バフムト近郊とウクライナ東部にいるロシア軍に対して、ウクライナ軍は徹底的にロシア製兵器・T72戦車部隊で打撃する バフムト近郊とウクライナ東部にいるロシア軍に対して、ウクライナ軍は徹底的にロシア製兵器・T72戦車部隊で打撃する
5月15日の産経新聞にて「ウクライナ、バフムト周辺で陣地10カ所以上奪取か 露軍大佐2人戦死」と報じられたように、ロシア軍に押し込まれていたウクライナ軍がついに反撃し、奪還に向けて動いたようだ。週プレNEWSでは去る3月30日に「ウクライナ軍にロシア・ワグネル兵が決死の突撃! 激戦の「バフムト攻防」精細シミュレーション!!」と題した記事を配信していた。

こちらの記事では、ウクライナ軍(以下、ウ軍)が数か月かけて囚人部隊を駆使するワグネルを、数m単位で損耗させながら「後退殲滅作戦」を取ったと解説していたが、その戦いの流れが変わった瞬間に関して、元・陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見龍氏(元陸将補)はこう話す。

「ワグネル傭兵部隊のトップであるプリゴジン氏が『弾がない』と騒いだ4月30日前後が戦いの分水嶺だったと思われます」

戦況に関する諸報道から推測して考えると、ウ軍は5月13日には既に市街地をほとんど取られているが、市街地の西側にある高地上の防御陣地は落ちていない。

ウ軍はそこから、三方向に反撃を開始した。一つ目はロシア軍の北側に回り込むように、バフムト市街地北西部へ反撃開始。二つ目は南部のイワニフスから、ロシア軍陣地へ反撃。両地とも守っていたロシア軍は敗走後退した。そして三つ目が最前線、ベルヒフカまでウ軍は市街地を奪還している。

しかしここでもう一つ、ウ軍の別の動きがあった。

5月13日の産経新聞の報道で「ウ軍、バフムト周辺で大規模反攻か 露『撃退した』」とあったが、これはロシア側の報道だ。バフムト市街地から北東14kmにあるソレダルにウ軍が攻め込み撃退したとある。ウ軍の兵力は報道によると、「ウクライナ軍部隊1,000人以上と戦車が最大で40両参加し、長さ95kmの範囲で行われたという」。

この動きに関しては、4月4日に配信した週プレNEWSの記事「ウクライナvsロシアの一進一退の激戦は続く! 「バフムト攻防戦」の行方を徹底シミュレーション!!」にて触れているが、この記事内にて二見元陸将補はこう語っていた。

「ロシア軍は戦線を縮小しなければならない状況ですが、このバフムト近郊から後退するタイミングが弱点となるのです。

打撃部隊である機械化歩兵旅団三個が、南北どちらかからロシア軍陣地の薄い所を狙って、T72戦車90両、BTR装甲兵員輸送車300両に歩兵3000名を載せ、155mm自走榴弾砲の援護射撃を受け、機動打撃を行います。 (中略)バフムト市から東に20kmの深い地点まで打撃部隊を突進させるのです」

ウ軍は実際にソレダルにて、ロシア軍陣地の遥か後方で一個旅団による攻撃を仕掛け、ロシア軍はそれを撃退したようだ。記事内で二見氏が展開した作戦では、バフムトにいるロシア軍をウ軍が包囲殲滅する作戦の一端だが、今回は少し違う作戦だと二見氏は言う。

「バフムト市街地で戦うと損害が出るので、ウ軍はバフムトに関しては市街地を砲撃で叩き、市街地の南北の地域を地上軍で押さえ込み、補給路が遮断され包囲される危機感を与え続けながら、ロシア軍が増援して来るのを確実に叩き潰していくでしょう」

すなわち、ロシア軍をバフムト市街地とその周辺に誘い込み、次々と叩き潰していく作戦である。そうなると、このバフムトからウ軍の大反撃が開始されるのだろうか? 二見氏は否定する。

「ウクライナの出方を読むのであれば、情報が少ない中で戦略的な妥当性から考えなければなりません。まず、南部地域の補給路の切断は、クリミア攻略とアゾフ海一帯の回復の重要性から必ず行われます。

では、バフムトでの狙いは何か。ウ軍がバクムト南北の地域を確保し、バフムト市街地を包囲する形をとることによって、ロシア軍は、ウ軍に包囲されないように北と南の地域へ増援して包囲環の形勢を阻止しようとします。この状態を継続してロシア軍を吸引しながら、漸減を行います。

ロシア軍補給線をあえて残して、その弱点を狙い続けるのです。この方法は、へルソンで陽動するよりも、ロシア軍兵力を吸収でき漸減もできます。東部地域の兵力が薄くなった所に、ロシア製兵器を使用するウ軍部隊が打撃を加え、東部の失地回復をクピャンスク、クレミンナ付近から行います。

こうなると、南部の防御用戦力も転用する必要性が出てくるので、ロシアは南部の予備隊を東部地域へ移動させて態勢を強化せざる得なくなります。その時に、ウ軍は南部から大反撃を開始します。そのため、東部と南部の攻勢の時期はズレるでしょう。

並行してこの間に、長距離精密誘導兵器により重要拠点を叩き続けることによって、さらに攻撃を有利に行える態勢が整います」

ロシア製の兵器・戦車主体のウ軍のバフムト近郊及び東部地域での攻勢により、ロシア軍が南部やクリミアから兵力を転用せざる得ない状況が出来上がる。その好機をとらえて、南部に打って出るのだ。その時、切り札として英独製の戦車を使い、ロシア軍の防御陣地を一気に打ち抜くであろう。

ゼレンスキー・ウクライナ大統領は英仏まで行き、パイロットの訓練までとりつけるが、戦闘機の供与の話はなし。頼りはスロバキアから供与されたNATO仕様のミグ29。この機は、対レーダーミサイルハームを搭載可能だ。ロシア軍地対空ミサイルを無力化できる ゼレンスキー・ウクライナ大統領は英仏まで行き、パイロットの訓練までとりつけるが、戦闘機の供与の話はなし。頼りはスロバキアから供与されたNATO仕様のミグ29。この機は、対レーダーミサイルハームを搭載可能だ。ロシア軍地対空ミサイルを無力化できる

そこに、英国から供与された射程250kmのストームシャドウ巡航ミサイルを搭載したスホーイ24が、ロシア軍の各種兵站施設に攻撃を掛ける(写真:ウクライナ国防省) そこに、英国から供与された射程250kmのストームシャドウ巡航ミサイルを搭載したスホーイ24が、ロシア軍の各種兵站施設に攻撃を掛ける(写真:ウクライナ国防省)

「今回のゼレンスキー・ウクライナ大統領の各国訪問は、この作戦の説明と支援の継続を依頼していると考えられます。クリミアに行く際に、ウクライナはどうしても態勢を立て直す必要があるので、防空兵器、戦闘機、長射程精密誘導兵器を含む弾薬の供給が必要となります。おそらくこの話もしているのでしょう」(二見氏)

空軍の戦闘機、それも米国製F16が切り札となりつつあるが、ゼレンスキー大統領の英独仏訪問でパイロットの訓練は開始されるが、どの国からも戦闘機供与の話は出てこない。ウ軍はスロバキア、ポーランドから供与されたNATO仕様のミグ29と、英から供与された射程250kmのストームシャドウを駆使して、大反撃を仕掛けなければならない。

そして地上では切り札、独製レオパルト戦車部隊が突入を始める。大反撃の開始だ。 そして地上では切り札、独製レオパルト戦車部隊が突入を始める。大反撃の開始だ。