今年5月、パンクラスの女子ストロー級王者に輝いた近藤朱里(しゅり)が、9月23日(土・祝)、世界最高峰のMMA(総合格闘技)イベント「UFC」に初参戦する(さいたまスーパーアリーナ)。
得意の打撃技を武器に着実に勝利を重ねてきたが、それ以上にスゴイのはプロレス、キックボクシング、MMAでベルトを巻いた「三冠王」であること。そんな前人未到の快挙を、彼女はなぜ達成できたのか?
前編記事では、プロレス時代の苦労話を明かした朱里。後編ではキックボクシング、MMAでの闘い、そしてUFC参戦の先にある「夢」を語る!
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―ハッスルの後、2009年からプロレスと並行してキックを始めたのはなぜ?
朱里 プロレスとは別に体を動かしたいという気持ちがあって、一般会員としてジムに入ってキックを始めたんです。練習しているうちに「やるからには強くなりたい」と思い始めました。
―プロレス、格闘技は自分の中でどういうすみ分けを?
朱里 最初は大変でした。両立できなかったので格闘技のほうを休止し、1年ほどプロレスに専念した時期もあります。その間にプロレスの試合でしっかり魅せる自信がついてきて、またキックをやりたくなったんです。
当時はプロレスラーである私が格闘技をやることに対して軽い気持ちで出ているんじゃないかと思う人たちもいました。そう思われるのはイヤだったし、一生懸命練習して結果で見せつけるしかないと思いました。そして実際に結果を出して、認められるようになっていったときはうれしかったです。
―そして、Krushで連勝街道を走りましたが、その間もずっとプロレスをやっていたんですよね?
朱里 減量中もやっていました。どんどん体が軽くなっていくという(笑)。キックの前日計量をした直後にプロレスで30分時間切れ引き分けの試合をして、翌日キックの試合をしたときは本当にヤバかったですね。
―2016年1月にはMMAへの転向を発表し、パンクラスで闘うようになりました。MMAをやろうと思ったきっかけは?
朱里 Krush王座を3度防衛した後、目標とするものが見えなくなってしまったんですよ。自分の年齢もあるし、そんなとき、UFCの映像を見たら「私も格闘技で最高峰の舞台に上がりたい」という気持ちが芽生えたんです。昔はMMAなんて絶対やらないと思っていたけど、やってしまいましたね(笑)。
またプロレスの試合ができたら夢がある
―パンクラスでも連戦連勝をマークし、今年5月にはストロー級王者になりました。
朱里 UFCに出るためにも勝たなければいけないし、絶対にベルトを獲りたいという気持ちを強く持っていました。王者になったときは本当にうれしかったです。変わらず応援してくれている方、(所属ジムの)ボスジムの(田島)剛先生、(田島)洋先生、選手たち、仲間がいてくれるから自分があるし本当に感謝しています。
―なぜ、前人未到の「三冠王」を達成できたんだと思いますか?
朱里 プロレスもキックもMMAも、やるからには結果を出さなければ意味がないと思っていたからですね。それぞれ「別物」と考えて、着実に真剣に取り組んできたという自負があります。プロレスだけをしている人が格闘技に出ても結果は出ないし、その逆もしかり。どっちもスゴイし、どっちもナメないでほしいと思います。
―UFCは独占契約なので、その間プロレスの試合をすることは難しいですが、チャンスがあればやりたい?
朱里 もちろんUFCのチャンピオンになるのが目標で、今はそこに集中していますが、またプロレスの試合ができたら、ひとつ夢があるんです。SMASH時代にライバルだったASUKA選手(現WWE・NXT王者)と試合がしたい。プロレスがあるからこそ今の私がいるので、ファンの方々のためにもそんな夢が叶えられたら最高ですね。
(取材・文/布施鋼治 撮影/保高幸子 長尾 迪〈試合〉)
●近藤朱里(こんどう・しゅり) 1989年生まれ、神奈川県出身。2008年にハッスルでデビューし、プロレスラーとして多くのタイトルを獲得。09年からはキックボクシングも並行し13勝1敗。16年にパンクラスでMMAデビューし5戦全勝。今年5月には同団体のストロー級王者に輝いた
『UFCファイトナイト・ジャパン』 9月23日(土・祝)/さいたまスーパーアリーナ メインイベントはかつてPRIDEでも活躍したマウリシオ・“ショーグン”・フアvsオヴィンス・サン・プルー。近藤朱里は韓国のジョン・チャンミと対戦。ほか、五味隆典、石原“夜叉坊”暉仁、廣田瑞人、中村K太郎ら多くの日本人ファイターが参戦予定。詳細はオフィシャルサイトでチェック!