あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、女優の二階堂ふみさんからご紹介いただいた第51回のゲストは俳優の太賀さん。
06年にデビューし、現在24歳ながら映画にドラマと出演作多数。16年に宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』に出演し注目を浴びると、最近では『淵に立つ』『アズミ・ハルコは行方不明』など話題作での重要な役どころも目立つ、期待の若手俳優だ。
昨年末は舞台『流山ブルーバード』に出演する中、その本番直前にお話を伺い、前回は「簡単に一生続けるとは言えない」という仕事への覚悟などを吐露してもらったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―その二階堂さんからは「人間的にも俳優としても信頼できる、懐の深い方です」とご紹介されたんですが。キャリアも含めて、今どきの24歳としては落ち着いてて、すごくどっしりしてますよね。
太賀 どうですかね? どっしりはしてないですけどね(笑)。全然ガキんちょ扱いされることもまだまだありますし、実際そうですし。
―でも二階堂さんに「懐の深い、信頼のできる方」って評される同世代って、かなり強者(つわもの)じゃないですか?
太賀 (笑)まぁ、割とふみちゃんとは長いんで…何年前くらいから知ってるんだろう? 最初は『ほとりの朔子』」ですかね。で、舞台の『八犬伝』も一緒にやって。
―普段はどうなんでしょう。兄貴肌なのか、年下っぽくカワイがられるほうなのか…相手によって全然違います?
太賀 自分ではわからないですけど、違う気がしますね。やっぱ先輩がいると「へいへい」って(笑)…「お酒作りますか?」みたいな感じで。
―カワイい後輩もこなしつつ(笑)。同世代の役者仲間も仲がいい人は多そうですけど。
太賀 学園モノとかよくやってたから、そういう意味じゃ知り合いはたくさん増えましたね。まぁ同世代の中でも、波風立たないように調和を保ってるつもりではいますけど(笑)。
―(笑)お酒は普通に? 飲んで知らない自分の本性が出たりは…。
太賀 それはあるんじゃないですか? 失敗はたくさん…「あぁ、なんであんなこと言っちゃったんだろう…」とか全然あります。
―ははは、それも人間らしくて。僕もそういうのはしょっちゅうなんで(笑)。若い時だけじゃなく、いい大人になってもね。
太賀 あはは。単純に失礼なこと言ったなとか、失敗は全然ありますね。暴力とかはないし酒乱ではないですけど(笑)。
毎回怖いです…「大丈夫かな」って
―それも演技の引き出しにね(笑)。でもほんと子役時代から多数出演されて。ここ最近でも「あっ、これも観てる」「ここにも出てたんだ」っていうのが次々あって。
太賀 気づかれないんですよ(笑)。
―いやいや、ちょうど先週もBSで再放送されてる大河ドラマの『風林火山』(2007年)を観てたら、若き武将役でね。最期の死に方もカッコよくて。
太賀 懐かしいですね。
―この1ヵ月で僕が観た映画でも『アズミ・ハルコは行方不明』『淵に立つ』と注目作に重要な役で出ていて。ますます演技の振れ幅も広いですけど、現場では感覚的に入るほうですか?
太賀 いや、そうでもないですね。どっちかって言うと考えていくタイプだと思います。やっぱ安心できないし、感覚だけだと補えないものもある気がして。ある程度、自分で組み立てていったほうがいいんじゃないかなって。
―これだけ実績を積んできた中で、転機というか、自分の中で手応えのあった役柄や作品はあります?
太賀 何が転機だったかなぁっていうと難しいですけど。ほんと1コ1コの作品で少しずつ変わっていって。まぁ、仕事が増えたきっかけは去年の『ゆとりですがなにか』ってドラマが決定的だと思うんですけど。
あれが一番、自分のキャリアの中では反響が大きかったかなって。でもあんな風にイジってもらえるとは思ってなかったから、嬉しい誤算でしたね。
―“ゆとりモンスター”山岸ひろむという役どころで(笑)。脚本のクドカン(宮藤官九郎)さんにもすごく評価されて。実績にもなったでしょうし自信もね。
太賀 そうやって褒(ほ)められたり「面白かった」って言ってもらえると多少なりとも自信には繋がりますよね。じゃあ、次違う役をやって自信が継続するかって言うと、また全然違う話で。やっぱり毎回怖いですけどね。「今回、大丈夫かな」っていつも思いますし。
―どんなに経験を積んでも毎回、真っさらなとこに向かい合う怖さがね…。僕はダイビングやるんですけど、やっぱり潜るたびに怖いんですよ。
太賀 へぇ、海ですか?
―本数を重ねても、毎回違う海流とか景色とか…初めて潜る場所はその地形を知り尽くしたインストラクターなしには危険ですし。だから慎重にもなるし、舐(な)めたり無謀にならないというか。
太賀 あー、そうなんですね。
―でも、やっぱり恐怖より好奇心が勝って「こんな光景もあるんだ」とか、普通に生きてたら見れないじゃないですか? 役者さんが実際には経験できないものを体感するのもそれに近いのではと…。
太賀 そうですね。そういう意味でも、やったことないような役とかに出会うと興奮というか、スリルはあるかもしれないですね。
「こんな奥深い世界なんだ」って衝撃
―やりがいや楽しいだけでやっていけるものでもない、と仰ってましたが、では役者の喜びを一番実感できるのはどういう時でしょう?
太賀 これってマジでそうなんですけど、呼んでくれた人が「いやー、ホントありがとう、やってくれて!」って言われるのが一番嬉しいですね。監督にしろプロデューサーにしろ。
―「また一緒にやりたいね」とか?
太賀 そうですね。その役を自分に声かけてもらうまでにもいろんな紆余曲折あるだろうし、「あぁ、よかったー!」って。いろんなバランスがある中で役をもらって、「そうでもなかった」って思われるのが一番ショックですし。満足そうにしてもらえると、やっぱり嬉しいですね。
―求められて、必要とされることでこの世界にいていいんだみたいなものも…。
太賀 感じますね。必要としてもらって、そういう風に思ってくれる人がいるなら、満足してもらえたら嬉しいですね。
―転機ということでは、作品とは別に、出会った人に影響されてというのもあると思いますが。
太賀 うーん…今すぐに思い浮かぶのは岩松了さんですね。岩松さんの演劇に出演することが決まって、それが18歳とか17歳の時だったんですけど。それまでずっと映画をやりたいと思っていたので、舞台は全然知らなかったんです。
岩松さんと出会って、自分の中の演劇っていうものが一気に広がって「こんな奥深い世界なんだ」っていうその衝撃というか…発見ですか。なんか、気づきみたいなものがありましたね。
―脚本・演出家として多くの作品を手がけられて、役者でも活躍されている岩松さんですが、具体的には何が違ったんですかね。
太賀 うーん…なんて形容したらいいかわからないですけど、今、65歳とかなのかな。新作を見るたびに、本当に毎回どんどん面白くて、更新し続けてる感じもひとりの表現者としてとってもカッコいいなっていう風に思えて。
岩松さんの演劇はとても難しいし、わかりにくいとか言われる不条理劇ですけど、わからないっていうのは、自分の中にあるものよりその対象が大きいってことで、わからないことがすごく重要だと思うって言われて。
自分の感覚とか知識、知恵の中で理解できるもの以上の、理解できないものに出会うことがすごく大事なんだと教わった気がしますね。それが理屈でもないというか。
―そういう考え方で刺激を受けること含め、同じところに留まっていない生き様も魅力的な方なんですね。
太賀 なんか、色気があるなぁと思いますね、岩松さんには。
次の友だちは『バッテリー』で共演した…
―そんなカッコいい大人も周りにたくさんいる中で、次のお友達の第一候補に林遣都さんをまず挙げていただいて。映画『バッテリー』(2007年)で共演以来の仲ですかね。
太賀 そもそも、遣都くんがいたから今の事務所に入れたみたいなところもありますし。ずーっと一緒ですから。兄弟みたいな感じですかね。
―それはバッテリー以上というか、よっぽどの盟友ですね。
太賀 つきあいは長いし、歳も2個くらいしか変わらないんですけど、遣都くんには敬語で…愛すべき人ですね(笑)。
―カッコいい面持ちと違って、3枚目なところも?
太賀 お会いしたことないですか? ギャップまみれな人ですよ(笑)。
―先日、三谷(幸喜)さんの舞台で評判だった『子供の事情』を観させてもらって。林さんの役どころがこういうコメディの味も合うなぁと思いましたが。
太賀 『火花』なんか、もう久々に震えましたね。この人にしかできない芝居だと思って、心震えました。ヤバいですよ(笑)。
―NHKのドラマ版ですね。ではお友達で繋がせていただいたら、早速チェックします(笑)。
太賀 ほんと、ヤバいです(笑)。
―楽しみです(笑)。それにしても、ますます多忙で出演作もひっきりなしですが、太賀さんはカメラが趣味でお好きなんですよね。そういう時間は作れてますか。
太賀 いや、僕のカメラってでかくて重いんですよ。もう持ち運んでどこかに行くっていうのもなくなってきましたね。撮る機会があったら撮るくらいで。たまに写真を撮ってくださいみたいな話もいただくので、撮ってはいるんですけど。気晴らしって感じではないですね。
―じゃあリフレッシュという意味で、何かやってたりは…。
太賀 最近はサウナですかね。昨日も日帰り温泉行ってきました。
―おっ、それはいいですね! 僕もちょくちょく合間に行ってます。“サ道”ですね(笑)。
太賀 サドウっていうんですか?
昨日整えてきました、俺(笑)
―漫画家のタナカカツキさんが提唱されて、そういう著作も出してるんですけど。正しいサウナの入り方、選び方とか…実際、ハマってる人が登場人物で出てきたりして。それでタナカさんは日本サウナ協会の親善大使に任命されて、フィンランドに交流で行ったりもしてるんです。
太賀 あとでネットで調べてみよう(笑)。
―今、いろんなスパやスーパー銭湯が郊外にもどんどんできて。あちこち行くと、ここのサウナがどうだとか、水風呂の温度がちょうどいいとか(笑)。
太賀 そんなコアじゃないからわからないですけど、奥深いですね(笑)。
―流行りのロウリュが充実してるのはこことか、比較するともっと楽しめたりして。女性にも人気で、それこそ身近で気分転換になるし。
太賀 気分転換なりますよね。なんかこう、雑念が消える感じがいいですね。
―その境地ですか。“サ道”だと、サウナ後のそういうトランス状態みたいなのを「整ったー!」って表現するんですけど(笑)。
太賀 水風呂上がって、あの時間ですね。あれがすごいイイですよね~。じゃあ、昨日整えてきました、俺(笑)。
―あははは。すいません、最後はサウナの話まで脱線して…。ではそろそろお時間ということで。舞台本番前の大切なお時間をいただき、本日はありがとうございました!
★語っていいとも! 第52回ゲスト・林遣都「“佑ちゃんフィーバー”で、一時だけ『映画界のハンカチ王子』みたいな…」
(撮影/塔下智士)
●太賀(たいが) 1993年2月7日、東京都生まれ。06年に俳優デビュー。07年にはNHK大河ドラマに初出演、翌年には映画『那須少年期』で主役に抜擢。16年のドラマ『ゆとりですがなにか』では“ゆとりモンスター”山岸ひろむ役で注目を浴びた。代表作に『桐島、部活やめるってよ』『ほとりの朔子』など。1月11日からM&Oplaysプロデュースの舞台『流山ブルーバード』の地方公演がスタート。映画『海を駆ける』も5月公開予定。