私の腹はお国のための人口増産マシンじゃないぞ

数々の失言で先日五輪相を辞任した桜田義孝衆議院議員が「自分たちのお子さんやお孫さんにはね、最低(子供を)3人ぐらいは産むようお願いしてもらいたい」などと発言し、またしても炎上。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』(2006年)という映画に、こんなシーンがあります。ルイ16世との結婚の宴(うたげ)で、祖父のルイ15世が孫夫婦を祝して「たくさん子供を産んでブルボン王朝の繁栄を!」とのたまい、その後、新婚夫婦は衆人環視のなかで初の床入りをするのです。

ルイ16世が性的に非常に奥手であったためなかなか交わりを持つことができないマリー・アントワネットは、まだ10代だというのに祖国の母帝マリア・テレジアから夫との性交を果たせと叱られ、周囲からの激しいプレッシャーに悩みます。それが当時の王族の務めとはいえ、個人の営みであるセックスをとやかく言われるなんて地獄。しかし令和の日本ではまだその感覚がまかり通っているんですね。

桜田義孝氏と同じように考えている人は少なくないでしょう。女性が子供を産みたがらないから少子化なのだ、と。産みたくても産めない状況をなんとかしろというのはもちろんですが、たとえ環境が整っていたとしても、子供は他人に言われて産むものではないでしょ。

女の子宮はこの国では公器なんだと痛感したのは自分が妊娠したときです。ふたり目を産んで復帰した際には政治家に会う機会の多い仕事だったのですが、判で押したように「日本のためにあともうひとり産まないとね!」と言われ、なんでおまえにそんな超個人的なことを言われなきゃならんのだと憤慨したものです。私の腹はお国のための人口増産マシンじゃないぞ。

政治家のこの手の無神経な発言は過去にもたくさんありますが、桜田前大臣は失言で東京オリンピック・パラリンピック担当相を辞めたばかり。自民党は「失言防止マニュアル」を配ったようだけど、実効性はないようですね。

オリパラ大臣を辞任した際にはこのコラムでもブリブリと怒りのコメントを書きましたが、なんとそれを内閣官房のオリパラ推進室の官僚が読んでいました。阪神ファンゆえ江夏 豊さんのコラム読みたさに毎号週プレを買っているんだそうな。で、編集部に連絡が来ました。一度、小島さんに復興オリパラの取り組みの現状をお知らせしたいと。

うわーなんだこれ、発言にプレッシャーかけるつもりか!と、超絶警戒しつつも好奇心を抑えられずに会ったところ、実直な様子の官僚が2名登場して「今の鈴木俊一大臣は岩手出身ということもあり、私どもは真剣に復興オリパラに取り組んでます。実は各地ですでにこんな国際交流が」と、選手団のホストタウンづくりについて丁寧に熱く説明してくれたのでした。

復興オリパラも少子化対策も、当然ながらいろんな場所で地道に頑張っている人たちがいるんですよね。一部の政治家の不見識なひと言で国全体への不信感が増すばかりなのは実に不幸なことです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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