糸井嘉男(オリックス)、岸孝之(西武)らFA資格を持つ大物選手の動向に注目が集まる中、いきなり巨人の「未完の大砲」大田泰示と日本ハムの左腕エース・吉川光夫を軸にした2対2の大型トレードが成立。
これで一気にストーブリーグが過熱するのか? 恒例、現場記者の匿名座談会で、前編記事(「巨人・大田とのトレードで見せた日ハムのしたたかさ。中田翔FA移籍への布石とは?」)に続き、各球団の本音と今後の展開を読む。
・若手野球ライター(以下、A) ・スポーツ紙中堅記者(以下、B) ・スポーツ紙ベテラン記者(以下、C)
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A 若返りをシビアに推進する、そういう球団の空気を察して、FA移籍を決意したのが陽岱鋼(日本ハム)でしょう。残っても今後、間違いなく出番は減る。
B 元々、プロ入りの時にソフトバンクを熱望していて、ドラフトで日ハムが敢然と1位指名しクジに勝って強奪した選手。初恋の相手と、ようやく思いを遂げることになりそうだね。
C いや、今のソフトバンクの外野陣は柳田(悠岐)、中村晃、長谷川(勇也)と層が厚く、陽が入っても試合に出られる保証がない。それなら確実にレギュラーで起用されそうな楽天を選ぶ可能性もあるな。
A 岸(西武)も同じくソフトバンクと楽天の一騎打ちの様相ですね。こちらは地元(宮城県出身)の楽天を選ぶのではないかと。
B どうかな? 岸は確実に2桁勝利が計算できる投手。優勝を逃したソフトバンクはなんとしても獲らなきゃいけないと思ってるはず。楽天もかなり頑張るだろうけど、条件面でソフトバンクに勝てるチームは今の日本にはないよ。
A 毎年のFA戦線の主役・巨人は森福(允彦・ソフトバンク)、山口俊(DeNA)の投手2枚に絞った気配です。
C 順当といえば順当。FAの獲得枠が3人までなら、センターを守れる糸井か陽を獲りにいったんだろうけど。
B 森福は喉から手が出るほど欲しかったはず。原監督時代の巨人は終盤7回、8回の苦しい場面を確実に抑えてくれるセットアッパー山口鉄也の存在で勝てていたんだよ。クローザーは西村(健太朗)、マシソン、澤村(拓一)と替わっても、実質的な「抑え」は山口だった。その山口の力が完全に衰えた今、代わる存在として白羽の矢を立てたんだろう。評価もCランクなので、ほぼ無償に近い形で獲れる。ただ、森福も全盛時ほどのピッチングが果たしてできるのか?
FAは特効薬で即効性はあるが後遺症も残る
A 山口俊もFA宣言と同時に巨人が手を挙げました。ここも確実かと。先発でもリリーフでも使える投手だけに補強ポイントとマッチします。ただ、最近では広島からFAで獲得した大竹寛がそうですが、「よければ2桁」というクラスの投手が巨人で成績を残せますかね?
C 極端なことを言えば、0勝でもいいんだよ。巨人がプラス0でもDeNAは山口がいなくなることでマイナス10(勝)。それだけで獲った意味がある。巨人というのは昔からそういう考え方の球団。だから同じ力の選手なら同一リーグの選手を獲りにいく。交換トレードならこちらの出した選手が活躍してしまうリスクがあるけど、FA移籍なら、もし飼い殺しにしたってマイナスになることはない。
B 今の巨人が本当に悩んでいるのは捕手だね。今季は我慢して小林(誠司)を使ってきたが、思いのほか成長が遅いし、いくら捕手は守備が第一といってもバッティングがお粗末過ぎる。来季もう1年使ってみて、もう我慢の限界となればFA権を所持している嶋基宏(楽天)を獲りにいくだろう。
昨年のオフは阿部慎之助の捕手復帰のプランもあって動かなかったが、もう阿部に捕手は無理だということがはっきりした。そうなると小林の成長を待つしかないが、果たしてどこまで辛抱できるのか。
A FAというのは特効薬みたいなもので、即効性はあるけど後遺症も残る。巨人と阪神はこの特効薬をこれまで積極的に使ってきたけど、後遺症に悩まされている感じですね。
C それと、メジャーへの移籍も含めて、これまでFAで選手を持っていかれている印象のある日ハムや広島、ヤクルトやDeNAなんかにしても、その穴を埋めるために若手選手を次々に育てて優勝を争うチームになった。今の時代はドラフトも含めて、計画性のあるチーム編成というのが重要ということだよな。