松坂大輔という「太陽」に引きつけられるように、数多くの才能あふれる選手たちがプロ野球界に結集した“松坂世代”。
プロ入りした94名のうち、現在も現役を続けているのは30名だ。彼らの悲喜こもごもと「今」を追った。(⇒前編「輝いていた松坂世代は今…悲喜こもごもの野球人生」)
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プロ野球選手として斜陽を迎える選手が増えてきた松坂世代にあって、まだまだ第一線で気を吐いている選手もいる。
昨年FAで阪神からDeNAに移籍した久保康友は、今季、開幕投手を務めるなど、ここまでチーム最多の8勝とエース級の活躍で特に序盤は牽引した。同僚の長田(おさだ)秀一郎も気がつけば勝ちパターンのリリーフとして重用されている。
広島の梵英心(そよぎ・えいしん)は、この世代の野手としては数少ない主力として今季もスタメンに名を連ねている。
巨人で代打の切り札的存在だった人気者の矢野謙次は、今季、まさかのトレードで日本ハムへ移籍。移籍3戦目で決勝本塁打を放った。その後は少し元気がなかったが、ここ一番での場面で登場したら、何かやってくれそうな雰囲気はまだ失っていない。
かつて、“松坂世代”と称されることに反発し、いつかは「新垣(あらかき)世代と言わせたい」と話した新垣渚は今年、ヤクルトに移籍後、初勝利を挙げ復活を印象づけた。ここまで10敗とバカバカ打たれる試合も多いが、ハマる日はほれぼれする投球を見せるので、なかなか諦めさせてくれない。
7度の手術からカムバックを果たしたあの男
復活といえば、計7度の手術からカムバックを果たした館山昌平(ヤクルト)だ。昨年、3度目の右肘手術で移植できる靱帯は尽きた。“次切れたら終わり”の戦いを続ける右腕は、7月11日のDeNA戦で1019日ぶりの白星を挙げると、その後も間隔をあけつつマウンドに上がり、ここまで6勝。
ボロボロになっても投げ続けるその不屈の魂は、優勝へひた走る首位ヤクルトに勢いをつけ、精神的な支えとなっている。
“松坂世代”とひとくくりにしてしまいがちだが、その野球人生は十人十色だ。
かつて“松坂世代の未完の大砲”といわれ、横浜、オリックスで活躍後、格闘家に転身。その後、さらに野球再挑戦と“世代一奇特”な野球人生を歩んだ古木克明氏(現・大学院生)は、こう言う。
「僕は“松坂世代”という呼称に誇りがあります。今苦しんでいる選手も多いですが、僕からすれば野球がやれるだけでうらやましい。(新垣)渚みたいに復活してくれると、我がことのように嬉しいですしね。
同級生の彼らがいるから僕も頑張ることができたし、皆、同じような思いは少なからずあるはず。だからこそ、(松坂)大輔には言いたいんです。松坂世代の火をまだ消しちゃいけない。松坂世代は永遠に不滅なんです」
まだ35歳ではないか…。老け込むにはまだまだ早い。この“奇跡の世代”の選手たちの悪あがきに期待したい。
(取材・文/オフィスチタン)