『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、外国人労働者の受け入れ拡大の問題について指摘する。
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安倍政権が、外国人労働者の受け入れ拡大のために新たな在留資格の創設を目指しています。
党内外からは「移民政策につながる恐れがある」との批判があふれ、それに対して安倍首相は「これは移民政策ではない」と、妙な言い逃れをしていますが、両者とも、そしてもっと言えば日本全体が、もう少し真正面からこの問題に取り組んでほしい。そのことを、あらためてここで強く指摘しておきたいと思います。
そもそも、もはや日本は「移民を受け入れるべきか、そうではないのか」というレベルの議論をしている段階にありません。日本社会はすでに多くの外国人労働者に依存しています。
もっとも日本語もわからず、日本の"ルール"もよくわかっていない外国人が増えた場合は当然、混乱も起きるでしょうが、それを踏まえた上でこれからどうしていくかを考えるべきであって、「入れない」という選択肢はありえません。
環境は変えられない。愚痴を言うヒマがあるなら、そこにチャンスを見つけたほうがいい――。僕が言いたいのはそういうことです。変化を"恐怖"としてしかとらえられない高齢者たちが現実から逃避する分、そこに積極的に関わることで、予期せぬ何かを探し、新たなチャンスを見いだしてほしいと思います。
「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」。これは第2次世界大戦末期、困窮する日本国民に向けて政府が広めたスローガンですが、今の状況はそれと真逆です。何もかもそろった環境やテクノロジーにフリーライドして、何も工夫することなく、不平不満を口にする人が実に多い。
グローバリズムの権化であるGAFA(ガーファ/Google、Apple、Facebook、Amazon)などのサービスを喜々として使いながら、グローバリズムの結果としての移民を拒むというのはその典型です。
例えば、Twitterは今や、なんでも批判したい"イヤイヤ症候群"の人たちが、議論とすら呼べないような「お気持ち」をぶちまけて自分の承認欲求を満たすためだけの"サルのおもちゃ"と化しています。
もちろんSNSの使い方なんてそれぞれの勝手ではありますが、自分と直接関係ない他人の不倫を叩いたり、3年ぶりにシリアから帰ってきたジャーナリストの安田純平さんを口汚く罵(ののし)ったり、そんなことに費やす時間がムダだということをもっと自覚してほしい。本当にそんなことをしてハッピーになれると思いますか?
それなりの規模の移民、少なくとも医療目的での大麻合法化、本当の意味での男女平等社会。遠からず、いずれ日本にもやって来るでしょう。そんな時代に大切なのは、知見を"expand(拡張)"していく生活習慣。未知なものに出会ったとき、そこにどういうチャンスがあるのかをまず考えるようにすることです。
もちろん大きな変化には痛みも伴いますが、自分を守るつもりで変化を忌避すればするほど、実際は変化の波に一方的に呑(の)まれ、残念ながらますます弱者になっていくでしょう。
日本国のパスポートは非常に強く、航空券もとても安くなりました。外国に行って見聞を広めるチャンスは探せばいくらでもあります。人生まだまだこれからだと思っている人はぜひ、未知のものに触れ、新しい体験を求めて刺激的な日常を送ってほしいと思います。
●モーリー・ロバートソン(Morley Robertson)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。日テレ系情報番組『スッキリ』の木曜コメンテーター。ほかに『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送)、『報道ランナー』(関西テレビ)などレギュラー多数。2年半におよぶ本連載を大幅加筆・再構成した書籍『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)が好評発売中!