みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。
近年ではプロ野球はもちろん、音楽ライブや劇場など、さまざまなシーンで電子チケットなるものが主流になってきました。ネットで購入したあとは発券の必要もなく、球場に到着したらスマホに表示されたバーコードなどをピッとするだけで入場できる場合も。資源削減。今時ですね。SDGsです。
プロ野球ファンになって25年。自分でチケットを購入するようになった頃は、もちろん電子チケットなど存在せず、紙のチケットが基本でした。球場に足を運びその場で買うこともあれば、事前に買ってコンビニなどで発券してから行くことも。今日はそんな、いにしえの「紙チケット」にまつわるお話です。
例えばある日球場で観戦していて、応援するチームが試合に負けたとします。私にとってその日のチケットはただの紙切れとなり、ゴミ箱行きが確定します。
また別の日、今度は勝ったとします。
そんな日のチケットは、あら不思議。あっという間に宝物と化します。この日この場所で、この勝利に立ち会ったんだと、それを示す勲章となるのです。その勲章をどうするかというと、実家の引き出しに、大切に大切にしまいます。
野球ファン歴25年、球場に足を運んだ回数などゆうに3桁を上回る私。
この習慣で何が起きたかというと、収納スペースは瞬く間にキャパオーバーを迎えます。気づけば引っ越しなんかで使う大きめの段ボールが、いっぱいになるほどの量......。
全ての勝利を手元に残しておこうなんて、無謀だったのです。いたしかたない、心に留めておけばそれでいいと自分に言い聞かせ、数年前に泣く泣く処分しました。
けれどその中で、どうしても捨てることが出来ずに、今でも大切にしまっている1枚があります。
それは2015年10月2日。神宮球場で行われたヤクルト対阪神の一戦。
ヤクルトがリーグ優勝へのマジックを「1」として迎える、本拠地でのシーズン最終戦でした。本来は前日の10月1日に行われるはずだった試合が雨天中止、この日のチケットはとっくに完売していたのですが、翌日に試合が流れたことで、チケットを購入するチャンスが巡ってきた。発売となったのが、確か当日の午前11時。なんとかチケット争奪戦に勝利した私は、その紙チケットを握りしめ、ライトスタンドへ向かいました。
延長11回、ヤクルトの攻撃。ツーアウト、ランナー1、3塁。球場に響く「夏祭り」の応援歌。雄平選手(現・楽天打撃コーチ)の打球は一塁線を破り、そして歓喜の瞬間が訪れました。
2015年はいいシーズンでしたよね。川端・山田・畠山の「三冠トリオ」に、ロマン・オンドルセク・バーネットの「勝利の方程式」......。この年のお話は、また今度どこかで。
試合が翌日に流れたことで、球場に足を運ぶことができなくなった皆さんには心から申し訳ないのですが、あの瞬間に立ち会えたことは一生の誇りです。まさにこの日、19歳になったばかりの私は、野球の神様から最高の誕生日プレゼントをもらってしまいました。
こんな特別なチケット、捨てられるわけがありません。これを読んだ未来の近親者の方。是非このチケットを、ゴミ箱ではなく私の棺桶に入れてください。よろしくお願いします。
紙チケットの文化はこの先、時代の移ろいとともに更に衰退していくでしょう。これは素晴らしいことでもあります。それにどの一勝もかけがえのない一勝だし、必ず思い出として心に残るもの。
でも手元にあるその1枚を見返すだけで、その時の雰囲気や歓声、球場の匂いまで鮮明に思い出したりする。そんな思い出の残し方も、これはこれで素敵だったり。
さて、本日このあと球場に足を運ばれる皆さん、準備はできましたか? 紙チケットの皆さん、きちんとカバンに入れましたか? 電子チケットの皆さん、スマホの充電は大丈夫ですか?
それと、近頃は季節の変わり目で急な雨が増えていますから、山本袋(わからない方は連載の3回目を読んでください)も忘れずに。
それでは今日もよい野球デーを。また来週!
★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン