全日本女子プロレス(全女)の伝説的悪役レスラーとして名高い、ブル中野。現役引退後はプロレス解説者としてメディア出演する他、ガールズ“婆”バー『中野のぶるちゃん』を切り盛りするビジネス的手腕も発揮している。
現役の青モヒカン時代からは思いもよらない美魔女に変身したことでも話題になった彼女に直撃取材! 前編(「性格の悪いヤツしか生き残れなかった“全女”という時代」)に引き続き、ダンプ松本との関係から引退後の女子プロレスラーのセカンドキャリアまで伺った!
―では、ご自身のことも伺いたいのですが、ダンプ松本さんに誘われて悪役の道を踏み出し、その後、袂(たもと)を分かつことになったんですよね?
ブル そうですね、組んではいましたけど最後は口も聞かないぐらいでした。3年先輩なので自分から何か意見を言えるなんてことは絶対にないし、言われたことを「はい、わかりました」と言うしかないぐらいの大先輩なんです。
―当時の全女とはそういうところだったんですね…。
ブル ダンプさんが芸能界へ行く時、「一緒に行こう」と言われて、考えて「すみません、自分はプロレスをやっていきます」って最終的には断ったんですけど、そこからはもうひと言も口を利いてもらえなかったですね(苦笑)。
その時はクラッシュギャルズさんもダンプさんも引退して、昔は何千人も入っていたお客さんがいきなり50人とかに減っちゃって。もう選手のほうが多いんじゃないかって状況で、かたやダンプさんは引退したてでTVにすごく出ていた時期で。
―しかし、そこで芸能界に行っていればチャンピオンにもなっていないし、歴史に名を残すこともなかったわけです!
ブル だって、私はプロレス以外に何もできないんだから、芸能界行ったとしても「プロレスがなくなっちゃったらどうするの!?」って当然思うし、ダンプさんはなんでそんなに自信があるのかなって思ってました。
しかも、ひとりの人間を一緒に連れて行くって大変なことじゃないですか。もしも私が後輩を連れて行くとしたら、一生、このコのことを面倒見なくちゃって覚悟が必要だし。
―今、やられているお店「中野のぶるちゃん」では、引退した女子プロレスラーの方々が働いておられますね。
ブル みんな45歳以上なので、ガールズバーじゃなくてガールズ“婆”バーなんですけどね(笑)。11人の後輩たちが働いてくれていて、そのコ達は一生面倒を見ていこうというつもりで雇っているので、何があってもお店は潰さないつもりです。
そのコたちも結局、プロレスの話しかできないんですけど、お客さんと話をするうちにちょっとずつ「喋り」を勉強してもらって、セカンドキャリアとしてできるようになってくれればいいなと。
全女の時以上に辛いことなんて絶対にない
―女子プロレスは選手としてできる時期が短い“儚(はかな)さ”も魅力ですが、一方でセカンドキャリアに言及する人はめったにいません…。
ブル ダンプさんも長与さんも50、60になった今でもプロレスをやってるし、ジャガー横田さんも「芸能界もやるけど試合もできる限りはやりたいんだ」と言っていて、私はジャガーさんの考え方が大好きでそれもいいと思うんです。
だけど大抵の場合、やめた後の人生のほうが長いじゃないですか。後輩たちも腰や膝を悪くしてるようなコばかりです。その中で、体を使わないで生きていくってことを教えたいんですね。
だから私はお店に行くとマイクでいきなり無茶振りをして、うまい回答ができなかったら本気で怒るんですよ。うちのカウンターの中はリング内で、お客さんが笑わなかったらダメっていう真剣勝負。そういうことは毎回、ピリッピリしながらやっていかないと。全女ですからね(笑)!
―カウンターの中のガールズは“全女式”の叩き上げなんですね!
ブル だから私が行くと、もうみんな「うわ~来ちゃった」って感じですけどね(笑)。
―(笑)。では最後に、今後の夢を教えてください!
ブル まずは、プロレスをやめたセカンドキャリアのコたちにその場を与えるためにお店を続けていくこと。あとは今、TVで3つのレギュラーを持たせてもらっていて、『しくじり先生』に出てから地方での講演も増えていて、プロレスという職業はなかなか普通の方たちとジョイントする場がないので、そこを自分なりに考えていろいろ繋げていけたらいいなと。
プロレスを辞めたレスラーでこんなにお仕事をもらえることって本当にないし、すごくありがたいことだし! 講演もプロレスと同じで、聞いた方たちが払ったお金以上の価値があったと思ってくれなかったら、また呼んではくれないと思うので。
そんな風にプロレスに当てはめることしかできないんですけど(笑)。でもそうすれば、私が今何をすればいいかってことが全部わかるので、それはずっと胸に刻んでいますね。
―プロレスで学んだことは、セカンドキャリアでも活かせると! しかも、あれだけ辛いことを乗り越えたという自信もまた…?
ブル アッハッハッハ! そうですね、ホントに全女の時以上に辛いことなんて絶対にないので、なんでもできると思ってます(笑)。
―引退後は結婚もされ、美しいセカンドキャリアを送りつつあるブル中野さんは、現役選手の希望でもあると思いますので、そのまま突き進んでください!
ブル 頑張ります(笑)!
●「ツヨカワ女子プロレスラー最前線2018」は『週刊プレイボーイ』16号(4月2日発売)に掲載!
(取材・文/明知真理子 撮影/五十嵐和博)
■ブル中野(ぶる・なかの) 1968年1月8日生まれ。1983年に全日本女子プロレスに入門。先輩のダンプ松本に誘われて悪役に転身し伝説的な存在に。97年に引退してからは解説者、タレントとして活躍するほか、東京・中野で“ガールズ婆バー”「中野のぶるちゃん」を経営している。