『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、2020年代の日本に生まれる"居心地格差"について語る。

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先日行なわれた各地の成人式の報道を見て、日本社会が本格的に変わりつつあることをあらためて感じました。

例えば、佐賀県鳥栖(とす)市は新成人のうち約1割が外国籍で、式ではネパール人とベトナム人の新成人が実行委員に名を連ねたそうです。

また、鹿児島県大崎町という人口1万3000人弱の町でも、今年初めてベトナム人の技能実習生10名が成人式に参加。新成人のうち2割が外国籍だったといいます。東京都豊島(としま)区でも新成人の外国人比率が年々増加中で、今年は約4割が外国人籍でした。

近年、日本には若く、やる気に満ちあふれ、母国語と日本語に加えて英語などを操るマルチリンガルな外国人が増えています。彼らはかつての"稼ぎ外国人"とは違うし、自国でまともな教育を受けられず、食べていくことも難しいから移住してくる欧州型移民とも違う。

単純労働を請け負って社会を下支えする層ではなく、それぞれ将来的にはエリート層になるであろう存在です。

日本で学んだことを武器に、母国に戻って成功を収める人もいれば、日本企業やグローバル企業の日本法人などで活躍する人も出てくるでしょう。そのとき、彼らは日本人を管理・監督するマネジャーという立場になっている可能性も高い。やる気次第でいくらでも羽ばたける"自由"があり、だからこそ希望に満ちあふれているわけです。

一方、日本のほうに目を移せば、高度成長期から40~50年もの間、社会を支配していたのは"動かぬ秩序"だったと思います。外国人や女性など社会的弱者の権利を軽視し、不便を強いることと引き換えに、内なるバランスを保ち、あうんの呼吸で全体の流れ(コンセンサス)が生まれ、その流れに身を寄せて"お上"(上司/組織/国)に従っていれば分け前がもたらされる社会。

以前はそれが安定をもたらしていた部分もあるでしょうが、今となっては弊害でしかない面も大いにあります。

この長年続いた旧日本型の"動かぬ秩序"が、急勾配で進むグローバリズムによって2020年代にはいよいよ淘汰(とうた)されることになります。そうなると、好むと好まざるとにかかわらず、社会は端っこ(私たちの日常)から変わっていく。

必然的に、今まで必要のなかった"気遣い"が要求されるでしょうし、ときには煩わしいディベートも必要になるでしょう。例えば、「男性」「年配」「日本人」は長らくアドバンテージでした(当事者であるがゆえに、それを自覚してこなかった人も多いと思います)が、今後それが通用しなくなっていくことは確実です。

そうした時代に生まれてくるのは、"居心地格差"とでもいうべきものではないかと僕は考えています。日々変わっていく社会に不安を募らせ、不満を漏らすだけの人は、ひたすら居心地の悪さが増していく。

一方、変わること、そのためにディベートすること、必然的につきまとう煩わしさに向き合うことを引き受けられる人は、日本だろうが海外だろうが、同じように居心地よく輝いていけるはずです。

居心地格差の"弱者"にならないために要求されることは、自分自身が変わることをいとわないことです。そして、あなたが高齢の"逃げ切り世代"でないなら、それは避けられないことなのです。

●モーリー・ロバートソン(Morley Robertson)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(関テレ)、『水曜日のニュース・ロバートソン』(BSスカパー!)、『Morley Robertson Show』(Block.FM)などレギュラー出演多数。2年半に及ぶ本連載を大幅加筆・再構成した書籍『挑発的ニッポン革命論 煽動の時代を生き抜け』(集英社)が好評発売中!

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