UWFインターナショナルで頭角を現し、PRIDEでのドン・フライとの激闘でブレイクし、“プロレス界の帝王”へと駆け上がった高山善廣選手 UWFインターナショナルで頭角を現し、PRIDEでのドン・フライとの激闘でブレイクし、“プロレス界の帝王”へと駆け上がった高山善廣選手

試合中の不運な事故により頸髄完全損傷という重症を負い、首から下が動かないという深刻な状況に置かれている“プロレス界の帝王”高山善廣(よしひろ)選手。

9月、有志による支援団体「TAKAYAMANIA」が設立され、各プロレス団体が協力し、試合会場での募金箱設置や応援グッズ販売、チャリティー興行などで寄付を募り、高山選手の治療費などを支援するという。

週プレにおいても、先月配信した鈴木みのる選手のインタビュー(「ポケットに余っている10円でいいから協力してほしい」)に続いて、より多くの人々に支援への理解や協力を広めるべく、今回、大物プロレスラーや関係者たちに高山選手への応援メッセージを寄せていただいた。

前編(「長州、前田、小橋…レジェンドたちの熱きメッセージ!)に続いて、後編ではかつてのUWFインターナショナルの同志、そしてPRIDEで激闘を繰り広げたあの大物格闘家のコメントをお届けする――。

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まず、高山選手がプロの世界に入ってから、先輩として時には厳しく、時にはハメを外して深酒をし、リング上では激しいファイトを展開した、安生洋二氏。UWFインターナショナル末期(96年頃)、山本喧一(けんいち)を含めた3人で「ゴールデン・カップス」なるユニットを結成し、マット界を席巻していた、その安生氏が語る。

「なんて言ったらいいんだろうねえ…。もちろん高山には元気になってほしいし、話を聞いた時もひっくり返りましたよ。だけど、思ったよりも深刻な状況だと知って、こっちもものすごく戸惑っているのが本音ですよね。

最近、高山と会ったのは4月だったかな? 会った理由はもう忘れたけど、その時は『安生さん、早く店を出してくださいね。必ず行かせてもらいますから』みたいなことは言ってくれましたよ。高山は(2004年8月に)脳梗塞の手術をしているから、一緒に酒を飲もうなんてなかなか言えないんだよね。昔はガンガン飲んでいたから、その話を聞いた時も寂しさがあったけど、さらにこうなるとね。だから、やっぱり複雑な気持ちになるよね…」

関係が深いだけあって、その心境はとても切なく、複雑なようだ。「安生さん、早く店を出してくださいね」と高山選手が言ったように、現役を引退した安生氏は現在、東京・用賀の串焼き屋「市屋苑(いちおくえん)」で働いている。

この「市屋苑」は、元Uインター取締役の鈴木健氏が店長を務める店。鈴木氏もまた、高山選手の回復を心から願うひとりである。鈴木氏がこう語る。

「今、市屋苑のある場所が、昔はUWFの事務所になっていたから、そこに高山が訪ねてきて、初めて遭遇したの。だからUWF関係者では、私が最初に高山に会っていると思う。身長も高いし、足も30cmくらいあったし、いいキャラしているなって思った。そこからいろいろあって今があるけど、今回のことを聞いた時には『マジかよ』って思った。

Uインターや(その後に設立された団体)キングダムがなくなって、今のようなプロレスが主戦場になっていくと、それまで以上に『受けの凄み』を見せなきゃいけないから大変だろうと思っていたけど、高山は異色のプロレスラーだと思うから、まだまだやれることも残っているはず。だからもったいないよ。

市屋苑でも募金箱を作ったし、送金してくる地方のファンもいる。こっちからも寄付はさせてもらおうと思っているしね。新弟子時代、あれだけの厳しい練習に耐えられた高山だから奇跡を起こしてほしいし、這い上がってほしいよね」

ドン・フライ「俺が闘った選手の中でも最高の相手だ」

ちなみに、Uインターのエースであり、高山選手の師匠にあたる現RIZIN統括本部長の高田延彦氏は、高山選手の病状が公表された後、自身のTwitterで「高山善廣の大怪我、自身や家族の苦しい思いは事が大き過ぎて想像すら及ばない、我々にも受け止め難い現実だ。辛いよ、言葉が見つからない。今はとにかく一歩ずつ回復する事を祈るしかない。まずは本日正式な情報公開を受けて榊原委員長と連絡を取り10月RIZIN福岡大会での募金箱設置を確認した」と綴(つづ)った。

さらに高田氏は「高山!なにやってんだよ、必ず元気になってまた杯を交わすぞ、安生、田村、桜庭、ヤマケンらみんなでな、あの時みたいに、約束な。」と、病床の高山選手に檄(げき)を飛ばしている。

一部では、この檄に対し賛否の声が上がったという。04年8月に脳梗塞の手術を受け、酒が飲めなくなった高山選手への言葉としてはどうなのか…といった声もあったそうだ。だが、師匠である高田氏は、海のモノとも山のモノともわからない若造が“帝王”と呼ばれるまでに登りつめた道程を、時には間近で、時には遠くから見守ってきた。だからこそ、第三者には決して踏み入ることのできない崇高な師弟関係が根底に存在しているがゆえのコメントだったように思うが…。

最後は02年6月、高山選手と伝説の名勝負を闘った相手、“PRIDE男塾塾長”ドン・フライ氏に締めてもらおう。

「高山さんのニュースは桜庭(和志)さんから聞いた。すごくショックだった。本当に悲しいよ。高山さんは偉大なウォリアーであり、偉大なアスリートだ。まさに武士道を体現する人だ。

高山さんは、俺が闘った数多くの選手の中でも最高の相手だ。出会う人の多くが、あの試合の話をする。まさに彼は神様からの贈り物だよ。高山さんに伝えてくれ、毎日あなたの回復を祈ってる、と!」

今も多くのファンが、あのPRIDEでのドン・フライ戦を思い出し、その勇姿を讃えるに違いない。互いの首根っこを掴んで殴りあうというインパクトは絶大であり、あの試合によって高山選手の「凄絶試合製造機」たるイメージが人々の脳裏に深く刻まれることになった。

高山選手は9月22日、「TAKAYAMANIA」のブログにて、「いつも応援ありがとうございます。皆様からのご声援に応えられるよう頑張ります!」とのコメントを発表しているが、無類の『スターウォーズ』好きの高山選手のこと、復帰の際にはダースベーダーよろしく“悪の帝王”としての登場を狙っている気がしてならない。なぜなら、幾度となく困難に打ち克ってきた“帝王”が回復の見込みなしなんて、とても思えないからだ。

だからこそ、最後に伝えたい。WE ARE NO FEAR! みんなが“帝王”を待っている!!

(構成/“Show”大谷泰顕 写真/長尾 迪)

■高山善廣選手への支援はこちらへ 三菱東京UFJ銀行 代々木上原支店(店番号137)口座番号:普通預金0240842 口座名義:TAKAYAMANIA タカヤマニア

●発売中の『週刊プレイボーイ』43号では、ドン・フライが高山善廣との激闘秘話、そして自身が経験した“生き地獄”を激白。そちらもぜひお読みください!