見る者の胸を熱くする激走を、東京マラソンの舞台でも見たかった!
昨年12月の福岡国際マラソンで2時間9分11秒、日本人トップの3位となり、今夏の世界選手権(英国・ロンドン)代表(3人)の有力候補となっている公務員ランナーの川内優輝(29歳・埼玉県庁)。
だが、タイム的には決して“当確”ではない。だったら、もともと毎月のようにフルマラソンを走っているわけだし、残りふたつある選考レース(26日の東京と3月5日のびわ湖毎日)のどちらかにも参戦すればいいのに!?
なぜ走らないの!?という素朴な疑問を前編記事に続き、本人にぶつけてみた!
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実は、川内には5年前のロンドン五輪の代表選考時の苦い記憶がある。選考過程は今回とは少し異なるが、五輪直前の福岡国際で2時間9分57秒、日本人トップの3位に入って有力候補に挙がりながら、東京マラソンにも強行出場。しかし、2時間12分51秒の14位と惨敗してしまったことが響き、五輪出場を逃したのだ。
川内 ロンドン五輪前の福岡は2時間10分を少し切っただけで、1位だった選手とも2分以上差があり、自分自身で納得してない部分があったので、東京でさらにいいタイムが狙えると思っていたんです。ただ、結果的に失敗し、周りからは出ないほうがよかったとかいろいろ言われまして…。
くしくも、今年の世界選手権(開催地)はそのときと同じロンドンということで、今回はあえて出ないことにしたんです。これで、もし代表に選ばれなかったら残念ですが、少なくとも当時いろいろ言っていた人に『やっぱり(あのときもう一度)走ったのは正解でしょ』と言えるじゃないですか(笑)。まあ、前回は出てダメで、今回は待ってどうなるかですね。
―積極的にレースに出る川内選手らしくない気もしますが、今回は福岡国際での走りに納得しての判断?
川内 勝負的にはそうですね。ただ、私の力はあんなもんじゃないですし、4月以降は海外のレースにも積極的に参加し、そこで自己ベストの更新を狙いたいと思っています。
代表になる以上は、世界と戦いたい
―2月5日、選考レースのひとつである別府大分毎日マラソンでは、ロンドン五輪6位入賞の中本健太郎選手(34歳・安川電機)が優勝しました。今後、選考は難航することも予想されますが、他のレースは気になります?
川内 私自身もレースに出ているので、ほとんど気にならないですね。ちなみに、東京マラソンのある日も、岡山県の『そうじゃ吉備路マラソン』(ハーフ)に出る予定です。中本さんの優勝は価値があると思いますし、私自身、中本さんとは相性がいいので、一緒に選ばれたらうれしいです。逆に、私を含めたふたりのタイムが、残りの東京とびわ湖を走る選手にちょうどいいプレッシャーになったのは、よかったんじゃないですか。
―代表入りを狙うのは今回が最後とも公言しています。
川内 ロンドンの気温は25℃前後くらい。ただ、その後の2019年のドーハ(世界選手権)や20年の東京(五輪)は、どう考えても30℃を超えてくる。そうなると、暑さに弱い私に勝つ見込みはありません。私は代表になる以上は、世界と戦いたいという気持ちがありますし、それができなければ代表になる意味はないと思っています。
ロンドンは私の好きなコンディションですし、この1月に3日連続で試走し、欧州独特の直角カーブなども頭に入っています。その点でほかの選手よりも有利な部分があるとも思います。そうした経験を本番で生かしたい気持ちが強いですね。
◆川内優輝が出場しない東京マラソンを制する日本人選手は誰なのか!? 発売中の「週刊プレイボーイ」10号では分析記事を掲載。是非、お読みください。
●川内優輝(かわうち・ゆうき) 1987年3月5日生まれ、埼玉県出身。学習院大卒業後、埼玉県庁へ。“市民ランナー”として力を伸ばし、2011年、13年の世界選手権に出場。自己ベストは2時間8分14 秒。身長172cm、体重59kg
(取材・文・撮影/栗原正夫)