鐘を鳴らす。

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「核兵器、軍、"帝国の野心"を持つ巨大な国における独裁政権がどれほど危険か、10年間西側に訴え続けてきたけれど、彼らはビジネスを優先した」。こう指摘しているのは、ゲリラ的な表現活動でプーチン政権を批判してきたロシアのアーティスト・アクティビスト集団「プッシー・ライオット」のメンバーです。

一部のメンバーが政治犯として有罪判決を受けたこともある彼女たちの立場から、「"モンスター"を育てたのは、グローバリズムのなかでひたすら資本主義経済を肥大化させてきた欧米社会でもある」との批判が発せられることには重みがあります。

ロシアのウクライナ侵攻後は欧米メディアでも同様の論調が散見されます。それに伴い、軍事や地政学、経済格差、環境問題といったあらゆるイシューはつながっている、それらはグローバリズムとも一体化しているという認識も、これまでより広く共有されるようになった印象です。

グローバリズムには光も影もありますが、影の部分についての議論は、反グローバリズム運動が顕在化した2000年代初頭までは左翼活動家の"ごっこ"としか見られませんでした。しかし、今やグローバリズムが世界に大きな"バグ"を発生させていることは疑いようがない。

そのしわ寄せが今来ている、今後はもっとひどいことが起きるかもしれないという認識から、欧米では若い人たちが自分とウクライナ侵攻との"つながり"を意識し、声を上げているのだと思います。

他方、日本では参院選の論戦真っただ中ですが、円安や物価高への対応に関する責任を岸田政権に問うことはあっても、これまでの対露関係や対中国関係を含め、グローバリズムそのものへの疑義、見直すべきかどうかという議論は一向に熱くなりません。

世論を見ても、ウクライナや台湾に同情はするけれども、その脅威となっている独裁政権が野放図であり続けていることと、自らの行動や自分たちの社会が深いところでつながっているのかもしれないという意識は極めて薄い。

そのことが回り回って自国内の経済格差や低賃金にも影響しているんだ、まずは自分の行動様式を変えるところから始めよう――といった議論は"意識高い系"の部類にカテゴライズされてしまうでしょう。

当事者意識を持てないのは、まだ多くの意味で日本社会に「守られている」ことと無関係ではないのかもしれません。例えば、あちこちで銃乱射事件が起き、国民皆保険がないために新型コロナで100万人以上も死者が出てしまうアメリカとは明らかに違います。

ある種の勤勉さやマメさ、細部に注意を払うエンジニア気質のようなものが日本社会の土台となっており、ハードに議論したり、政治の波を起こしたりしなくても、「改善」によっていわゆるマジョリティの幸せを辛うじて維持してきたのかもしれません。

しかし深刻なのは、「その無関心がいずれ自分たちを脅かす」と警鐘を鳴らすべきメディアが、ことごとくクリティカルな物言いを避けて報道を「丸める」クセをつけてしまっていることです。

これは英BBCや米CNNと比較すると一目瞭然。今後もガラパゴスなままでい続けるのは本当にリスクが高いと私は考えますが、皆さんはどうでしょうか。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト、ミュージシャン。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)ほかメディア出演多数。昨年はNHK大河ドラマ『青天を衝け』、TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』への出演でも話題に!

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