あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、芸人・タレントの渡辺直美さんからご紹介いただいた第50回のゲストは女優の二階堂ふみさん。
2007年にデビュー、17歳で日本人初となるヴェネツィア国際映画祭・最優秀新人賞を『ヒミズ』で獲得するなど、キャリア10年にして代表作多数。今、最も引っ張りだこな女優のひとりといえる。
来年2月16日公開の主演映画『リバーズ・エッジ』も話題となること必至で、来年には24歳を迎える彼女の新たな挑戦とはーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―24歳という、また心機一転なタイミングを前に新作『リバーズ・エッジ』も公開ですね。観させていただいて、心から素晴らしいなと。すぐに岡崎京子さんの原作漫画も読み直して。すごく元の作品を大事にしてリスペクトされてるなと。
二階堂 そうですね。私も大好きで。『リバーズ・エッジ』を16歳の時に読んで、実はその半年後の17になる手前くらいにはこの企画のお話がきて。
―そんな長いスパンで実現した作品なんですね!
二階堂 公開までに6年あって。私としては17の頃からずっとこの作品を意識しながらお仕事をしていたところもあって。もちろん他のお仕事も大事でしたし、そこから形成されていった部分もたくさんありましたし。でも自分が『リバーズ・エッジ』のためにどういう風にならなきゃいけないかっていうのはずっと意識していたので、特別な作品ですね。
―まさに16、17歳という主人公たちと同世代で作品に出会った巡り合わせというか、自分とシンクロして共感するものも?
二階堂 そうですね。大人になってみれば「青春だったな」とか悩んでたことがすごく輝かしく思えたり、美しかったなって思えることも、その時はそんなことも考えられないくらい、傷ついたりとかしんどいなあってこともあって。
10代特有の一過性のものかもしれないけど、でもそういう自分の中で作られてたものがどんどんなくなっていって、果たして私は大人になって、22歳で同じようにできるのかっていう不安もありました。でも、今思うと、22歳でできてよかったと思っています。
―同一感、シンクロするような?
二階堂 22歳の私も考えながら、感じながら…少し過ぎ去ったあの時期を理解しながらやっていたのかなって。全身で共感してるというより、どこか引いてやったからよかったのかなっていう思いもありますね。
―同じ年頃で真っ只中にいると客観的に冷静でいられないものもあるでしょうしね。しかも、この作品が書かれたのは二階堂さんが生まれたくらいの年ですし。それを空気感とかファッションとか含めて、そのまま切り取って描かれてるのも作品への愛というかリスペクトされてるなと。
二階堂 そうですね。それは行定(勲)監督も岡崎さんのこの『リバーズ・エッジ』という作品に対する絶対的なリスペクトが強くあって、それを現場でまとめられてた部分もあると思います。
―ただ、今までの行定監督作品と比べても、行定さんが撮ってるカラーを感じさせないというか。そこを押し出さずにすごく登場人物の自然なままに委ねてるような気がしましたけど。
二階堂 自分の若い時はとうに前だから、逆にキミたちに聞きたいんだよと仰っていて、聞き手として私たちをそのまま撮ってくださったので。
「衝撃を与えられる作品かなって…」
―本当に漫画の中の彼、彼女がひとりひとりそこにいるという感じがして。モノローグのインタビューのシーンが一番象徴的だと思いますが。漫画にないオリジナルな部分で、それがドキュメンタリーみたいにとても自然で。
二階堂 インタビューをやるってことはみんな聞いてたんですけど、でもいつやるかは知らされなかったんです。でも自分と役を同居させるっていうことにおいて、大事なシーンだったなって思います。自分が話しているのか、その役として出てくる言葉なのか、それがわからなくなるような感覚はあって。ドキュメンタリーに近いものはあるかもしれないです。
―そういう思い入れも含めて、6年くらいの積み重ねが集約してでき上がっただけに、他の作品ともまた違う大事な作品になりましたね。
二階堂 本当に大事な作品です。できてよかったなと思います。
―実際に初めて完成作品を観て、どういう気持ちになりました?
二階堂 なかなか客観視できないところもあったんですけど…。私、行定監督の『GO』がすごく好きで、おそらく映画に関わっている同世代の人たちは、そういう日本の青春映画って言われているものにすごく影響や衝撃を受けていて。そこから自分たちでも何か作りたいとかいう気持ちがすごくあったり。
監督ともこれがそういう映画になるといいねって話をしていて。岡崎さんの原作をリアルタイムで読んでいた方々にももちろんですけど、今の10代、20代の人にこれを観て衝撃を与えられるような作品じゃないかなって。
―実際、原作も今読んで古びてないですし。この時代の若いコにとっても同じセンシティブな物語であり、変わらずズキズキくる痛みがあるのではと。
二階堂 たぶん、いつの時代も若い人はそういう風に思うし、思われると思うんです。70年代、80年代、90年代、2000年代…若者と呼ばれる年齢の時はみんな感じていたんじゃないかなと思います。
もちろん時代性だったり、悩む問題の種は違っても、すごくセンシティブというかデリケートな時期っていうのは絶対あって。それは大人から見ると本当に美しい、儚(はかな)いものだなって。
まだ自分も若いんですけど(笑)。10代のそういうのって、本当にその時はつらいけど、大人になるとよかったなって得られるものもたくさんあるし。逆に、どんどん失われて鈍感になってしまうところも多くあると思うし。
―あんなことで傷ついてたんだとか、そこから深刻に自分が汚いようなものになった気持ちとか…。
二階堂 傷つくことすらも忘れる瞬間が出てきたり、無視できるようになったり。もちろんそれも生きていく上ですごく必要なものだけど、若い時って無理矢理そうなる必要はなくて、逆に人のことを傷つけちゃう時もあるし。そういうことをしながら成長していくものなんだろうなって、今は思います。
「イメージがひとり歩きしてる時があって…」
―特に10代の頃って、つっぱってなきゃ自分が周りの大人の世界に飲み込まれてしまうとか…自分を変えられたくないために自己主張して、傷ついたり傷つけたりね。
二階堂 そうですね。変わらないところは変わらないんですけど、やっぱりすごい尖(とが)ってたねって言われることも多くて(笑)。どこかで自分を保つために踏ん張らなきゃいけない時期もあって。今はもうあまりないんですけどね。
―そういう時期を経て、実績を積み上げてね。以前のインタビューでは「好きなものがあふれているこの世界が大好きで、それを自由に感じて表現することが一番自然なこと」と語っていましたが。本当にそれは素敵なことだなと。
二階堂 それがいいですね。最終地点が自分じゃなくてもよくて、自分という人間をきっかけでこういうものが好きになりましたとかっていう風にお手紙を書いてくださる方とかもいて、それが嬉しくて。中間地点にいる人になれたらって思いますね。
―発信して、自分もさらに若い人に伝えたり受け継いでいく感覚?
二階堂 でも逆にもらうものもたくさんあるんですよね。自分のためでもあると思います。全部、自分に返ってくるものですし、そうやって人と関わることによって、大きいものをいただくってこともたくさんあります。むしろそっちのほうが多いですね。だから、この作品も公開されて、自分もまた何か返して、世界を広げていけたらなって思います。
―可能性を広げて楽になっている部分もありつつ、歳とともに背負うものもまた別に増していくのではと思いますが。自分を晒(さら)すことでのパブリックイメージとか、常に怖さもありません?
二階堂 そういうのをすごく気にしてた時期があったんですよね。本当は全然こんなんじゃないのに、イメージがひとり歩きしてる時があって。でもバニーのグラビアもそうだし、逆にそれで裏切れることもあって、一概にイヤだっていうことでもなく。あまり気にしなくなりました。
―それもやっぱり培ってきたものに対する自信なんですかね。ちなみに、旅がお好きなのは、リセットして素の自分を取り戻すみたいな?
二階堂 旅行はそうですね。特に行き慣れていない場所だと、怖い気持ちとかが初心だったり、自分を取り戻すものになったりもしますし。
―何者でもない自分を再認識するとかね。…と、ここでそろそろお時間ということで。もっとお話ししたいところではありますが、では次のお友達を。若手俳優として最近活躍されている太賀さんを挙げていただいてて。
二階堂 はい。人間的にも俳優としても信頼できる懐(ふところ)の大きい方です!
―了解です。では繋がせていただきます。本日はありがとうございました。
●語っていいとも! 第51回ゲスト・太賀「『この仕事、最高だな』とか、簡単に一生続けるって言えないですよ(笑)」
(撮影/塔下智士)
●二階堂ふみ(にかいどう・ふみ) 1994年9月21日、沖縄県生まれ。07年に女優デビュー。17歳にして日本人初となるヴェネツィア国際映画祭・最優秀新人賞を『ヒミズ』で獲得。主な出演作に『私の男』 『蜜のあわれ』 『何者』など。16年1月には「ぐるぐるナインティナイン」の最年少ゴチメンバーとなりレギュラー出演。今年11月には女優業に専念するため卒業を発表。来年2月16日公開の主演映画『リバーズ・エッジ』も控える。