ファッション界で快進撃を続けるMB流“おしゃれの教科書”は、どうやって生まれたのか? ファッション界で快進撃を続けるMB流“おしゃれの教科書”は、どうやって生まれたのか?

カリスマファッションブロガー・MB。ネット界では知らない人のいない超有名人だが、その素顔は意外と知られていない。

『美メンズ変身講座』では、新刊「スタメン25着で着まわす毎日コーディネート塾」(集英社)を片手に「モテコーデの法則」「失敗しない“オシャレ公式”」と2回にわたり、週プレNEWSのスタッフをオシャレに変身させてもらったが、さらに今回はファッション界で快進撃を続けるMBさんとは一体、何者なのか? その素顔に迫る!

* * *

―聞くところによればMBさんが書いたら商品がなくなったとかよくあるみたいだし、街中をよく見るとMBさんの提案する格好をする人も増えてますよね。

昔、「マニュアル世代」なんて言葉があって、『ポパイ』や『ホットドッグプレス』で紹介したスタイルを鵜呑みにする人がいましたけど、こんなにわかりやすく正解を示されると、みんな自分では何も考えなくなっちゃいません?

MB そんなことはないですよ。さっき、ドレス:カジュアルは7:3って言いましたけど、それってよく考えたら、ちょっと曖昧(あいまい)でしょう?

―10アイテム身につけて、そのうちの3つが…とかってわけじゃないし、確かにイマイチわからないですよね。

MB 数字やロジックでわかりやすさを出してますけど、曖昧さも残すことによって工夫が生まれると思うんです。7:3の表現は、コーディネートの無限の可能性を示唆(しさ)しているんですよね。

―なるほど。でもオシャレに限らずですが、失敗してなんぼとかいいますし。やっぱり自分で何度も失敗しないと、成長しない??

MB いや、10万円もお金かけたのにことごとく失敗して、オシャレなんてつまんないってなるより、5千円で安くオシャレして楽しくなるほうがいいですよ。さっきのモテじゃないけど、ファッションが変われば、自分自身と世界が変わる。まずはその面白さを感じてほしいんです。

―基本的なことを聞きますけど、そもそもMBさんって、なんの略なんですか?

MB 名前ですか(笑)? メンズバイヤーとかマストバイとかの略ではあるんですけど、深い意味はありません。読者が「こいつ、何者だよ?」って、話題になってくれたらいいなと思ってつけました。僕の書くことって隙(すき)がないんで、面白みも出したかったし。

―そうなんですね。あまり細かなプロフィールが公になってないですけど、どういう経緯でファッションの世界に?

MB 普通ですよ。大学の時に地元のショップでアルバイトをして、そのあとアパレルに入社してマネージャーをやり、バイヤーをやって。途中、ウェブマーケティングなどもやってましたね。ブログは5年前から、メルマガは3年前から書き始めました。

「おまえがユニクロがいいなんて、意外すぎる」

―洋服はいつ頃から興味を?

MB 中学の頃です。洋服好きだった兄の影響ですね。その頃、アメカジが全盛でカウチンニットとかレッドウイングのブーツ、マッコイのデニムとかはいてました。一方で、エアマックスとか裏原宿系のカジュアルなモノも好きで。

―中学でそれはかなりのこだわりですね。ブランドに興味は?

MB 高校の時、夢中になりました。『メンズノンノ』を読んで、ラフ・シモンズに憧れましたね。で、そのうちハイブランドが好きになって、コレクション雑誌とか必死に読むようになって。大学に入ってからはとにかくモードに興味を持って、ジャン・ポール・ゴルチエやマルタン・マルジェラがお気に入りでした。

―それだけ本格的にファッションがお好きだった人が、ここまでユニクロを推すのはちょっと意外ですね。

MB よく言われます(笑)。特に昔からの友人には「おまえがユニクロがいいなんて、意外すぎる」って。

―いつもは、ユニクロを着てるんですか?

MB 今日はそうでもないけど、普段はよく着てます。僕、メルマガを毎週5万字書くんですけど、納得してないと書けませんから。逆にユニクロのすべてがいいなんてことも言えないです。

―確かに時々、これは買っちゃダメとか、キツいこともハッキリ書きますよね。でもこれだけユニクロについて書いていれば、スタッフとも仲良くなるでしょう? それこそモノをもらったりとか。

MB ユニクロに限らないですけど、スタッフさんとはお会いしますね。でもその時もよくないと思えば、ハッキリそう言いますよ。モノもサンプルも一切もらいません。仮に何かの形でいただいたとしたら、絶対紹介しないってルールを自分で設けています。ただ、そんな風に言っても送ってくる人がいて、それがすごく困るんですけどね。

―純粋に着てほしいってことなんじゃないですか?

MB かもしれないですね。でも、それをやったら読者との信頼関係がダメになっちゃいますから。断るか、紹介しないか、です。

―ちなみに1年間でどれくらい洋服を買うんですか?

MB 昨年は1600万円くらいでした。

服を保管するのが大変で倉庫を借りています

―え~っ! そのうち、ファストファッションはどれくらい?

MB ほとんどですね。ユニクロは各アイテムについて評を書くので全アイテム、色違いからサイズ違いまで買います。モノによってはレディースも買いますね。

―ファストファッションばかりで1千万円超! ブランドものならわかるけど、まさか、そんな人がいるとは!! 日本で一番買っているんじゃないですか!?

MB かもしれないですね。だから大量すぎて、保管するのが大変で。今は地元に倉庫を借りています。

―よほど洋服が好きというか…。では、今後の目標は?

MB よく聞かれますけど、何も考えてないんですよね。

―ご自分でも洋服を作って売ってますけど、大きくしたり、ショップをやりたいなんてことは?

MB 考えたことないです。洋服は市場にないから作っているだけで、ただのサービス企画です。採算も度外視してるし。ショップとかモノを売ることが目標になっちゃうと、情報の価値が下がっちゃいますよね。

モノには限界があるけど、情報には限界がない。情報を拡散するほうが自分には有益だと思うので、そこを目標にはしないです。ただ、誰よりも大好きな洋服について、誰にも書けないことを書けるって状態がずっと続けば。それくらいですかね(笑)。

―最後にMBさんにとって究極のオシャレとはなんですか?

MB 褒(ほ)められるために正しくTPOを理解することです。洋服は着たいから着るものだけど、それは「主観」で、褒められるかどうかはわからないでしょ。オシャレとは別の話。オシャレって、要するに「客観」なんです。だからこそ説明できるし、誰にだってできることなんですよね。

 MB氏(中央)と、MB流コーデで変身した週プレスタッフ MB氏(中央)と、MB流コーデで変身した週プレスタッフ

●MB ファッションバイヤー、ブロガー。プロバイヤーとして活動する傍ら、2012年12月にWEBサイト「現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになれる方法 KnowerMag」を開設。男のオシャレをロジカルに語れる新しい存在として絶大な支持を受ける。最新刊『ほぼユニクロで男のオシャレはうまくいく スタメン25着で着まわす毎日コーディネート塾』(集英社刊) (取材・文/大野智己 撮影/五十嵐和博)