芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!
【捨てるもの第7回】定春のうんこ(銀魂)
週刊少年ジャンプで連載されていた「銀魂」(空知英秋)に登場する、「万事屋銀ちゃん」の従業員、定春。見た目は巨大な犬(170cm、300kg)だが宇宙生物であり、時折巨大なウンコをする。
漫画『銀魂』に、定春というムチャクチャでかい犬(本当は宇宙生物)が登場しますが、ウンコするシーンが出てきますよね。あれだけ大きい生き物が出す特大ウンコは、どうやって捨てればいいんでしょうか?
以前「ベンキマン」を捨てる回(連載第1回)で「ウンコは回収できません」と言いました、覚えてますか? 基本的にウンコなどの排泄物は、ゴミとして出すことは禁止されています。
震災や洪水等の災害時、水が止まってしまいトイレが流れず、やむをえず排泄物を燃えるゴミで出した、という事例もあったようですが、これも基本的にはNGな行為です。
大きな繁華街を抱える自治体なんかでは「死んだネズミは可燃ゴミです」と明記していたりします。そういった特殊な地域では、普通は「うん?」と回収をためらうようなものでも限定的に回収可能だったりしますが、その話はまた別の機会に。
そうは言っても、家庭から出る可燃ゴミにペットの排泄物が出されていることはよくあります。我々はすぐに「ウンコだ!」って気が付きますが、面倒なのでついつい回収してしまうことが多いです。
これはあくまでも個人的な印象ですが、いわゆる「高級住宅街」では、ペットの排泄物がゴミに出されている光景はあまり見ません。そもそも家庭ゴミそのものの量が少ないように思います。おそらくみなさんリサイクルの意識が高いんじゃないでしょうか?
動物園なんかでは、動物の排泄物を再利用して堆肥に変えるなどリサイクルしています。家庭でもそれを見習って堆肥にしてほしいんですが、一般家庭ではさすがに難しいかもしれませんね。
そうなるとやはり、「定春の特大ウンコ」はどこかに溜めておく場所を作って、バキュームカーに吸い取ってもらうしかない気がします。地域の清掃事務所に連絡すれば来てくれますから。
バキュームカーって、東京をはじめとする都市部ではあまり見かけないかもしれませんが、清掃事務所が通常のゴミ回収と同様の業務として行っています。
これはちょっと不思議な話かもしれませんが、長年バキュームカーで回収に携わるベテラン作業員に、住人の病気を見抜く人がいます。回収する排泄物のニオイなどから「糖尿病とか、大丈夫ですか?」と住人の方に聞いたらしいんですが、本当に糖尿病だったと。
あとは、回収する排泄物の量の変化で「食が細くなった?」とか「おむつになった?」など、様々な体調変化の予測ができるようです。「ウンコは健康のバロメーター」って言いますけど、本当なようです。
また、病院や老人ホームからは、大量のおむつがゴミとして出されます。排泄物そのものは処理されていて、使用済みのおむつだけ回収する作業になりますが、清掃車の回転盤が回っているときは、みんななるべく近寄らないように気を付けています。回転盤が回るとゴミから小さなほこりが大量に舞い上がるため、それを吸い込んでしまうのを避けるためです。
というのも、そういった施設から出るおむつは「感染」と「非感染」に分けて出されているのですが、われわれはどちらも回収しなければいけないので、コロナウイルスがはびこるご時世でもありますし、かなり気を付けている、ということです。
そう考えると、われわれもかなり危険と隣り合わせの商売だということがわかっていただけるでしょうか?
ですので定春の大量のうんこは、われわれの身の安全を守るためにも、きっちりバキュームカーで回収してもらってください! 宇宙生物のウンコですから、宇宙にしか存在しない未知の物質が、われわれ清掃員に襲い掛かってくるかもしれませんから(笑)。
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!