「チョイ乗り客を開拓したい」(東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長)
そんな業界の切実な思いから始まった、東京のタクシー初乗り運賃410円。「美人すぎるタクシー運転手」として週プレのグラビアでも話題となった生田佳那さんが言う。
「若い学生さん、小さなお子さん連れの利用が増えました。1.052㎞まで410円。4人で相乗りすれば、ひとり100円ちょっと。電車の初乗りより安いので、気軽に乗ってくださいね!」
確かに、この10年間でタクシーの年間輸送人員数は3割も減っている。危機感を強めるタクシー業界にとって、初乗り410円は復活への足がかりとなるものなのだ。
だが、タクシー業界が新運賃を採用した背景にはもうひとつ、知られざる理由があるという。それは世界で広がる「ライドシェア」への備えだ。
ライドシェアとは一般ドライバーが自家用車を使い、有料で人を運ぶこと。予約は『Uber(ウーバー)』などの配車アプリサービスを利用する。タクシーより安いので利用客が殺到し、サンフランシスコでは地域最大のタクシー会社「イエローキャブ」が倒産に追い込まれているほどだ。シェアリングエコノミーに詳しい玉井和博大妻女子大教授が言う。
「シェアリングビジネスは世界で拡大している。日本は白タクが禁止されているので一気に広がることはないが、それでも民泊が増えたように、いずれ配車アプリ利用のライドシェアも増えるはずです」
日本を訪れる年間の外国人観光客は2千万人を超えている。ただ、これまで日本のタクシーの初乗り運賃は730円(東京都)と、ロンドン(約400円)、ニューヨーク(約250円)と比べても高額だった(走行後の加算料金は安いのだが)。何も手を打たなければ敬遠され、外国人客はライドシェアへと流れかねない。
しかもここに来て、年間637万人もの訪日中国人客を狙って、中国の配車アプリサービス大手が日本上陸を虎視眈々と狙っているのだ。
「それはアップルやアリババも出資する『滴滴出行(ディディチューシン)』です。利用者は4億人、中国ではシェア8割を誇るだけに、中国人観光客のスマホには大抵、『滴滴出行』の配車アプリが入っている。将来、同社が日本でサービスを開始すれば、多くの中国人観光客がタクシーでなく、ライドシェアを利用することになるかもしれません」(国交省職員)
そうなる前に初乗り運賃を下げ、日本のタクシーに乗ってもらおうというわけか。近未来に勃発必至の日本タクシーvs中国配車アプリのバトル。勝つのはどっち?