「暴れまっせぇ、ホンマに! 楽しみにしといてください! 新しい野球というものをつくっていきますので! 乞うご期待!」――。ド派手な就任会見をそう締めくくった北海道日本ハムファイターズの新監督、いや、"BIGBOSS"。日本中を再びとりこにした新庄剛志(しんじょう・つよし)が監督就任までの舞台裏、"新庄劇場 監督編"の構想を前編記事中編記事に続き独占告白!!(全3回/3回目)

また、北海道日本ハムファイターズ監督に電撃就任し、15年ぶりに野球界へ帰ってきた"BIGBOSS"新庄剛志が、50歳の誕生日を迎える来年1月28日に、自身初の日めくりカレンダー「まいにち、楽しんじょう! 新庄剛志の開運BIGBOSS語録」を発売する。

* * *

■2軍でダメでも1軍で花開く選手もいる

――新庄さんは2019年11月から現役復帰を目指し、2020年12月のプロ野球12球団合同トライアウトを受けましたが、その頃からSNSで積極的に野球のテクニック講座のような動画の投稿を増やしましたよね。

新庄 あれは監督や指導者になりたいというアピール。それから、本当にプロ野球選手になりたいと思って一生懸命野球をやっているコたちに、俺の技を教えたいというのが理由やね。俺のやることには必ず意味があるから。俺が発言したら、何か意味があるんだなと思ってほしいね。

この間も「僕と一緒に戦って行く選手全員を1回はあの大歓声の1軍のグラウンドに立たせることをここで約束します」とツイートしたの。プロ野球界って2軍だけの生活で終わっていく選手が何千人といるのよ。「1回は1軍のグラウンドに立たせます」って2軍の選手に約束したら、「俺、1回は立てるんだ!」と思ってどれだけ努力する? オフの段階から、今までとは違う練習をすると思うよ。俺は選手に気持ちのトレーニングをさせたいの。その一瞬のチャンスをものにした者がスターになれるから。

――「一度も1軍に上がることなく引退する選手が多い」と聞くと、一度はチャンスをあげてほしいなと思いますね。

新庄 俺も「なんでチャンスを与えないんですか?」ってずっと思ってた。2軍の試合で打てないけど、不思議と1軍の試合では打てる選手っていくらでもいるから。

ただ、俺は監督として勝たないといけないから、チャンスをどれだけ与えるかってところで悩むよね。1打席じゃかわいそうじゃん。2試合あげたとしても、花開く才能ある選手をそこで見極めるのって難しいかもしれない。かといって、チームのことも考えないといけないし......。

――難しい選択ですね。

新庄 難しいね。でも、俺がそういうチャンスを与える野球をして、ほかの球団が「なるほど、新庄の考えって当たってるな。2軍でダメでも1軍で花開く選手もいるんだな」って考えになってもらえたらいいし、まねしてほしい。そういうのが新しい野球につながっていくのよ。俺は時代を変えたいし、12球団を救いたいのよ。

――新庄さんには球界に新しい風を吹かせてほしいです。

新庄 だから、俺がツイッターに上げた「ファンが選ぶスタメン試合」もそう。あれにも理由があるのよ。ファンが選手を選ぶとなると、選手を分析するために試合を見ないといけない。それでファンを野球に集中させようって考え。

あともうひとつ理由があって。試合の前に「今日はファンが選んだラインナップで~す!」ってスタメンを発表したら、相手チームは「ふざけんな、バカ野郎! こんなチームに負けるか」ってなるから。相手をカッカさせる心理作戦でもある。

これは野村(克也)監督もやってた。例えば、1995年のヤクルト対オリックスの日本シリーズ。オリックスに勝つためにはイチロー君を抑えないといけない。そこで野村監督は「イチローはインハイを打てない。常にここを狙って投げる」とマスコミに言って、「この話は毎回出してくれ」と頼んでたのよ。

そうなると、イチロー君は野村さんの発言を聞きたくなくても聞いちゃうよね。そしたら、「インハイ来るんだ。インハイ来るんだ」って思っちゃう。結局、野村さんはインハイに投げさせない。イチロー君は「あれ? インハイに来ない?」って慌てて違うコースを打ちにいく。凡打になる。それで野村ヤクルトが優勝したから。

■"たられば"を言う前に、それを言わないような準備をするのが俺だから

阪神タイガース時代に知り合い、25年来の親友であるインタビューマン山下(右)。「つーやん」「しげちゃん」と呼び合う旧知の仲

――秋季キャンプにも合流して、いよいよ"ビッグボス"として始動しますが、いかがですか?

新庄 俺が監督になったら、公式戦143試合にずっと出続ける選手はたぶんいないと思う。さっきも話したけど、みんなにチャンスを与えるから。そっちのほうが選手はやる気出ない? 「1回はチャンスがあるんだ!」って思ったら。

――確かにガッチリとレギュラーメンバーを固定されたらほかの選手は心折れますよね。

新庄 そう。俺もメジャーのときにそう思ったもん。さすがにバリー・ボンズの固定はしょうがないと思うけど。だから、しょうがないと思える選手が欲しいのよ。「こいつの代わりは無理だな」というような選手をつくり上げられたらいいね。

――楽しみで仕方ないです!

新庄 今後どんな野球をやるかは俺もわからん。俺、2年前までバリ島でボーッとしてたんだから。今の野球のことはそもそもわかるわけがないやん(笑)。だから、俺は選手起用のスタートラインはフラットな状態で見られる。采配とか作戦とかもやりながらいろんなアイデアが出てくると思う。

そこで勇気を持って、トライして、成功するかどうか。もちろん成功する前提でやるよ。「あそこで打ってたらな」とか「あそこでこうやってたら勝てたのに」とか、"たられば"は好きじゃないから。たらればを言う前に、それを言わないような準備をするのが俺だから。楽しみにしててよ。暴れるからさ。

★『週刊プレイボーイ』本誌では「新庄剛志の開運ポジ語録」が連載中!

●新庄剛志(しんじょう・つよし) 
1972年1月28日生まれ、長崎県出身。1990年、西日本短期大学附属高校からドラフト5位で阪神タイガースに入団。2001年、日本人初の野手FA選手としてMLBに挑戦。2001年から2003年までの3シーズン、ニューヨーク・メッツ、サンフランシスコ・ジャイアンツで活躍。日本人初のメジャー4番、日本人初の満塁本塁打、日本人初のワールドシリーズ出場など、記憶に残るプレーでファンを沸かせる。2004年、北海道日本ハムファイターズに入団。今や伝説となった数々のパフォーマンス、コメント、プレーで常に話題を提供。かねての夢であった「札幌ドームを満員にする」という目標を達成し、日本ハムが44年ぶりの日本一に輝いた2006年に引退。その後、インドネシア・バリ島で暮らし、2020年に15年ぶりの現役復帰を目指してプロ野球12球団合同トライアウトに参加。2021年10月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任