検査から約2週間で結果がわかる「男性力ドック」。料金は治療内容や処方薬によって若干異なるが2万1千円~が目安となる 検査から約2週間で結果がわかる「男性力ドック」。料金は治療内容や処方薬によって若干異なるが2万1千円~が目安となる

食べてすぐ寝る、高脂肪の食事を摂る、運動をほとんど行なわない…そんな日々は、男性更年期になるべくしてなるための生活だった!? 

仕事が忙しく不規則な生活に陥(おちい)りがちな人ほど気をつけたい、男性ホルモンを減らさない生活習慣とは? 

性的トラブルのみならず、精神的なダメージも大きい男性更年期。シリーズでお送りしている『まだ若いのに…男性の“更年期障害”はどう見分ける?』『血管から骨、性機能年齢まで…男の更年期を診断する「男性力ドック」を体験!』の2回で、男性更年期の原因と引き起こされる症状、そして検査について検証してきた。

3回目は前回の検査結果を踏まえ、治療や対策について、男性更年期専門外来を設置するメンズヘルスクリニック東京の辻村晃医師(順天堂大学医学部付属浦安病院 泌尿器科 専任准教授)に聞いた。

まずは、「男性力ドック」を体験したバーのマスターGさん(41歳)の検査結果だ。就寝中の勃起の有無を確認できるエレクトメーターでは「もう毎晩ビンビンでした~」と、自信を取り戻しつつあったが、果たして…。

―まず、Gさんはどんな検査結果になりましたか?

「問題ないです。筋肉量が少なければメタボになりますが、Gさんの場合は体脂肪も7.9%なので…アスリート並みですよね(笑)。テストステロンの分泌量も問題ないですし、心配なのは肝臓くらいでしょうか」

―それはよかったです。とはいえ、バーのマスターという昼夜逆転の不規則な生活は、男性更年期が始まる時期などに影響はないんでしょうか?

「男性ホルモンは個人差が大きい問題なので、コレをしたからダメと言えません。ただ、寝不足はホルモンバランスが崩れる大きな原因のひとつですね。遅い時間に夕食を摂ってすぐ寝ることもホルモンにはよくありませんし、生活習慣病を招くような高脂肪の食事も避けたほうがいいでしょう。ちなみに、筋肉トレーニングは男性ホルモンを増やすことにつながりますが、激しい運動をすると男性ホルモンが減ります」

―マラソンブームや自転車通勤など、意外とハードな運動をしている男性も多いと思います。

「毎日30分くらいのゆるいジョギング程度のほうが男性ホルモンには優しい運動です。また男性ホルモンを作る細胞は、温度は関係ありませんが、圧迫はよくありません。長時間自転車に乗る方は気をつけたほうがいいですね」

―女性ホルモンの場合、豆乳など効果のある食べ物もあるようですが、男性ホルモンには? 

「強(し)いていえば、筋肉を作るのに有効と言われるアリシンが含まれる玉ネギを食べると男性ホルモンの数値が上がるという研究結果は出ています。ただ、コレを食べていれば安心というものはなかなか…」

―食べ物には頼れないとすると、規則正しい生活を送って、食事も気をつけるしかないと…。

「実は、最も気をつけたいのは“気分的に落ち込まない”ことです。男性更年期は気分の落ち込みが強く出ますが、気分が落ち込むほど男性ホルモンも減っていきます。趣味を持つ、友達と出かけるなど、いい社会生活を維持することが対策になりますよ」

様々なテストステロン補充法とは

 メンズヘルスクリニック東京で処方される、男性ホルモンのテストステロンの塗り薬。肌に塗ることで体内にホルモンを補充する メンズヘルスクリニック東京で処方される、男性ホルモンのテストステロンの塗り薬。肌に塗ることで体内にホルモンを補充する

―それでも症状が出てきた場合、どのような治療が行なわれるんですか?

「男性ホルモンを補う『ホルモン補充療法』になります。注射によりテストステロンを体内に直接注入しますが、最初2週間に1度、改善がみられれば1ヵ月に1度程度の頻度になりますね」

―治療からどのくらいで症状の改善が現れるんでしょう。

「半年くらいで元気や自信を取り戻す方が多いですね。活力が戻り、気分的に落ち込まないことで男性ホルモン値も良くなっていきます。なので、逆にホルモン補充療法をしてもドンヨリした気分が治らない場合は、別の病気が疑われますね」

―男性ホルモンを自力で分泌できなくても、補うだけでかなり改善されるとは…。

「陰嚢(いんのう)などに塗るテストステロンの塗り薬、漢方もありますよ。テストステロンを朝、肌に塗ることで、その日のテストステロン値の不足分を補います。こちらは注射よりもやや長期的に体を改善することになります」

―男性更年期の症状が出てホルモンを補充すると、一生ホルモンを補充しなければいけないのかと思っていました。

「一生ではないので不安にならないでください。そもそも、男性更年期は誰にでもあるもの。人により症状が強く出たり、症状が出ないままそれまでと変わらずに過ごしている方もいて、個人差が大きいんです。症状が出ても今はホルモン補充療法という、いい方法がありますので、今抱えている体調の悪さに思い当たる節があれば泌尿器科で診てもらったほうがいいかもしれません」

まだまだ、わかっていない部分も多い男性の更年期だが、今回、伺ったポイントを抑えて予防に役立ててみてはいかがだろう。

●取材協力/メンズヘルスクリニック東京 「男性更年期専門外来」以外に、「AGA専門外来」、「男性皮膚専門外来」、「前立腺がんサポート外来」、「男性妊活外来」、「テストステロンアップ外来」を設置した、男性力を上げるためのクリニック。住所:東京都千代田区丸の内1-11-1パシフィックセンチュリープレイス丸の内 10F 電話:03-5224-5551

(取材・文/渡邉裕美)