ベナン人の父を持つ八村。昨季全米準優勝の超強豪でプレータイムを伸ばしている2年生 ベナン人の父を持つ八村。昨季全米準優勝の超強豪でプレータイムを伸ばしている2年生

一昨年のBリーグ誕生以降、着実な歩みを続ける日本バスケ界に強烈な追い風が吹いている。日本の高校を卒業後、本場アメリカの強豪大学に進み、現地で高い評価を受ける大型選手が次々に登場しているのだ。

2004年の田臥勇太に次ぐ、日本人史上ふたり目のNBAプレーヤー誕生はもはや時間の問題? ひとり目に紹介した渡邊雄太に続き、この男にも今から注目すべし!

■現役NBA選手も八村の身体能力を絶賛

近い未来のNBA入りを期待できそうな日本人選手は渡邊雄太だけではない。現地で渡邊と同等もしくはそれ以上に高い評価を受けているのが、ゴンザガ大学2年の八村塁(はちむら・るい)だ。

富山県出身の19歳は、明成高校(宮城)時代にウインターカップ(全国高校バスケ)を3連覇し、卒業後にゴンザガ大学に進んだ。昨季NCAAトーナメントで準優勝した超強豪大学にあって、八村のプレー時間は1試合平均わずか4.6分。しかし2年目の今季は、プレー時間が約4倍に増加。ベンチからの出場ながら、昨年12月21日以降は7試合連続でふたケタ得点をマークするなど存在感を示している。

昨季のチームメイトで、今季からNBAのポートランド・トレイルブレイザーズに所属するザック・コリンズは、八村の魅力をこう語る。

「ルイは、僕がこれまで一緒にプレーした中で、最も身体能力に優れた選手だ。体が強く、ジャンプ力があり、リーチも長い。まだ19歳という若さを考えると、体の成熟度は驚異的。これからまだまだ強くなるだろう」

NBA入りした“先輩”がそう証言するように、八村の身体能力とフィジカルの強さはアメリカでも突出している。接触プレーでも当たり負けせず、スポーツニュースのハイライトに登場するほどの豪快なダンクを披露している。

もちろん、そんな八村でも、逸材がそろうアメリカの大学バスケの中で生き残ることは容易ではない。元NBAプレーヤーで、現在は大学バスケ中継の解説者を務めるジェイ・ウィリアムスは、昨年12月にこう語っていた。

「八村はまず、日本とは文化が違うアメリカにおいて『自分がどんな選手になっていきたいか』を確立する必要がある。それができたとき、彼にとってコートは“世界共通”になるんだ」

ゴンザガ大学で2年目のシーズンを迎え、言葉や戦術にも慣れてきたことで、稀有(けう)な能力が解き放たれようとしている八村。最近のプレーを見る限り、ウィリアムスの提言どおりに、アメリカでプレーしていける確信を得たように思える。このまま好調を維持すれば、今季の後半や、NCAAトーナメントでは、チームの主力としての活躍も期待できるだろう。

 豪快なプレーと愛嬌のあるキャラクターで、地元ファンの間での八村人気は高い。 豪快なプレーと愛嬌のあるキャラクターで、地元ファンの間での八村人気は高い。

NBA入りは「もしかしたら」ではなくなった!

 八村、渡邊らの成長によって、世界はおろかアジアでも勝てなかった日本バスケの未来はとてつもなく明るくなりそうだ。 八村、渡邊らの成長によって、世界はおろかアジアでも勝てなかった日本バスケの未来はとてつもなく明るくなりそうだ。

そして、気になるNBA入りの可能性についても触れておこう。八村のゴンザガ大学入学直前の2016年7月、Webサイト『NBAドラフトネット』が、「18年のNBAドラフトで、八村は1巡目全体8位で指名される」との大胆予想を発表している。まだ大学でプレーしていないにもかかわらず、U-17世界選手権で得点王となった実績などから、これほどの高評価を得ていたのだ。

その後はランキングから名前が消えたものの、昨年11月には再び全体15位に浮上。今後も現在のようなプレーを続ければ、さらに順位は上がっていくだろう。

「まだチームでサブだから、NBA入りは難しいのでは?」と疑問に思う人もいるかもしれない。しかし、八村評を語ってくれた元ゴンザガ大のコリンズも、19歳で迎えた昨季はベンチプレーヤーながらチームを支え、シーズン終了後にサクラメント・キングスからドラフト1巡目全体10位で指名(トレードでブレイザーズ入り)されている。このことが示すとおり、NBAのチームはドラフトにおいて“選手のポテンシャル”を重視する。そのコリンズが絶賛する八村も例外ではなく、NBA入りは「もしかしたら」ではなく、「いつ」という次元の話といっていいだろう。

今季中に評価を高め、6月のドラフトにエントリーされるのか。それとも来季以降もゴンザガ大学で実績を積むのか。いずれにしても、NBAドラフトで日本人選手が指名される瞬間は、もう間近に迫っているのだ。

■渡邊、八村以外にも逸材がゴロゴロ

渡邊、八村以外にも、NCAA1部の大学でプレーする日本人選手は増えている。

今季からジョージア工科大学に所属するシェーファー・アヴィ幸樹がそのひとり。19歳のシェーファーは、昨年夏のU-19W杯で存在感を示した新星だ。

ジョージア工科大には「奨学金なし」という厳しい条件で入学し、今季はまだほとんど試合で実績を残せていない。ただ、バスケを始めたのは遅く、高校2年から。それでこのレベルまでたどり着いていることに無限の可能性を感じさせる。アメリカ人の父、日本人の母を持ち、身長205cmという恵まれた体格を持った“未完の大器”が、これから一気にブレイクを果たしてくれることを期待したい。

また、15年夏に東洋大京北高校(東京)を辞めて渡米したテーブス海は、今秋からノースカロライナ大学ウィルミントン校への進学が決定。ほかにも、日本とアメリカの国籍を持つ19歳の渡辺飛勇は現在、ポートランド大学のレッドシャツ(試合に出場できない練習生)として、今秋のデビューを待っている。

これほど多くの日本人選手がNCAAの1部でプレーする時代が来たことに、感慨を覚えるファンは少なくないだろう。先駆者の渡邊雄太は、そんな現状について話す。

「自分がアメリカで成功すれば、アメリカに来たいと思う選手、来る選手が増えるんじゃないかなと思っていました。実際にどれだけ影響を与えられたかはわからないけど、(八村)塁、テーブス(海)がアメリカに来て、さらに渡米を希望する選手も増えていると聞いています。多少なりとも、自分のやってきたことが下の世代にもつながっていることがうれしいですね」

これらの選手たちが順調に成長すれば、将来の日本代表は世界と伍するチームになるかもしれない。2020年東京五輪、その4年後のパリ五輪で躍進し、日本のバスケットボール界が大きく発展を遂げる。そんな明るい未来が訪れることを期待したい。

(取材・文/杉浦大介 写真/アフロ)