宮澤ミシェルが思う、海外で日本人MFが活躍する方法とは?
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第84回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、海外クラブでプレーする日本人MFについて。今まで多くの日本人MFが海外に移籍し、今シーズンも多くの選手がプレーしている。しかし、海外のビッククラブではなかなか通用できていなかったのが現状。いったいどうすれば日本人MFが海外のビッククラブに通用するのか? 宮澤ミシェルが考える。

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前回は日本人のDFが海外クラブへの移籍が増えていることに触れたけど、中盤の選手はなかなか厳しい状況に置かれているね。

中田英寿が道を切り開いて、小野伸二や中村俊輔が日本人MFの価値を高め、本田圭佑と香川真司がビッグクラブへの先鞭をつけた。だけど、そこから先へは世界トップレベルの壁がやっぱり日本人選手を弾き返しているね。

その香川真司は今冬にトルコのベジクタシュへ移籍し、リーガ・エスパニョーラの強豪ベティスの乾貴士も、1月の移籍市場でアラベスに働き場所を変えることになった。現時点では海外でプレーする日本人選手で酒井宏樹に次いで高評価の中島翔哉は、カタールのアル・ドゥハイルに日本人としては歴代最高額となる移籍金約44億円、そして年俸は約4億4000万円で移籍した。

中島の移籍は裏でパリSGが動いているという噂もあるけれど、現状ではカタールリーグに過ぎないからね。なかなか日本人選手がトップリーグのトップレベルのクラブへ移籍するには至ってないよ。

堂安律にしろ、南野拓実にしろ、オランダリーグとオーストリアリーグでプレーしていて、格上のリーグへの移籍話が今季終了後に聞けることを期待しているけれど、そのためにはもっと現在のクラブで華々しい活躍をしないとね。

じゃあ、どうしたら日本人選手のレベルが世界基準になったと言えるのかというと、やっぱりプレミアリーグで通用するMFが登場して初めて言えると思うんだ。

これまで日本人でプレミアリーグに挑戦したのは、稲本潤一、中田英寿、戸田和幸、宮市亮、岡崎慎司、川口能活、西澤明訓、武藤嘉紀、李忠成、吉田麻也、香川真司の11人。だけど、レギュラーとして定着したのはFWの岡崎とDFの吉田だけで、あとはパッとしなかった。

特に宮市や井手口、伊藤翔もそうだけど、ほかの国を経験せずに直接プレミアリーグに行くのは、成功が難しいね。その点で板倉滉はマンチェスター・シティが獲得して、オランダリーグのフローニンゲンにレンタルで出されたけれど、彼にとっては経験を積めるしいいことだと思うよ。

FWの選手がプレミアリーグで成功するのは、リーグ自体がフィジカル勝負な部分が強いから日本人選手には難しいよね。それだけに岡崎の成功は際立つんだけど、ここから武藤がどのくらい勝負できるかは注目していきたい。

その点で言えばMFは可能性が高いよな。香川はマンチェスター・ユナイテッドですべてが失敗したわけじゃないからね。2年目にファーガソン監督が退任したことで出番に恵まれなくなったのが痛かった。

プレミアリーグでやっていくにはFWとDFはフィジカルは欠かせないものだけど、MFではそれほどフィジカルの強さは必要とされていないから、日本人の技術力を活かす道もあると思うんだ。マンチェスター・シティのダビド・シルバ(スペイン代表)だって......例に出すのが忍びないくらいスペシャルな選手だけど、身長は170cmほどで体格的には日本人と遜色ないけど、技術力で存在感を発揮している。

彼を目指してもらいたいよね。堂安律にしろ、南野拓実にしろ、決して大きくはないけれど、技術力と判断を高めていければ、道は切り開けるだけの才能は持っていると思うんだ。誰もが名前を知るクラブで日本人選手が活躍するようになれば、日本サッカー界はもっと活気づくだろうし、次の時代を担う子どもたちに大いに夢を与えるからね。

そのためには現時点で海外クラブいる日本人MFたちは、まずは所属クラブで圧倒的なレギュラーになる。そして、そこを踏み台にして、その国のトップ3のクラブへ移籍するか、格上のリーグの中堅クラブに移って、ヨーロッパリーグも戦える環境に身を置くことが大切。そこでゴールをガンガン稼いで、選手としての価値を高めながら、ビッグクラブへと登りつめてくれると信じているよ。

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