10月1日にリニューアルオープン、CCCが運営する海老名中央図書館(通称・ツタヤ図書館)

10月1日にリニューアルオープンした海老名中央図書館(神奈川県海老名市)。

武雄図書館(佐賀県武雄市)に続き、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する全国2館目の『ツタヤ図書館』だが、またも“選書問題”に揺れている。

2013年に開館した武雄図書館では、武雄市民には無縁の『埼玉ラーメンマップ』、古すぎる実用本『Windows98/95に強くなる』など資料価値の低い中古本が、CCCの関連会社が運営する中古本サイト『ネットオフ』から大量購入されていたことが発覚。前回記事(「ツタヤ図書館が身内の中古書店から“無用の100円本”を大量購入」で詳細にレポートしたところ大反響を呼んだ。

なぜ、こんな事態に? CCC社員で武雄から転属、前任でも現場を担当し、海老名中央図書館の館長を務める髙橋聡氏はこう説明する。

「言い訳になりますが、非常にタイトなスケジュールであったこと、それから財政も苦しい5万人の町ということで、厳しい予算で(リニューアルオープンに向けた準備を)進めていく中、安全対策コスト(本棚の転倒防止対策費など)が途中で約1200万円ほど発生。その捻出をどうするか?という状況になり、武雄市教育委員会様から蔵書購入費でなんとかできないかと相談され、我々としては中古での蔵書購入ができると提案させていただき、了承を得た上で本を入れました」

その購入本の中に利用価値の低い“ムダ本が多数含まれていた”などと批判が噴出したわけだが、この点についての釈明は…。

「武雄市の時は、私たちは“ド素人”でした。一度も(図書館運営を)やっておらず、時間も予算もなかった。正直、2年半、武雄市の図書館を運営した経験からみた時に、もっと良いことができたんじゃないかと非常に反省しております」(高橋氏)

だが、その“反省”を踏まえて開館準備を進めていたはずの海老名・ツタヤ図書館でも、お粗末な選書が発覚し再び問題に。リニューアルオープンが2週間後に迫る9月17日、海老名市議会で質疑に立った飯田英榮(ひでしげ)市議がCCCの選書リストを公表したのだが…。

「リストにある全8343冊のうち、料理本が4126冊と約49%も占めていました。他にも、単なる眼鏡拭きでしかない『アイミクロンメガネクロス(※下の写真)』が約20件、30数ページしかない付録本『スピードサラダおろしつき(おろし金) 1日分の野菜がラクラクレシピ』など公共図書館にふさわしくない本が多数混ざっていたのです」(飯田氏)

新図書館建設を問う住民投票にまで発展

飯田議員による議会での指摘を受け、市教委は「これから一冊一冊、実物を見て再選書を掛けます!」と答弁。その結果、8343冊から「問題のありそうな本を省き、7161冊まで絞り込んだ」(市教委・担当者)という。その再選書作業について「本の納品が始まった9月25日から休日返上で朝早くから深夜まで一冊一冊、目で見て確認。なんとか開館には間に合いましたが、かなり大変な作業でした」と市教委の担当者が振り返る。

ところが、そんな必死の苦労にも関わらず、一難去ってまた一難。10月1日のリニューアルオープン翌日に市議の請求によってすでに購入済みの再選書リスト(7161冊分)が公開されると…。

「教育委員会委員長も目で見て確認したというのに、女性を不愉快にさせる本が2冊混ざっていました」(海老名市議会議員・山口良樹氏)

その本というのが、『タイ・バンコク 夜遊び地図』や『大人のバンコク極楽ガイド』ーー。本の前半部分は観光、グルメ、宿泊施設の紹介ページだが、後半部分はファッションマッサージにゴーゴーバー(連れ出しパブ)、マッサージパーラー(タイ版ソープランド)など性風俗店の遊び方や店舗紹介が女性従業員の写真とともに掲載されているという…。

本の内容を詳しく見ると、『せま~い個室でオイルローションマッサージをしてくれる!』『金魚鉢(巨大なステージ)に大人数の女性がズラリと揃った光景は圧巻!』『たいていのお店で女の子の出張サービス有』『マッサージ料金は数百バーツだけど、お姉さんと盛り上がれば…スペシャルサービスへ!』『スペシャルサービスとはいわゆる×××(あくまでその場で恋に落ちた自由恋愛)である』など、公立図書館にあるまじき記述がズラリ。

さすがに、これを置くのはマズいのでは…というわけで、すかさずネットやメディアで取り沙汰され、またまた大騒動! 再選書作業に携(たずさ)わった海老名市教委の担当者がこう話す。

「指摘されている本は、当館の選定基準内に収まっており、他市の公立図書館にも入っていますが、今回は様々なご指摘を受け、市民の方に疑惑を持たれることのないよう、書架から取り除くことに決めました。現在は“貸出中”ですので、戻り次第、外します」

この“ツタヤ図書館”は来年以降、宮城県多賀城市や宮崎県延岡市、岡山県高梁(たかはし)市などで開館する予定だが、同じく開館に向けて準備が進められていた愛知県小牧市では、一連の選書問題を受けて、新図書館建設の賛否を問う住民投票にまで発展。10月4日の投開票の結果、反対多数となり、計画の見直しが必至となった。

ツタヤ図書館に対する不信の連鎖はどこまで続くのか…全国に飛び火し、疑念が日に日に深まっている。

●この記事までの詳細なレポートは『週刊プレイボーイ』42号にてお読みいただけます!

(取材・文/興山英雄)