環境に優しいエコカーとして、世界各国で徐々に普及しているEV(電気自動車)。都市部での近距離移動手段としては、すでに市民権を得たといっていい。しかし、多くのクルマ好きが人生の楽しみのひとつにしている遠距離ドライブはどうか?
実は今、そのロングドライブに最適なキャンペーンを日産が行なっている。「リーフ」を新車で買うと、日本全国の充電器を月額2000円(税別)でいつでも使える「使いホーダイプラン」が2年間無料になるのだ。つまり、今新車を買えば、制度上は燃料代タダで日本一周ドライブだってできることになる!
しかし、本当にそれが可能かどうか、ガチで検証した人は誰もいない(たぶん)。というわけで、週プレは4月上旬の某日、神奈川県横浜市の日産本社でリーフの広報車を借りた(この記事はタイアップではなく、キャンペーンに乗っかった独自企画です)。
スタート前に、基礎知識を確認しておこう。まず、リーフの充電には「急速充電」と「普通充電」がある。急速充電は約30分間で80%程度まで充電でき、普通充電はもちろん100%充電できるが、なんと約11時間かかる(30kWhモデルの場合)。今回の企画は基本的に急速充電で行くしかない。
気になる航続距離は、カタログ上はフル充電で280km(30kWhモデルの場合)。だが、実際には上り下りが多かったり、高速走行ならその8割ほど。また、急速充電だと80%程度が限度なので、さらにその8割。つまり、一回の充電で走れる距離は180km前後が限度ってことだ。
充電スポットは、都市部ならあちこちにあるが、地方では「点在」という感じ。ちと心細いが、とにかくやってみよう。目標は沖縄以外の46都道府県の制覇(有料道路の通行は可)。では、出発!
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■高速は飛ばしても飛ばさなくても同じ
まずは神奈川県からひたすら北上する予定だが、その前に千葉県をクリアしておく必要がある。最初の行き先に選んだのは、舛添要一(ますぞえ・よういち)前都知事が公費で家族旅行に行ったとされる木更津市の「龍宮城スパ・ホテル三日月」。東京湾アクアラインなら数十分の距離だ。
名物ウルトラマンティガの自販機で缶コーヒーを買う!
スパやプールには浦島太郎も乙姫様もいなかったが、時価1億円以上という「黄金の湯船」、7人の小人や小便小僧、西洋の騎士にアライグマ…など、不思議なオブジェ軍団の大歓迎を受ける。
帰路、バッテリー残量46%という表示にビビり、海ほたるPA(パーキングエリア)で最初のチャージ。30分足らずで急速充電が終了し、87%まで回復した。
次の目的地は、首都高で東京都と埼玉県を通過し、さらに常磐道を少し走った先の茨城県・筑波宇宙センター。入り口の前には全長50mのホンモノのH-Ⅱロケット! 閉館ギリギリに間に合い、宇宙服姿のリラックマを買った。
薄暗くなってきたが、ここからロケットパワーで爆走。常磐道の千代田PAでチャージし、北関東道、東北道と乗り継ぎ、栃木県の上河内SA(かみかわちサービスエリア)でチャージ、那須高原SAでまたチャージ。宇都宮名物のギョーザとラーメンをかき込み、再び走りだして福島県・安達太良(あだたら)SAを目指す。
このあたりで、記者は早くもEVの真実に気づいた。
「高速道路では、どんなに飛ばしても結局同じ」
説明しよう。スピードを上げると、走行中は速いが電池の減りが激しく、しょっちゅう充電しないといけない。一方、のんびり走行なら充電ごとの走行距離は長くなる。つまり結局、飛ばそうが飛ばすまいが、充電時間を含めた平均移動速度は1時間当たり70km程度にしかならないのだ。
夜遅くになってたどり着いた安達太良SA(下り)の名物は、ウルトラマンティガの自販機。缶コーヒーを買うと、「ジュワ!」という声が鳴り響き、カラータイマーが光る。
「おやすみ、ティガ」
ちなみに、EVはエンジンをアイドリングしなくてもヒーターを使える(当然、電池は消耗するが)。自販機の前に止めたクルマに戻り、シートを倒して仮眠を取った。
◆ガチで検証――電気自動車、無料充電しながら日本一周やれんのか!【福島~青森編】
(取材・文・撮影/近兼拓史)