『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、ゲームプラットフォームに組み込まれた"子供からの搾取"の構造について語る。

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正義よりも利益の最大化を優先する現在の資本主義が、搾取の上に成り立っていることは疑う余地がありません。ロシアやコンゴ、中東の産油国など国民の人権が担保されていない国から安価に地下資源を買いあさることも、中国の労働力や巨大市場に依存し続けることもそうですし、最近では先進国の内部でも「ギグワーカー」という名の新たな搾取構造が定着している。

その背景にあるのは、規制緩和で倫理と切り離され野放しになった資本家の欲望ですが、低所得層も「安いぜいたく」に依存する場合が多く、結果として"両端"から格差の拡大を後押ししている側面もあると思います。

その矛先は、今や子供にも向かっています。例えば、世界最大級のゲームプラットフォーム『Roblox(ロブロックス)』に組み込まれた"子供からの搾取"の構造について、英「ガーディアン」や英語のゲーム情報YouTubeチャンネル『People Make Games』などが詳しく取り上げています。

さまざまなゲームを無料で遊んだり、子供でも簡単にゲームを自作して公開したりできるRobloxは一日当たりのアクティブユーザー数が約5000万人で、その多くが13歳以下といわれ、すでに時価総額4兆円を超える巨大企業。

「未来のゲームクリエイターが腕を競い合う」といえば聞こえはいいですが、結局はアクセス数を稼げる依存性の高いゲームを作り出すことにユーザーが必死になっているようです。

しかも、ユーザーが作ったアイテムはプラットフォーム内の独自通貨で売買することが推奨されるのですが、その価格は株式相場のように変動し、人気アイテムはまるで"ローカルなNFT"であるかのようにとてつもない高値で売買されています。

Roblox側は各取引の約30%の手数料を"上ハネ"で徴収できるため、アイテム価格が高騰することは大歓迎。誰もが知っているハイファッションブランドとのコラボアイテムなども限定販売しています。

しかし、その売買スキームは穴だらけで、詐欺的行為も散見される上、レアアイテムは"闇市場"で現金取引されるケースもあるようです。また、女児のプレイヤーなどに対するセクハラ案件も告発されていますが、Roblox側は「自分たちはプラットフォームを提供しているだけ」との論理で監督責任を否定し、無罪を主張。

倫理観を逸脱したゲーム(内容が性的なものや差別的なもの)に関する申し立てがあっても、運営の対応は杓子(しゃくし)定規なもので、とりわけ人気ゲームについては反応が鈍いとの指摘もあります。

子供たちの射幸心と承認欲求をあおって肥大化させ、「自分の意志、自己責任」で働かせてバリューを生む。その子供が大人のように燃え尽きてしまうなど、少々の倫理的問題にも目をつぶり、ひたすら企業が利益を得る。そこには資本主義のさまざまな"負の面"が凝縮されている――といったら言いすぎでしょうか?

このゲームの話は、何か今の世界を象徴しているようにも感じられます。「利益を最大化させるためなら許されること」が、あまりにも拡大されすぎていないか。われわれはそろそろ"別解"を見つける必要があるように思います。ただその前には「自分が何に依存しているのか」も自覚せねばなりません。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。NHK大河ドラマ『青天を衝け』に続き、TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』への出演でも話題に!

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