『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。
先週に引き続き、最新主演映画『台風家族』が全国公開中の草彅剛(くさなぎ・つよし)さんが登場。思い出深い出演作について語り尽くします!
■俳優・草彅剛が選ぶ思い出深い出演作は?
――前回はこれまでご覧になって心を動かされた映画についてお聞きしましたが、今回はご自身が出演した映画のなかで思い出深い作品を伺いたいです。
草彅 これまでに出演した作品かあ。悩みますね。
――個人的な話をさせていただくと、草彅さんがチョナン・カンとして主演された『ホテル ビーナス』(2004年)は、実は僕の人生を動かしてくれた作品なんです。
草彅 え? ほんとですか?
――というのも、この作品のタカハタ秀太監督ってそれまでバラエティを作ってきた方じゃないですか。『ASAYAN』(テレビ東京)とか、『SmaSTATION!!』(テレビ朝日)とか。
そんな彼が映画監督に挑戦したというのは、当時TBSのディレクターだった僕にとって衝撃で、「テレビマンも映画監督をやっていいんだ!」「俺もやりたい!」って思わせてくれたんです。それから約10年後、念願叶って『げんげ』(2013年)という作品を撮ることができたんです。
草彅 そうだったんですね!
――それに『ホテル ビーナス』って作品自体もカッコいいじゃないですか、色合いとか。
草彅 そうですね、ちょっと白黒でね。映画映画していなくて、そのまま流していたらミュージックビデオに見えたりもするというか。
――オシャレでセンスがいいんですよね。
草彅 撮影当時は20代後半だったんですけど、頻繁に韓国へ足を運んだり、情熱を持って韓国語に取り組んだりしていた時期でした。タカハタ監督ともすごくディスカッションして、やっとたどり着いたのがあの映画だったんです。
――構想の段階から関わってらっしゃったんですよね?
草彅 もともと韓国のバーでタカハタ監督と「いつか映画撮りたいね」って話していたんですよ。だから、今でもすごく思い出深い作品ですね。
――ほかに挙げるとすると?
草彅 どの作品もそれぞれに思い出があるんですけど......。強いて言うなら、山崎貴監督の『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年)かな。
――名作ですよね!
草彅 これも思い出深い作品です。山崎監督ってタイムスリップする話が好きじゃないですか。だから、そういう作品に俳優として出られたのは本当にうれしかったですね。
――合戦のシーンが印象的でしたね。
草彅 あれは熊本のほうで撮影したんですよ。『BALLAD』といえば、大沢たかおさんとご一緒できたのも記憶に残っています。先日、渡辺謙さんの舞台を見に行ったんですけど、そこに大沢さんも出演されていて。体をつくっているから、舞台上でものすごく大きく見えるんですよね。
その姿を見ていたら、「僕、この方と一緒に映画出たんだ......」ってすごくうれしくなっちゃって。聞かれてもいないのに、「俺、大沢たかおさんと共演したことあるからね!」って周りに言いふらしましたもん(笑)。
――(笑)。
草彅 しかも、『BALLAD』は『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』(2002年)を原案とした作品ですけど、僕、春日部出身なんで。だからよけいにうれしかった。
■『黄泉がえり』で角田は むちゃぶりをされた!?
――またまた個人的な話で恐縮ですけど、草彅さんがご出演された映画だと、『黄泉(よみ)がえり』(2003年)が記憶に残っていまして。
というのも、僕は『金スマ』(TBS系)を長らく手がけていて、当時、阿部龍二郎プロデューサー(『金スマ』『うたばん』『Goro's Bar』などを手がけたテレビマン)から「草彅さんが『黄泉がえり』という映画に出るから、うちの番組でも『黄泉がえり師』って企画をやれ!」ってむちゃぶりをされたんですよ(笑)。
草彅 ああ、なんかやりましたね!
――あれ、すごいむちゃぶりだったんですよ。「とにかく来週までにやってね」って言ってくるから。
草彅 でも想像つくなあ、阿部さんのそういうの。「とにかくおまえやっとけ!」みたいな(笑)。
――そうそう(笑)。心の中では「そんな人いるわけないのに」って思ったんですけど、結局探し出して会いに行きましたよ、謎の黄泉がえり師に。
草彅 いまさらですけど、悪かったですね、なんか(笑)。
――いえいえ! すごく楽しかったですから(笑)。
■『台風家族』の主人公は感情表現が激しい
――最後に『台風家族』についてお話を伺わせていただきます。草彅さん演じる主人公の鈴木小鉄はなかなかクセのある人ですよね。ひと口に言えば、ダメな人間なのかもしれませんが、実際に演じてみてどうでした?
草彅 楽しかったですよ。ダメな役のほうがやっていて楽しいんですよね。誇張されている役のほうが自分の気持ちにとっかかりができてくるから、やりやすいんです。
――けっこう、感情表現が激しい役どころですもんね。
草彅 感情表現ってほんと難しいですよね~。僕はお芝居をする上で常に課題だと思っていますから。映画を見てくれた方には面白いと思ってもらいたいし、特別な思いを持って帰ってもらいたいという気持ちは常に頭の中にあるので、感情表現のさじ加減は特に大事にしています。そういうところにも注目して見てもらえたらうれしいですね。
●草彅剛(くさなぎ・つよし)
1974年生まれ、埼玉県春日部市出身。俳優、声優、歌手、司会、YouTuberとマルチに活動。「ユーチューバー草彅」のチャンネル登録者数は90万人超。2017年には「新人YouTuberランキングTOP10」において第1位に輝いた。『ブラタモリ』(NHK総合、毎週土曜19:30~20:15)ではナレーションを務める。公式Twitter【@ksngtysofficial】
■『台風家族』全国公開中