今夏にもビッグクラブへ移籍か!? 今年1月、ベルギーのヘントに渡った日本代表FW久保裕也が絶好調のままシーズンを終えた。
重要な試合でゴールを連発し、欧州1部リーグでの日本人最多得点記録を更新。シーズン途中に現地で直撃した久保本人の自己評価に続き(前編記事「チャンスに決められている。それだけです」参照)、クラブの監督、地元メディアの評価とは!
■いい移籍だったと認めざるをえない
ここまで新天地ベルギーで順調な歩みを続けている久保について、昨夏から獲得に強い関心を示していたとされるヘントのハイン・ヴァンハーゼブルック監督にその評価を聞いてみた。
ちなみに、このヴァンハーゼブルック監督は就任1年目の14-15シーズンにヘントを初のリーグ優勝に導き、翌シーズンは欧州チャンピオンズリーグ(CL)でもグループリーグを突破するなど、今、欧州でも注目を集める監督のひとりである。
―久保のプレーぶりをどう評価しますか。
「満足しているよ。チームへの適応もスムーズ。ここへ来る前に約3年半、スイスでプレーしていたことがプラスに働いていると思う。メンタルの強さもあり、人としてもナイスガイ。ヘントが若いチームだったのも、彼にはよかったのだろう。ピッチではボールに強く、判断も早い。冬に加入したばかりだけど、もはや欠くことのできない選手」
―すでに多くのゴールを決めていますが、期待どおり?
「フィニッシュの精度やチャンスの数を見れば、彼ならこれくらいはやると思っていた。右足も左足も使え、ヘッドでも決められるんだからね。それにユウヤはクレバーで、チームのやり方にもきちんと適応してくれている。試合を見てもらえれば、チーム戦術のなかで彼の高いテクニックが生かされていることがわかるはずだ」
ゴールを量産していることで、現地メディアに「スシボンバー」などと称賛されている久保。試合取材中に出会ったベルギー人記者にも話を聞いてみた。
「右足も左足も使えて、走り込みのタイミングも抜群。それに加えて、遠めからのシュートも打てるし、本当に洗練されたプレーヤーだ。何より大事な場面でゴールを決め続けているし、前線と中盤のつなぎ役にもなれる。正直、スイスリーグなんてチェックしてなかったから、ここまでの選手とは思っていなかった。
ヘントがクラブ史上最高額の350万ユーロ(約4億2000万円)を払って獲得したと聞いたときは、どうかと思ったけど、今は本当にいい移籍だったと認めざるをえない」(テレビ局「Proximus」のレポーター、ヴィンツェンツォ・シウロ氏)
「ボールタッチや前線でスペースを見つける動きに優れ、シュート精度も高い。ボールを力任せに蹴るわけではなく、感覚を大事に何度もタッチしながらゴールを決めているところに才能を感じる。チームにもすぐにフィットし、ヘントに新たな価値をもたらしたボーナスプレーヤーだね。へントにしては大金をかけて獲得した選手だけど、レベルの高さには驚かされている」(高級誌『Knack』のスポーツ担当記者、フレデニック・ヴァンヘウレ氏)
地元メディア関係者が語る久保の弱点
ベルギーで急速に評価を高めている久保。だが、実は彼らも手放しでホメているばかりではなかった。ある地元メディア関係者は久保の“弱点”をこう指摘した。
「唯一の問題は彼がなかなか取材に応じてくれないこと。久保はチーム内で問題なく英語を話しているようなのに、取材対応が素っ気ない。おまけにクラブも個別インタビューの取材許可をなかなか出してくれないんだ」
久保は武骨だが実直で、試合ごとにメディアの取材には、短い時間ながら真摯(しんし)に対応している。だが、表情が豊かかといえばそうではなく、決して口数が多いわけでもない。大活躍している久保をもっと取り上げたいベルギーの記者にすれば、そんな対応がいかにも素っ気なく映ったのかもしれない。
そんな地元メディアの嘆きを聞いたクラブは現地時間4月27日、1月の入団会見以来初となる地元メディア向けのインタビューの場を設けた。
それを受け、翌日には日本にも「すしは好きだけど、スシボンバーというニックネームはちょっと…(苦笑)」などといった久保の談話が逆輸入されたわけである。
「今後も日本代表に絡めるという自信は得たけど、安泰だとかは決して考えていない。また呼ばれるためにも、クラブで結果を出し続けたい」とあくまで謙虚に語る久保。
ただ、このままゴールを連発し続ければ、希望するイタリアやドイツへの移籍が今夏にも実現し、名実ともにハリルジャパンのエースに上り詰めるかもしれない。
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(取材・文・撮影/栗原正夫 写真/アフロ)