運命のドラフトの行方は…

いよいよ10月20日(木)に迫った2016プロ野球ドラフト会議。

今年は大豊作とされ、高校・大学生いずれも投手に注目株が勢揃い! というわけで、本当の評価は? 競合する1位指名の行方は? 彼らを追い続けるスポーツ紙記者やスカウトたちによる座談会で探ってみた。前編の大学生編に続き、今回は高校生・社会人のドラフト候補を検証!

A=アマチュア野球担当記者 B=在阪球団若手(中堅)スカウト C=在京球団ベテランスカウト D=某球団スカウトOB

●高校生は「BIG3+1」

 高校生も、やはり投手の名前が挙がってきますね。「BIG3+1」という図式みたいですが。

 夏の甲子園の前、寺島成輝(履正社)、藤平尚真(橫浜)、高橋昴也(花咲徳栄)が「BIG3」と呼ばれていたところに大会後、優勝投手の今井達也(作新学院)が加わって「+1」ってことですね。

 4人とも怪物感はないけど、投手としてハイレベル。現時点では寺島が一番上だろうな。左で150km/hを投げるって時点で特Aなんだけど、試合の中で場面や打者によってギアチェンジできるんだ。1年目から一軍で使われるだろうし、3~4年くらいで先発の柱になれる素材じゃないかな。

 藤平も即戦力度は高い。甲子園ではストレートで押す投球スタイルを貫いたが、実は最大の武器はスライダーなんだよ。打者は「ボールが消える」と言ってる。あれはプロの打者でも手こずるぞ。橫浜の先輩、涌井秀章(ロッテ)は高校時代から完成度が高かったけど、藤平は荒削りな分、伸びしろも涌井より大きい気がする。

 埼玉県予選を無失点で勝ち上がった無双ぶりで注目を集めた高橋は、甲子園でちょっと評価を落としました。大阪入り後、調整に失敗したと聞きましたが、左投手はデリケートですからね。寺島よりしなやかさを感じるけど、馬力に欠ける。将来性は◎でも、プロで1年目から活躍を求めるのは酷(こく)かな。

 将来性なら今井だろう。ストレートの球質がいいんだよ。「糸を引く」という表現がピッタリ。それに何か持ってなきゃ「優勝投手」にはなれないからな。

 寺島は1位競合になりそう。藤平も1本釣りを狙って1位入札するチームがあるかも。高橋、今井はハズレ1位かな。2位でウエーバーになったら、指名順位の早い球団に持っていかれる。欲しいなら1位で獲っとかなきゃ、と考える球団はあるよ。

 あとは甲子園で活躍した堀瑞輝(広島新庄)、北海道予選で注目された古谷優人(江陵)の両左腕が気になります。地元球団が1位を外した時に、ひょっとしたらハズレ1位に浮上してくる可能性があるかな。

社会人は不作、野手は凶作

 今年は例年に比べて、社会人投手の名前が挙がりませんね。

 山岡泰輔(東京ガス)だけだな。山岡は即戦力という面ではナンバーワン。先発が足りない球団は1位入札も考えるだろうし、ハズレ1位で複数球団が競合することは間違いなし。

B 身長173cmと小柄ですが、ボールに力があってコントロールも安定している。完成度が高い投手です。高校(瀬戸内)時代、甲子園でのピッチングの動画を見たダルビッシュ有(レンジャース)が「すぐにプロに行くべき」と絶賛したという逸話があるくらいですから。

 酒居知史(大阪ガス)も評価されてるね。でも、1位でいくまでの投手じゃないな。酒居も安定感はあるが、身長178cmと決して大きくはない。社会人野球界の現状を表してる気がする。まとまってるけど、凄みはない。

 いや、それ以上に野球界にとって深刻なのは野手の人材不足でしょう。上位候補で名前が挙がっているのは、京田陽太(日大)、吉川尚輝(中京学院大)の両遊撃手くらい。

 「鳥谷二世」なんて言われてるけど、今の時点で言えば、そりゃ鳥谷に失礼だ。身体のサイズはあっても、プレーが小粒なんだよ。ただ、「打てる遊撃手」はどこも欲しいはずで、阪神あたりが1位で投手を外したら、鳥谷の後釜としてハズレ1位でいくかもよ。

 同じ遊撃手でも、源田壮亮(トヨタ自動車)は守備はプロレベルだけど、バッティングが非力だから評価が低い。でも、プロで長くやれるのは意外とこういう選手。

 では最後になりますが、各球団の隠し球の情報を…。

C そんなの言えるわけないだろう(笑)。

 まあ、もうみんなわかってることだから言うけど、今年は特Aの近くに隠れた逸材がいる。例えば、田中と高校大学の7年間同じチームでやってきた池田隆英(創価大)。球速150km/hを越える本格派で、プロで1年目からローテーションに食い込む力がある。1位で指名があっても不思議じゃないぞ。

C 1位とまでは言わないけど、星知弥(明大)もそうだな。柳の陰に隠れているが、最速154km/hと球速では上回る。

B 高校ナンバーワン寺島の履正社にも、2番手に山口裕次郎という左腕がいて、潜在能力では寺島と遜色(そんしょく)ないと言われています。彼も下位で指名がありそうですね。

 本番までスカウトの皆さんも眠れない日が続くと思いますが、お身体に気を付けて(笑)。我々は当日を楽しみに待つことにします。