些細なキッカケから大騒動に発展するケースも多い電車内・駅構内でのトラブル

今年に入って、ますますニュースに取り上げられる頻度が高い印象がある電車内・駅構内でのトラブル。

大混雑で人が行き交うだけに、肩が触れた、足が出ていた…など些細なキッカケから大騒動に発展するケースも多く、もはや“電車に乗るのも命がけ”の時代に!(前編⇒「殺人未遂にベビーカー騒動…駅トラブルで電車に乗るのも命がけ」

では、いち利用客がそんなトラブルに巻き込まれた場合、どう対処すればいいのか? All About「防犯」ガイドの安全生活アドバイザー・佐伯幸子さんが実例を元に対策を話してくれた。まずは、よくありがちな行動から発展したトラブルの目撃談だ。

「朝の通勤ラッシュの車内で30代くらいの女性が熟睡しちゃって、隣の50代くらいの男性にもたれかかっていたんです。男性は肩で押し返して、3回目にかなり強く押し返したことで女性も起きて会釈して謝った。なのに、電車を降りた男性は女性を待ち伏せして、かなり凄んで『謝り方が悪い』と怒って…」(35歳・精密機器メーカー)

寝ぼけてボンヤリした声で「すみません」と軽く一礼しながら言った覚えがある人は多いはず。メイクでスーツを汚したなら怒られるのはわかるけど、謝り方を怒られても…正直、困惑しちゃいます!

「謝る時にはコツがあるんです。『すみません』のひと言だけでは、相手に“なんだコイツ”と思われかねません。『すみません、大丈夫ですか!?』と心から、真摯(しんし)に言うことがトラブルを回避する方法です」

人間は「大丈夫ですか?」と言われると、反射的に「はい」と言いたくなるんだとか。自分から謝ると不利になる場合もあるが、トラブルを大きくしないためには先に謝るのも一案だ。

「他にも、電車に乗る時には状況を確認して、少なくとも自分の両手を広げた範囲の安全は確保しなければいけません。VIPのSPになった気分で挙動不審な人はいないか、危なそうな人はいないかチェックをしましょう。危ない気配はわかります。危険を察知して時には車両を移る、面倒がらずに次の電車に乗り換えるなどしましょう」

また、他人がそんな目に遭っていると時、助けたいと思うのも人情だが…。

「例えば、190cmで110kgの筋骨隆々の男性であれば、相手も一瞬ビビるでしょうから仲介に入ってもいいかもしれません。ですが、148cmで35kgなんて女性が仲介しても、相手にどつかれたら吹っ飛んでしまいます。残念ながら、人は見た目で判断されるので、君子危うきに近寄らず、ですね。駅員を呼ぶなどしましょう」

動画録画で暴力に対抗せよ!

■周囲を巻き込んだ動画録画で暴力に対抗せよ!

ちなみに、次のケースは注意した男性によるエピソードだ。

「取引先と飲み終わり、ほろ酔い気分で帰宅中の駅改札付近で40歳くらいのお兄ちゃんが酔っ払ってペットボトルから口に含んだ水を吐き出し、撒き散らかしてたんですよ。目の前でやられたんで、肩に触れながら優しく注意したら『ごめんなさい』とすぐ謝った。

なのに、先にホームに着いて電車を待ってると、その兄ちゃんが僕の前を舌打ちして通ったから、注意したら言い争いになって。お互い手を出さずに終えられたんですけどね」(38歳・商社)

素人目にも、このエピソードには危険な香りがします!

「その通りです。一度謝らせているので、追い打ちをかけると相手の怒りの導火線に火を付けてしまいます。敗者にも慈悲を与えましょう。お酒を飲んだ後は平常時よりも気が大きくなっていることがほとんどなので、言動行動には注意してください」(佐伯さん)

暴力行為の発生は「夜遅くになるほど多くなり、お酒が入っている場合も多い」(日本民営鉄道協会)のだ。年末に向けて多くなる酒宴後の帰宅では十分に気をつけたいものだが、もしこのようなケースでどちらかが手を出した場合はどうすれば?

「殴られた場合は明らかに立派な傷害事件です。その際はまず当事者同士の話にしないこと。後で言った、言わないにならないよう状況をスマホの動画で撮影するなどして、駅員や警察を呼びましょう」(佐伯さん)

自分が動画を撮れる状況でなければ「そこの黒いコートの人」や「メガネの人」など、外見の特徴から指名をして「スマホで動画を撮ってください」と周囲を巻き込むのもあり。ここまで具体的に言われた相手は咄嗟(とっさ)に拒否できず、「はい」と言ってしまうものなのだ。

駅周辺でも要注意

■気を抜けない! 駅周辺でも要注意

多くの人が集まる場所だけに駅周辺でトラブルに遭う場合も多々。10月上旬には千葉県・海浜幕張駅付近の路上で、高校生が男に傘で首を刺される傷害事件も発生している。

「以前、京王線のある駅前でのどかな日中、女性を殴って去っていった女性もいましたね。実はすれ違いざまの犯行は結構多いんです。相手の距離感が妙に近いと思ったら自分から避けましょう」(佐伯さん)

通り魔的な危険もあるため、電車内と同じく普段から当たりの気配を察知する必要があるようだ。

前方から歩いてくる人とぶつかりそうになったら、“お互い避ける”のが道を歩く時の暗黙のルール。ただ、中には「おまえがどかないから悪い」とルートを絶対に譲らない相手もいる。自分が少し避けただけでは肩同士など身体の一部がぶつかってしまい、トラブルの一因に。

その手の相手は直進に強い意思を持っているため数メートル先からでも異様な雰囲気を感じるものだが、これがスマホを見ていたら気づけない。そもそも攻撃的な相手のため、歩きスマホをしている段階で「おまえが悪い」となり、それこそ10月にあった町田駅のケースのように最悪、ホームに突き落とされかねない。

JR東日本が『やめましょう、歩きスマホ。』と印刷したトイレットペーパーを駅トイレに置く奇策を導入したほど鉄道各社もスマホによるトラブルに危機感を持っている。

「スマホを見ながら下を向いて歩くなんてもっての他です。イヤホンをして音楽を聴くのも自己防衛力が低いと言わざるを得ませんね。それだけ日本が平和ともいえますが、実際は家の外に出たら信号は黄色か赤色しかありません。いつでも逃げられるように目と耳と五感を使って研ぎ澄まして、危険がないか360度見回しましょう。そう、気分はゴルゴ13で!」(佐伯さん)

いつも心にはゴルゴを! それが特に混雑する電車内・駅構内でのトラブルを避ける究極案だ。

(取材・文・撮影/渡邉裕美)