大ベストセラー『家族という病』に続き、下重暁子氏が刺激的な『若者よ、猛省しなさい』で伝えるものとは… 大ベストセラー『家族という病』に続き、下重暁子氏が刺激的な『若者よ、猛省しなさい』で伝えるものとは…

「家族や血縁は共に愛し合い助け合うもの」――そんな美化された家族像に鋭くメスを入れ、「家族とは何か」という根本的な問いを突きつけた超ベストセラー『家族という病』。

2015年3月の発売以来、多くの反響を呼んだこの話題作に続き、著者の下重暁子(しもじゅう・あきこ)氏が挑んだ新刊のテーマは“若者”だ。

そのタイトルは『若者よ、猛省しなさい』――『家族という病』同様、思わずドキッとさせられるが、自身のNHKアナウンサー時代の経験を交えながら「お金」「恋愛」「組織」「感性」「言葉」などの様々な観点から「若者とは何か?」を考察するとともに叱咤激励し、“若者のあるべき姿”を論じている本作。そこに込められた真意を伺った。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)

* * *

―(取材場所の都内某ホテルラウンジに下重さんが赤いスーツで登場)今日は赤のお召し物でいらっしゃって、かなり目を引きますね。素敵です(笑)。

下重 赤なんてめったに着ないんですけど、今日は皆さんにお会いするので頑張って着てきました(笑)。

―赤い色の服を着るだけでもエネルギーに満ちあふれるというか、若々しい気分になるような…。

下重 元気になりますよね。でも、そうじゃない時は赤を着たくはならない。絶対似合わないしね。

―昔、アメリカのプロバスケ、NBAの黒人選手がめちゃくちゃカッコイイ赤のスーツを着こなしているのを見たことがあるんですけど、オシャレからしてこの人たちの気持ちを表しているというか。

下重 オシャレは大事ですよ。私ね、大島渚監督と親しかったものですから、よく言われましたね。私はパンツルックが多いんですけど、「パンツばっかりはいて、スカートをはかないと脚が汚くなる」と。厳しかったですよ、大島さん。

―大島さんもダンディーな方で、着物を着こなしてましたよね。

下重 うちの母が亡くなった時なんか、お葬式に紫の上着を着てこられて。みんなびっくりしてましたけど、素敵でした。あと、大島さんにはパーティーの席上でも「酒は飲んでもいいが、絶対、ものを食うな」って言われて。「いくらお金を出していても、みっともない」と。それは今も守っていますね。

―今は「オシャレにお金をかけられない」という若者も多いようですが、昔の大人は、身なりや振る舞いを含めてダンディズムを目指していたところがありましたよね。

下重 そうですよ。やっぱり、身なりでもなんでも“粋(いき)がる”っていうのは、若者の特徴ですからね。今の人は“格好つける”とか、そういうのがない。「お金がない」と言っても、昔よりはあると思うけどね。昔は貧しかったですから。女なんて働くところがなくてさ。でも今はその気になれば、働くところだってたくさんあるんですよ。

―お金がないことを言い訳にしているというか。

下重 そうだと思います。私ね、今の人はラクをしたいんだと思う。でもラクをするとね、楽しいことは見つからないんですよ。「楽」という字を「たのしい」と読ませるのは、誰かが間違ったのね。服装だって、だらしない格好はラクですよ。でも、それを続けていると、だんだんダメになっちゃうのね。若いからこそ、格好つけるところがなきゃ。今からダラけちゃってどうするの。

タイトルをどうするか迷った

―服装のお話からすでに若者への叱咤激励が(笑)。今回の『若者よ、猛省しなさい』というタイトルはかなり厳しいというか、また刺激的ですが…。

下重 いや、猛省といっても、私はお説教するつもりはないんですよ。これは何も若者だけに書いたわけじゃなくて、昔、若者と呼ばれていた“元若者”も含めた全員にも向けて書いているというか。私だって今も若者のつもりなんですから。人より上の目線でものを言いたくはないので、そうじゃなくて、自分も含めて「猛省しようね」という。

―著書の中で、居酒屋で同じタイミングで一斉に笑う若者たちを例に挙げて「みんな一緒」に価値を見出すのではなく「ひとりになって自分自身と向き合う“自分を掘る”作業が若者には必要」と書かれています。“猛省”に込められた意味は、常に“内省”しなさいということですかね。

下重 そうなんです。いいこと言いますね(笑)。ただ、ある程度、刺激的なタイトルにしないと『家族という病』に負けちゃうので(笑)。

―やはりそのプレッシャーも?(笑) 今回、月刊誌『青春と読書』で連載されていたものをまとめたかたちですよね。

下重 そう、それで本にする時にタイトルをどうするか迷ったのよね。だけど、やっぱり「猛省」でいこうと。

―確かに「置かれた場所で咲きなさい」とか優しく言われるよりも、そちらのほうが…(笑)。

下重 あれはいい題ですけどね(笑)。私には似合わないかもしれないわね。

―「大人になっても子供を過保護に扱う親が、若者の成長を妨げている」といった内容でも『家族という病』と繋がっているように思います。そもそも、『家族という病』の反響が大きかったことに対して、ご自身はどう思われてるんでしょう?

下重 私の本で、あんな売れ方をしたのは初めてなんですよ。今までは徐々にしか売れないというのが定説だったんですけど、発売して1ヵ月であんな(30万部突破)に…。でも、そうなったのはやっぱり、みんな同じように家族に対して悩んでいる部分があって。だけど、言えないのね。その言えないツラさを「代わりに言ってくれた」という感じなんでしょうね。だから「本を読んで肩の荷が下りた」という反響が一番多いんです。

―『家族という病』は下重さん自身の家族との葛藤まで赤裸々に明かしていますが、それに共感する人も多かったと。

下重 自分を例にするのが一番正直ですからね。私はもう自分の家族がみんな死んじゃっているので、オープンにしても迷惑がかかるわけではないんで…それでもやっぱり覚悟はいりました。そうして家族のことを晒(さら)してみたら本が売れて。「皆さん、ちゃんと見ているんだな」と思いましたね。今、本が売れないとかいろいろ言いますけど、やっぱり本音を突いていれば、ちゃんとわかってくださるということがよくわかりました。

空気を読むのが尊重されるなんて気持ち悪い

―いろいろな本が乱立していて、どれが正解かわからないという中で、著者が本音を晒してズバッと切り込んでくるからこそ読者に響くというか。以前、阿川佐和子さんにインタビューさせていただいて、阿川さんの『聞く力』も共通点があるなと。やはり読者にティーチングしているわけではなく、自身の経験を元に「こういうことをやらかして」という失敗を晒しつつ伝えています。

下重 そう思いますね。家族という意味では、阿川さんもあのお父さん(作家・阿川弘之)に育てられているので、やっぱり大変だったと思います。「逃れられない影響から逃れたい」という思いもあったでしょうし。私も同じでしたから。

―下重さんもお父さんとの確執を書かれて、通ずるものがありますよね。その『家族という病』で親と子の関係…親離れ、子離れできない、大人になれない現代人を論じた流れで、次に“若者論”を書かれたのはある意味、必然だったのかなと。

下重 そう思いますよ。私は皆さんに今度の本のあとがきを読んでほしいんです。そこには、私が若者だった頃から今までの話を書いています。私は若い頃、早稲田(大学)を卒業して、そのまま物書きになると思っていたんですけど、それがとんでもない回り道をして、やっと今辿(たど)り着いた。「物書き」としては、これからなんです。

―回り道こそ、若者の特権でもあると?

下重 そうそう。だから回り道を恐れるな、試行錯誤しろ、そして挫折しろと。私が非常に重きを置いているのが挫折なんですよ。それを知らない人間はダメ。挫折しないまま年をとると、人の痛みがわからない人間になってしまうし、あの辞めた都知事みたいになっちゃうのよ…外添(要一)さんみたいな(笑)。

―(苦笑)外添さんは東大出で、ずっとエリートで生きてきた人ですからね。

下重 いろいろあったけど、あの人は反省してないと思う。「自分は悪くない、世間が悪い」と思ってると思うの。それは、あの人が挫折をしてないからじゃないですか? だから成長しないのよ。それと、やっぱりあの人は“格好よさ”というものがわかってない。「武士は喰わねど高楊枝」じゃないけど、精神的な格好よさ、金や地位がなくても「格好よく生きたい」っていう。

―それこそ恋愛でも、お金はなくても無頼(ぶらい)な生き方をしている男のほうがモテたりしますからね。今の若い人には「お金がないから女のコが相手にしてくれない、交際も結婚もできない」と考えてる人も多いようですけど。

下重 うーん、ほんと今は無頼な人がいないのよ。私の若い頃はいっぱいいて格好よかったよね。酒の飲み方をとっても、いつもひとりで飲んでるとか。昔はみんなでワイワイ騒いでいると、そこから逃げる男が必ずいてね。そういう格好よさがないんだよ。誰か強い人が笑うと、それに合わせて一斉に笑うって、気持ち悪くない? 若者がそんなことをしてるのは許せないよね。

―ある意味、日本人の特性でもありますよね。ますます「空気を読む」ことが尊重されるというか。

下重 外国ではそんなことないですからね。あとやっぱり、なんでもかんでも「笑う」っていうのがよくないね。「笑うのがいい」とか「明るいのがいい」ってよく言われるけど、私は暗い人が好きですよ。暗くない人は、何も考えてないってことだからね。

空気を読むのが尊重されるなんて気持ち悪いですよ。みんな一斉に同じことをして、強いものに阿(おもね)る。私は「阿る」「媚(こ)びる」っていう言葉が一番嫌いなので、それだけはしたくないと思って。

◆後編⇒「若者よ、猛省しなさい!」と『家族という病』著者。日本人は衰えて消滅に向かっている?

(構成/岡本温子[short cut]、撮影/杉山晃造)

下重暁子(しもじゅう・あきこ) 早稲田大学教育学部卒業後、NHKに入局。女性トップアナウンサーとして活躍後、民放キャスターを経て、文筆活動に。2015年に大ベストセラーとなった『家族という病』(幻冬舎新書)ほか著書多数。現在、日本ペンクラブ副会長、日本旅行作家協会会長。

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