世界中で説得力を失いつつあるリベラリズムは、今こそ問われていると語るモーリー氏。

『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが国際NGOなどで起こる、職員のセクハラ、レイプ、性的虐待のスキャンダルについて語る!

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昨年から世界に広がる"Me Too"の流れもあり、最近では人々を助けるために組織されているはずの国際NGOなどで、職員によるセクハラやレイプ、性的虐待の実態が次々と明るみに出ています。

衝撃的だったのは、イギリスを拠点とする国際NGO「Oxfam(オックスファム)」の男性職員による複数の児童買春・レイプ疑惑です。2010年のハイチ地震の際には、救援活動のため訪れた職員らが宿舎に未成年を含む複数の売春婦を呼び、南スーダンでは職員がレイプ、リベリアでは性的虐待に及んでいたといいます。

特に人々の怒りを買ったのは、Oxfamがこれらの問題を隠蔽(いんぺい)し、虐待などを行なっていた職員が別の慈善団体に再就職することを"サポート"していたこと。団体の評判を気にし、秘密裏に事を運ぼうとするあまり、ペドファイル(小児性愛者)に"次なる犯行の舞台"を提供してしまっていたわけです。

さらに、同じくイギリスの国際NGO「Save the Children(セーブ・ザ・チルドレン)」でも、未成年者に対する性的虐待が行なわれていたとの報道が飛び出しました。団体側はこれを強く否定していますが、その一方で、「団体内部でセクハラを行なった疑いがある」との理由で最近、16人もの職員が解雇されるという奇妙な"一斉処分"が行なわれたといいます。

ほかにも同様のスキャンダル発覚は続いていますが、実は国連でも似たような報告は枚挙にいとまがありません。例えば、"正義の味方"として紛争地域に派遣されたPKO部隊の隊員らによるレイプや性的虐待は日常茶飯事。それどころか、かつてPKOの兵士が現地の少女を買春していたとのニュースがあった際には、加害者側が「それは少女側が望んでやっていることだから」という趣旨の弁明をしていました。食べ物や金など対価を支払っており、双方が納得している―と。

ちなみに、PKOが派遣されるような紛争地域における児童売春の対価は、パン一片だとか、1ドルだとか、その程度のものであることもしばしばです。極端に優位な自分の立場を利用し、タダ同然で子供とセックスをする。それを「向こうも望んでいるから強制ではない」と言い切る。本当にどうかしています。

世界中で説得力を失いつつあるリベラリズムは、今こそ問われている

国際的な助け合いの場における、こうしたショッキングな"不都合な真実"が広く知れ渡ってしまうと、「国連もユニセフも所詮(しょせん)は偽善だ」とか、「人道介入してもロクなことはない」などとしたり顔で言う一部の人々の言説が力を持ってしまいかねません。例えば、トランプ米大統領ならこう言うでしょう。

「それ見たことか。そんな詐欺まがいのヤツらにいくら金を払っても意味がない。アメリカの金は、すべてアメリカで還流させたほうがいい」

世界中で説得力を失いつつあるリベラリズムは、今こそ問われているのだと思います。この汚い現実に当事者意識を持って向き合うか、それとも嫌悪感だけ示して忘却してしまうのか。NGOも国連も、当初の理想は純粋なはずですが、それだけでは世の中はよくなりません。いかに実行するか。ブロックチェーン的に寄付金の行方をトレースしたり、支援の現場で"間違い"が起きない体制を構築したりできるのか。とことん突き詰めるべきときが来ています。

Morley Robertson(モーリー・ロバートソン) 国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。10月より日テレ系情報番組『スッキリ』の木曜コメンテーター。ほかに『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送、隔週土曜出演)、『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送、毎週火曜出演)などレギュラー多数。

■2年半におよぶ本連載を大幅加筆・再構成した待望の新刊書籍『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(小社刊)が好評発売中!

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