兄弟タッグトーナメント初代優勝者となった、弟のグラン・ゲレーロ選手(左)と兄のウルティモ・ゲレーロ選手(右) 兄弟タッグトーナメント初代優勝者となった、弟のグラン・ゲレーロ選手(左)と兄のウルティモ・ゲレーロ選手(右)

今年も新日本プロレスの“ルチャの祭典”FANTASTICA MANIAが開催された(1月12~22日)。

メキシコCMLLから選手を招聘し本場のルチャが観られるとあって、年々人気は加熱、後楽園ホール大会はチケット入手が困難なほど。8度目の開催となる今年は19選手が飛来と過去最大! その中にはなんと実の兄弟が4組もおり、史上初の「兄弟タッグトーナメント」も実現した。

中でも要チェックなのが、ルード(悪役)ユニットとしてメキシコで大暴れするウルティモ・ゲレーログラン・ゲレーロの20歳差という兄弟。兄は説得力ありすぎの豪快技で年間チャンピオンに2度も輝くトップ中のトップ。弟はデビュー当初から既にダンプカー級の超絶ボディで、キャリア5年目ながら因縁の相手ニエブラ・ロハをマスクを賭けて打ち負かす活躍ぶりだ。

日本での人気も高く、リングに上がれば両手を高く上げるお馴染みのポーズで客席が波打つほど。その人気の秘密は? 新日本参戦はメキシコでどんな意味を持つのか? ルチャリブレ30年の変遷とは?

ゲレーロ兄弟に直撃したところ、リング上の激しさからは思いもよらない静かな語り口で切々とお話しくださったのであった…!前編→「日本で一番の団体に出たことはキャリアに価値を与える」参照)

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―ところで、家族にはあなた方以外にもルチャドールはいますか?

ウルティモ・ゲレーロUG いや、ルチャドールになりたがるようなおかしな連中は私たちだけだ(笑)。他に3人姉妹がいるが男はふたりだけで、お察しの通り、私が年上で彼は末弟。これはいつも聞かれるんだが、母は同じだよ(笑)。

グラン・ゲレーロGG それ、本当によく聞かれるよね(笑)。

―日本は晩婚・少子化傾向なので余計に衝撃を覚える人も多いのかと! メキシコの方は兄弟が多い印象もあり、今まで聞いた中では16人兄弟という人もいました。

UG 昔はそうだったね。私の祖母も16人兄弟だし、父にも兄弟は8、9人いる。私たちの上の世代はそんな人も多いよ。

―ウルティモ選手は試合の傍らジムで指導もされていますが、元々、グラン選手はお兄さんに教わって?

GG はい。14歳から兄のジムで教わっています。以前から筋トレはしていましたが、僕自身が100%打ち込んで練習したのはルチャリブレだけです。

―ここにグラン・ゲレーロという素晴らしい選手をまず輩出されていますが、他には?

UG そうだな、日本に関わりのある選手といえばフリーとしてドラゴンゲートに来日中のバンディード。最近よくアレナ・メヒコに出ているマヒア・ブランカやテンプラリオ、彼らはみんな私のジムで練習を積んだ選手だ。ブルー・パンテルには選手として活躍している息子さんがふたりいるが、その下の息子さんも今うちのジムで練習している。13、14歳ぐらいから始める人が多いね。

―お兄さんの指導は厳しいですか?

GG もうすごいですよ! 超コワイです(笑)!

UG ハッハッハッ!

―そのおかげかデビュー当初から兄に負けず劣らずのガッシリした体つきで十分に強そうでした!

GG ルチャドールとして正しい道を歩むためには体づくりも大事だと厳しく教わってきましたから。

今の選手たちはかなり命を危険に晒している

―小さい頃からお兄さんの活躍を見てきた?

GG はい。兄とは20歳以上離れていて子供の頃はすでに離れて住んでいたのですが、地元で試合がある時は父がいつも連れて行ってくれていました。休暇の時、メキシコシティの兄のところに行ってルチャを教えてもらったのが僕のキャリアの始まりです。体を大きくするトレーニングは正直かなりキツイですし、兄の指導は厳しい。でもそのおかげで当たりの強い選手になれたのだと思います。

―では、今後の目標を教えてください。

GG CMLLで最上級のルードと呼ばれたい。僕はキャリアも短く、まだまだ足りない部分もあるけど、CMLLで偉大なルチャドールたちと試合することで特にルードとしての流儀みたいなものも学んできました。年間最大の大会アニベルサリオにも出場できたし、今の歩み方は正しいと思っています。

今後はタイトルも獲得してカンペオン・ウニベルサル(総合チャンピオンを決める試合)にも絡みたいし、この世界でビッグになりたい! そのためにこの「兄弟タッグトーナメント」もすごく大事な戦いになると思うので、集中して臨みたいです。

―兄のウルティモ選手は90年にデビューして以来、28年間プロとしてやってきて、しかもずっとトップですよね。

UG いやいや、もちろん私にも無名の若手時代はある。98年からだんだん上向き始め、99年に「グラン・アルテルナティーバ」というトーナメントで優勝してから一気にキャリアアップできた。それは有名選手と若手が組むトーナメントなんだが、そこで勝てば自動的にスペル・エストレージャ(一流選手)の仲間入りができるんだ。

―約30年、この業界に身を置いてきた中で、ルチャリブレは変わりましたか?

UG そうだな、昔よりずっと危険になった。昔はもっとグラウンドでのジャベ(関節技)の攻防が多かったが、今はその戦いが空中に移動してより難易度が増したという感じだ。だがそれは良い変化だと思うね。あんな空中殺法を繰り出す今の選手たちはかなり命を危険に晒(さら)しているし、本当に尊敬するよ。

ただ、そんな技を食らう私たちルードのトレーニングもまたハードになってきている。サッカーのゴールキーパーのような気分だ(笑)。

―(笑)確かに、受けて魅せるのがプロレス、横回転しながら上から飛んでくるトルニージョなどは技を受けるほうも大変でしょうね。

UG そうなんだよ。トルニージョ、トペ・コン・ヒーロ、615、450°スプラッシュ…もう種類も多すぎてな(笑)!

―ではジムで指導していて、今の若者が理想とする選手像もご自分の若い頃とは違ってきていますか?

UG いや、それは一緒だろう。少年がルチャドールになりたいと思う時は、やはり誰かに憧れる。私自身も父に連れられてルチャを観て、同郷のブルー・パンテルのようになりたいと憧れたもんだよ。今の若者たちも、例えば私のようになりたいと言ってジムに来るから、そこは昔から変わらないところだ。それぞれ理想の選手がいて、それが私かミスティコかアトランティスかの違いだけ。今も昔も憧れの選手はいるものだよ。

高山選手が本当に大変な状況だと知っている

―ちなみに、グラン選手が憧れたのは?

GG もちろん…(無言で兄を指す)。

UG ハッハッハ! どうもありがとう(笑)。

―ウルティモ選手はブルー・パンテルに憧れた、と。

UG プロになって自分独自のスタイルは身につけたが、本格的に始める前は彼のスタイルも真似したよ。要はプロレスごっこだな。子供の頃の楽しみといえば友達とルチャの人形で遊ぶこと、学校でプロレスごっこをすることだったね(笑)。

でもそのうち私もプロになり、ある時は彼とタッグを組み、ある時は彼を倒すことでキャリアを積んでいった。若手時代、地元を出てメキシコシティに来た時には食事に連れて行ってくれたり家に泊めてくれたりしたし、逆に私が彼の子供たちを連れていくようにもなった。小さかった彼の子供たちも今では成長し、テ・パンテル、ブルー・パンテルJr.という立派なルチャドールになっている。

―長いルチャリブレの歴史が引き継がれていく…まさに体現者のような生き方ですね! そんなキャリアも28年の今、ジムを営むほかビジネスもされているとか。

UG 道場をやっているほか、4軒ばかり不動産経営もやっている。

―それは引退後の生活も考えてのこと?

UG それはもちろんだ。ルチャドールの生き方はひとりひとり違うだろうが、とにかく体を酷使する仕事だ。日本でも高山(善廣)選手が激しい試合を重ねて体を壊していることは知っているし、本当に大変な状況だと思う。ルチャドールというのは過酷な仕事で引退後は体がボロボロになるケースもあるし、第2の人生で家族を養うための別の道を考えておくことは必要だろう。もちろん簡単ではないだろうが。

―空中殺法の応酬は、選手という生き方のリスクの大きさと表裏一体ですし、だからこそシリアスに見入ってしまうのかもしれません。

UG まあ、あと40年は現役でいくけどな、ワッハッハッ!

―頼もしいです(笑)! では今後、新日本プロレスとどんな関係を作っていきたいですか?

UG 呼んでくれれば、呼ばれただけ来ようじゃないか!

GG 僕ももっと新日本で試合がしたいです。棚橋選手と戦いたい!

UG 私はオカダ選手、内藤選手とシングルマッチをやりたいね。FANTASTICA MANIAに今回参加はしていないが永田(祐志)選手、真壁(刀義)選手など、いい選手がたくさんいる。後藤(洋央紀)選手ともメキシコで戦っていて強い選手だと実感した。シングルでやるなら、あの髪の毛を賭けてもらっても構わない。どんな選手ともいい試合をしてみせよう。

―それは楽しみです! 最後に日本のファンにメッセージをいただけますか。

GG 日本の皆さん、いつも支えてくれてありがとう。ルード(悪役)なのに熱い声援を送ってもらえて、リング上でそれを聞けるのが本当に嬉しいし本当に感謝しています。新日本で試合をして僕がキャリアアップしていくのを見逃さないでください!

UG ではまずスペイン語で言わせてもらおう。皆さんの応援が私たちの力になる。今の強さ、レベルをキープし、次に来る時も絶対にいい試合をお見せすることを約束しますよ。楽しみに待っていてください。では日本語で。ミナサン、ドウモアリガト! マタ、ヨロシクオネガイシマス!

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この日の夜、勝利して決勝に駒を進めたゲレーロスは、翌日のミスティコ&ドラゴン・リー兄弟との激戦も制し、見事、史上初の兄弟タッグトーナメント初代優勝者となった。次回の来日もお待ちしております!

(取材・文・撮影/明知真理子 通訳/鈴木つどい)

ウルティモ・ゲレーロ 173cm 93kg。世界最古でメキシコ最大の団体CMLLの重鎮ルード(悪役)。これまでの獲得タイトルは数知れず。キャリア28年のベテランながら最強の名をほしいままにしている。

グラン・ゲレーロ 175cm 95kg。2013年デビューの、ウルティモ・ゲレーロの20歳差の実弟。兄との息の合ったタッグプレー、確かな技術を感じさせる巧みな試合運びで観客を沸かせている。