あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、元プロレスラーの小橋建太さんからご紹介いただいた第33回のゲストは女優・タレントの倉持明日香さん。
AKB48のチームBでキャプテンを務め、卒業後はバラエティーからドラマまで幅広く活躍。元プロ野球選手の父親を持ち、スポーツ番組にも数多く出演。
前回、前々回は自身のベースを形成した“家族エピソード”から、自らのキャリアに大きな影響を与えた激アツなプロレス“小橋愛”までを伺ったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―ちなみに、AKBのコンサートとかライブでいろんな大舞台や大観衆に囲まれてのステージは経験してるわけですが。球場のマウンドに立つって感覚はまた違うもの?
倉持 全く違いますね。私は無理だと思いました。卒業の時とか、さいたまスーパーアリーナのお客様の中、ひとりで歌わせていただいたりもしたんですけど。その緊張を遥かに上回る緊張なんですよね。孤独感がスゴいんですよ、真ん中にポツンっていう。
周りはチームの仲間達かもしれないけど、本当に孤独感がすごくて。だから、始球式でこんなこと言うのは失礼かもしれないんですけど、あそこで一球一球、360度見られながら投げるって無理だなと…。初めてやらせていただいた時に「お父さんはここで仕事してたんだ」って初めて思ったんですよね。
―まぁお父さんの頃のロッテは川崎球場とかでめっちゃ閑古鳥鳴いてましたけど(笑)。
倉持 そう、ガラガラで有名だったんですよね。父も「カップルがイチャイチャしてるのがずっと聞こえんだよ」って言ってましたけど(笑)。
―あるいは、西武がクラウンライター・ライオンズだった時なんかは、福岡なんでめっちゃ汚い野次が飛んでくるとか。
倉持 「今の選手は幸せだよ、あんなに素晴らしい応援歌歌ってもらって、雨でも風でもどんなに天気悪くてもファンの人が来てくれて、負けてるのに最後まで応援してくれて。あんな幸せなことないよ」って、いっつも言ってますね。
―ほんと昔も熱いファンは熱かったわけですが、今は温かさが違うというか。選手として同じくマウンドで視線に晒(さら)されているのは変わらないでしょうが。
倉持 本当にそれが始球式やるまで正直あんまりピンとこなくて。好きな野球でプロまで極めてやってたってぐらいしかわかんなかったですけど。ここでずっとやってた父って、やっぱすごいなって。同じ場所に立ってみて、初めてカッコいいなって思いましたね。
―自分もコンサートではファンに視線を注がれて。経験値として共有できるものがあるだろうけど。
倉持 でも、この間も横浜DeNAのイベントで往年のピッチャーとして出るっていって。乱闘騒ぎで有名だった横浜のブラッグス選手と父が一打席対決をするので、母と一緒に観に行ったんですね。で、ずっと父の動画を練習してるところから撮ってたんですけど、やっぱカッコよくて。
もちろんマウンドに立ってるのがすごい楽しそうなんですけど、たぶん昔のことを思い出しながら投げてるので、そこは勝負というか。60歳超えて、この球投げられるのカッコいいなって、素直に思って。ファンみたいになってましたね(笑)。
急に「あ、ひとりなんだ、私…」って
―(笑)。小橋さんもそうだけど、そういうカッコいい年上の男しか惚れられなくなったら厄介だね~(苦笑)。
倉持 それ、一番こじらせてますよね(笑)。小橋さんの結婚の時にも、頼まれてビデオメッセージ送ってるんですけど、本当にいまだに申し訳ないのが、結婚式で流すコメントなのに「ご結婚おめでとうございます。本当にショックです。小橋さんが結婚するのは本当に悲しいです」って(笑)。
まだ10代だったので、若かったなと…。申し訳なかったですっていうのは後で小橋さんに謝りましたけど。本当に悲しかったんですよね。小橋さんって、誰かの小橋さんじゃなく、みんなの小橋さんだったので。誰かのものになるなんて1ミリも考えたことがなかったから。
―“小橋愛”が神格化されすぎてましたね(笑)。まぁアイドルでもそういう思いをファンにさせているわけですけど。
倉持 そうなんですよね。でも、そのビデオメッセージで「小橋さんより私はいい人を見つけて結婚します」って宣言したんで。もし30過ぎて40まで結婚できなかったら小橋さんに1回相談します。「ちょっとどうしてくれるんですか~」って(笑)。
―お父さんじゃなく、小橋さんなんだ(笑)。
倉持 そう、それは父ではなく(笑)。
―まぁいろんな経験も積み重ねて、AKBを離れてから1年ちょい経ちますが。卒業する時もそうだろうけど、怖さというか、これからに対する不安は当然ありますよね。
倉持 ありますね。不安のない人はいないんじゃないかなっていう。どんなに有名だったメンバーでも絶対あるんだろうなって。楽しみももちろんあるんですけど、やっぱりひとつひとつが不安になるんですよ。
例えば、集合場所に行っても自分しかいない、楽屋行っても私の名前しか外に張り出されていない。常に誰かいてワーワーワーワー喋ってるとかだったので、そういうのに慣れないっていうのが最初あって。急に「あ、ひとりなんだ、私…」ってことがたくさん。
もっとひとりでやらなきゃいけなかった時に、もうちょっとやっとけばよかったなっていう後悔もあって、考え出したらキリがないんですけど。「もっとMCやりたいって言っとけばよかったな」とか。自ら進んでこれやりたいって言ってたら、なんか今変わったのかなとか。改めて自分に足りないものがわかる。なるほど、今やっとスタートラインだって。
「なんだ、全然甘えていいじゃん」
―AKBという肩書きがなくなった時に何が残っていて、何ができるんだっていう。
倉持 もちろんできないことも多いんで「じゃあ、やればいいや」って思ったんです。若いうちに卒業したわけではないけど、まだまだじゃんって切り替えて。AKBの中では、上から2番目の年齢だったかもしれないけど、外に出たらまだまだ私、できないことたくさんあるんだから。30近いんでって言ってる場合じゃないやと思って。
―AKBにいると自分がお姉さんでね、周りも若いからしっかりしちゃうけど。本当はまだ世間的には全然ぺーぺーでも不思議はないんだけどって。
倉持 そう思うのも卒業してからじゃないと思えないんですよね。妙にしっかりしちゃうんですよ。しっかりしなきゃいけないっていうのがあって…。誰かに頼るとかもわからなかったし、「わからないんですけど」って言えなかった。言える人がいないというか。
自分がキャプテンやってたから、わからないことを下に聞いちゃいけないんじゃないかというのもあって、自己解決を結構してたり。悩み相談は卒業生の先輩に聞くっていうのはあったんですけど、誰かに言われてるわけじゃなく、なんか自分で「しっかりしなきゃ」「私がまとめなきゃ、私が全部理解してなきゃ」って。
―代々しっかりした人がいっぱいいたから。弱さを見せられないというプレッシャーも?
倉持 いっぱいいたし。引っ張らなきゃっていうのを強く思い過ぎてたのもあったかも。だから今「なんだ、全然甘えていいじゃん」って思って。いろんな人に現場でわからないことがあったら。スタッフさんで年下の人もたくさんいらっしゃるんですけど、出演者の方でも私より全然年上だなと思って。
―そうですよ。この『語っていいとも!』もゲスト初の20代ですから。まだまだ若輩ということで(笑)。
倉持 そうですよね、まだまだですね! 最年少嬉しいです(笑)。
―しかも、まだ27歳なのにマウンドの孤独を知ってるわけですよ。楽屋でひとり孤独を感じてる時も、ピッチャーの境地に比べたら(笑)。
倉持 比べればですよね。まだ全然大丈夫だなと思います。マウンドの孤独を知る機会があってありがたいです(笑)。
―自分が見えないところで、周りにナインもファンもいるんだよって。…あ、ちょっとイイ感じのこと言っちゃいました(照)。
倉持 それ、私の言葉にしといてください! うま~く書いておいてくださいね、私の言葉で(笑)。
AKB48って看板もなくなってるけど…
―でもほんと応援して支えてくれる人達もいっぱいいるわけですからね。
倉持 だから一番ありがたみを感じますよね。プレッシャーも感じますけど、卒業してひとりになったからこそ、自分が頑張んないとずっと応援してきてくださった方にも失礼というか。もっとずっと応援してほしいし、今までもひとりひとりの方と向き合ってきてたつもりだけど、より向き合っていきたいなと。
―それで未知の可能性も含めて、楽しみにしないとね。女優としてやっていくのでも、自分の中でどんどん切り拓いて。
倉持 そうですね。スポーツは父がいてこそお仕事をいただいている身だと思うんで。それはもちろん、もっと勉強しながら。全く関係なく、自分から始めたものに関してはもっともっと極めて、さらに頑張らないと。
AKB48って看板も自分にはなくなってるけど、やっぱり大きいものだと思ってますし。卒業生っていうのは絶対一生なくならないものなので、その名前に恥じないようにというか。今いるメンバーたちに「あの先輩、カッコいいな」って思ってもらえたら。
―ずっとOGになって何年経とうが…もはや宝塚みたいな感じかも?
倉持 そうですね。本当にOGっていうのは、一生なくならないものなので。もし、私のことを知って「AKB48なんだって」「そうなんだ、この人がいたならAKB48見てみよう」とか。なんか、それでまた少しでも盛り上がってもらえるようになるのも卒業生の仕事かなって。
―その気持ちはずっと持ち続けて、今後も引っ張ってもらえれば!
倉持 はい、引っ張っていく力をつけたいと思います!
―というわけで、長々とお父さんのお話までさせてもらい(笑)、そろそろ次のお友達を紹介していただければと。スポーツ関係も人脈がだいぶ幅広いですよね。
倉持 はい。古田(敦也)さんとずっと番組(『SPORTS X』)をやらせていただいてたのもあって。澤(穂希)さんとか。
―おおっ! 今、妊娠中ということで。ちょっと厳しいかもしれないですが…。
倉持 ラグビーの畠山(健介)さんもお食事したり仲良くさせてもらってます。スポーツ番組にゲストで来ていただいたのがきっかけで。筋肉好きとして我慢できず、収録後に「筋肉触らせてください!」って頼んだんですよ(笑)。
―やっぱりそこなんですね(笑)。
倉持 はい(笑)。2019年(W杯東京大会)に向けて、さらにラグビーを盛り上げていかなきゃいけないですし。私も少しずつ勉強して、立派な“ラグ女”目指します! ハタケさんにも、またラグビーあるあるを教えてください!って。
AKB辞めて、ただひとつ心残りが…
―了解しました。では、畠山さんにオファーさせていただきますね。…で、最後にお土産ということで、実はこれを…。僕が以前やっていた『燃えろ!新日本プロレス』というDVDマガジンなんですが。
倉持 うわ~! ヤバ~い! これ買ってないです…。ヤバ~い!
―ははは、「新日本VS全日本・ノア、面子勝負!!」という小橋×蝶野(正洋)の名勝負(2003年5月2日、東京ドーム)も収録されている号で、ほぼ完売のレアものです。
倉持 いや、みんな若~い! あ、これ私が父とアーカイブ観て「う…(泣)」ってなってたやつ。めっちゃカッコいいですよね。蝶野さんもカッコよくて、映像観て震えたんですよ。当時、この試合を観てる人達が羨ましくて仕方なくて。
もうこれ手に入らないんですもんね。ありがとうございます! めっちゃ嬉しいっす!
―プロレスもまた盛り上がってるし、いろいろ何かやれるといいですね。
倉持 私、AKB辞めて、ただひとつ心残りが…じゃんけん大会する前に辞めたんですけど、卒業する前の年に「来年のじゃんけん大会はライガー(獣神サンダー・ライガー)さんの格好したい」って言ってたんですよ。それができなくて、いつかハロウィンでやろうかなってくらい…。
―それは、新日に売り込まないと(笑)。興行でその格好して、謎のキャラクターとかディーヴァみたいな感じで…。
倉持 いいですかね。全然、倉持って明かさなくていいです。顔は一切出さなくていいですもん。会場にライガーさんの偽物いっぱいいるじゃないですか、ファンが客席に。あんな感じでいいんですけどね~。
―そこでいきなり客席から出てきたりして? 是非、企画として提案したいですね(笑)。
倉持 よろしくお願いします! ライガーさんの格好したいって言っといてください(笑)。
―関係者にアピールしてみます(笑)。今日は本当にありがとうございました。
★語っていいとも! 第34回ゲスト・畠山健介「ラグビーでも永遠の3番手くらいが僕はすごい性に合ってる」
●倉持明日香 1989年9月11日生まれ、神奈川県出身。AKB48の元メンバー。父親は、元プロ野球選手の倉持明。2007年にAKB48の研究生として合格。翌年、研究生からチームメンバーへと昇格する。在籍時は、キャプテンを務めるなど、後輩からの信頼も厚かった。中学生の頃、たまたま見たプロレスの試合がきっかけでプロレス好きに。そのことを公言するようになると、プロレスファンからも厚い支持を受けるようになる。特に、小橋建太の大ファンで、2013年の小橋の引退試合では、花束贈呈を務めるなど、交流が生まれた。2015年8月、AKB48を卒業。以降、女優、タレントとして幅広く活躍。
(撮影/塔下智士)