
坂本慎太郎
さかもと・しんたろう
坂本慎太郎の記事一覧
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
公式X【@bucomi】
1918年にゼラチン・にかわ製造で創業。1945年に会社を設立。ゼラチンは国内で圧倒的首位で、 世界でも欧州勢に次ぐ4位を誇る
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
2021年にグミがガムの市場を追い越して以来、グミ市場の成長が止まらない。グミが売れれば売れるほど儲かる、"素材"メーカーの新田ゼラチンに注目だ!
助手 街歩き投資の定点観測をしようとコンビニに来ました。所長は「レジ近くの棚に注目」って言ってましたけど、変化があるようには見えないんですが......。
坂本 レジ前は"ついで買い"が期待でき、売れ筋商品が並ぶ棚です。以前はガムが主役でした。でも、今はグミがずらっと並んでますよね。
助手 確かに!
坂本 実は2021年にグミがガムの市場規模を追い越したんです。その後も成長は続き、24年には前年比17%増の1137億円の市場規模に到達しています。
助手 いったいグミに何が?
坂本 コロナ禍で、口から吐き出さなくて済むグミが再評価されたという流れがひとつ。さらに、その数年前からグミの見た目や味の多様化が進んでいたから、幅広い年代に支持を広げる土壌は整っていました。
助手 なるほど。グミに強い製菓会社に投資するならチャンスですね。
坂本 悪くないけど、カンロなど一部メーカーは、すでにけっこう値上がりしたからね。今からなら、グミの材料・ゼラチンを供給する新田ゼラチンが面白いよ。グミの恩恵を受けつつ、多分野で成長の余地がある。
助手 ゼラチンってお菓子の原料以外の用途がなさそう。大幅に成長する未来を想像できないんですが。
坂本 いやいや。同社の強みはコラーゲンから高付加価値の製品を生み出す点にあるからね。ゼラチンだけの会社じゃない。
助手 いきなりコラーゲンの話が出てきましたけど、なんの関係が?
坂本 ゼラチンは動物から抽出したコラーゲンを原料に作られるんです。そして、コラーゲンも設計や製造の仕方で、いろんな商品になり価値が変わるわけ。例えば口に入れるゼラチン。これにもグミやゼリーなどの菓子用から、高品質が要求される医薬カプセル用まである。さらに、機能性を持たせたコラーゲンペプチドは化粧品やサプリなんかに利用されるし、人工骨や人工皮膚に使う医療用コラーゲンは厳格な規格を満たす必要がある。機能性や高品質・高規格を求められる製品ほど、当然、高単価・高利益率です。
助手 新田ゼラチンはそういう儲かる製品を作れると。
坂本 そのとおり。同社は原料調達から製品設計・製造まで一気通貫で対応できる上、高付加価値な製品では顧客との共同開発にも取り組んでいます。だから信頼が厚く取引も長く続きやすいんです。ゼラチンで国内圧倒的首位、世界でも4位の実績はだてじゃないよ。
助手 世界進出もしてるんですか!
坂本 グローバルな供給販売網があるのも同社の強みなんです。日本を含めた世界6ヵ国に製造・販売拠点を展開し、海外売上高比率は約5割に上ります。中でも、強化中のインド拠点は牛の骨資源が豊富で医薬カプセルに向いたゼラチンを作れる。さらにハラール対応も可能だからイスラム圏向け供給も視野に入ります。2027年には生産能力を6000t規模に拡大する計画です。
助手 原料が動物だから文化的な配慮も必要なんですね。
坂本 そう。ちなみに中国の工場では魚が原料。牛・豚・魚を地域性や製品用途に合わせて使い分ける。地域ごとの最適化でリスクを減らして安定供給ができるんです。
助手 高付加価値化で収益性を高めながら安定供給も実現していると。
坂本 そのとおり。長期で成長が期待できると思うよ。
今週の実験結果
コラーゲンの加工技術は国内では他の追随を許さない。将来性に期待できる会社です