アフリカ大陸のメインともいえるサファリを終えた私は、緊張感から解放されたのか単に旅疲れが出たのか、ダウン。
でも旅人の魔法道具「ポカリの粉」を水のペットボトルに入れて、とにかくガブ飲みしたら少し調子が出てきたよ! さすが、ジャパンクオリティー!
寝込んでいるのももったいないので、お次はタンザニア東部にある「ザンジバル島」に行くことにした。ザンジバルは“アフリカの楽園”として旅人に人気の島。沖縄よりも少し大きい程度の面積で、きれいなビーチもあるんだって♪
島へ行くにはナイロビやヨハネスブルグに並ぶ世界3大危険地域のひとつ、タンザニアの最大都市ダルエスサラームからフェリーに乗るのが定番ルート。しかし、そこは今やアフリカで一番危険とも言われ、多くの旅人が「タクシー強盗」など危ない事件に遭っている街なのだ。
タクシー強盗とは、乗車中に運転手とグルであろう強盗団が乗ってきて、現金や貴重品はもちろん、ATMに連れていかれて限度額まで引き出されるというもの。ナイフで脅されたり、運が悪けりゃ殴られたりしながら、時には何台かのATMを周り、根こそぎ盗られた後はその辺でポイっと捨てられるのだ。
もちろん抵抗したら殺される可能性もあるし、タクシー内で拉致されている間の恐怖は並大抵のものではなく、実際に私の旅友もこの事件に遭って旅をリタイヤせざるをえなかった。事件は特にバスターミナル、ザンジバル行きフェリー乗り場、多くの日本人が泊まるYMCA周辺など、旅人が避けられない場所で起きている。そんなところを体調フラフラの私がウロウロしたら、まさに“鴨ネギ”で、下手したら楽園に行く前に天国行きとなってしまうかもしれない。
なんとか別ルートで行きたかった私は、タンザニア人のオボニョの提案でアルーシャ近隣のキリマンジャロ空港から飛行機で向かうことにした。現地の友、頼りになるわ!
無事にザンジバルの小さい空港に着くと、そこは雨が降っていてジトッと湿気の強い南国特有の気候。ダラダラと呼ばれる現地人の足、いわゆるミニバスに乗って中心街ストーンタウンに向かった。
世界遺産にもなっているその街は、ポルトガルやオマーンに占領されたりイギリスの保護領だった歴史背景か、複数文化の石造建築遺跡が多数残る。アラブ系住民も多く、なんと9割はイスラム教徒なんだそう。
今では楽園と言われるこの島だけど、かつては奴隷貿易の拠点だった場所。当時、市場での奴隷と買い手の数は600人を超えるほどで、アフリカ全体でも奴隷船で毎年数十万人ものアフリカ人が運ばれ、南北アメリカ大陸まで生きて辿り着いた人は1500万人、途中で亡くなった人はその5倍と言われている。
街中には奴隷市場跡や教会、また当時、日本から売春婦として連れてこられた「からゆきさん」が住んでいたというアパートが残っていて今では土産物屋になっていた。
まさか、日本人女性がこんなところで逞しく生き抜いていたなんて…。すぐ近くには彼女達が営んでいたジャパニーズバーがあり、地元の人々に愛され繁盛していたらしい。
旅の恋愛マジックにご用心
街の治安は気を付けていれば悪くなさそうだったので、夜にビールでも飲もうかと出かけると、あら、ちょっと酔っ払いのお兄さん方がいるなぁ。無視するのもコワイので挨拶だけかわすと、ひとりの男に勝手に相席されちゃった。
「日本人はエレベーターの中でなんで静かなんだい?」という質問から始まり、「日本人は静かで自分の意見を全く言わない。僕の妻は日本人だけれど、彼女もそうだった。そして何も言わずに去っていったんだ」
彼はちょっとお酔いになられているようだったので、私はせっかくゆっくり飲もうと思ったビールをなるべく早めに流し込む。
「彼女は初めはすごく仲良かったのに、赤ちゃんを連れて日本に戻ったまま帰ってこない。フェイスブックで何度連絡しても無視されているんだ。日本人はそうなのかい?」
もはやそれは日本人がどうのではなく、彼が飲んだくれ亭主だったからとか、その女性が日本で我に返ったからとか、そういう話であろう。彼は同じ日本人を見つけたから聞いてもらいたかったのか、妻に対する恨み(?)が日本人である私に向いているのか、訴えは続いた。
そしてついには彼女にフェイスブックで連絡してほしいと泣き始めてしまったので、私は「フェイスブックはやってません」と、キャバ嬢の得意そうなセリフで切り抜けた。ふぅ…。出会った当時の彼女は学校を卒業したばかりだったそうだけれども、自分の子どもがタンザニア人とのハーフになるとは思いもしてなかったかも。
旅先での出会いはファンタスティックだけれども、旅の恋愛マジックには気をつけなければと改めて身が引き締まる。
しかし、この島にはそんなマジックにかかりそうなロマンチックなビーチがあるんです!
というわけで、サファリで仲良くなったスペイン人カップルや、同じ宿のブラジル人のママと一緒に向かうことにした。ストーンタウンから美しいビーチのある町ヌングイまでは、タイのソンテウみたいな乗り物で2時間弱。スペイン人のふたりは身長2mくらいあり(マジ)、ずっと頭をかがめているのは本当にツラそうで、この時ばかりは自分がチビだったことに感謝した。
そしてやってきたビーチは、ドヒャー! 青い! キレイ! 透明度高い! ここは相当いいぞ! みんなが楽園と言うだけのことはあって、最高のビーチがそこにあった。
砂浜でゴロンとする牛たち
すると、不思議なもので体調不良もブっ飛び、楽しすぎてついついお買い物。タンザニアの派手な柄物の服やブレスレット、今後の旅で邪魔になるだろうキリンの絵も買ってしまった。
ビーチで泳いでいると、どこからともなく牛が現れて砂浜にゴロンと転がっている。その様子は世にも珍しい牛ビーチと言ったところか、人々は牛に夢中で写真を撮った。
そして、どこからともなくマサイ族もやってくる。これまでケニアやタンザニアでマサイ族を見てきた私ですが、この感じ、リアルマサイじゃないのがなんとなくわかる。そしてシティマサイでもなく、もはや商売用のフェイクマサイ!(たぶん) だけど、ガメつくでもなく気さくな良い人ばかりなので、やっぱりマサイ族は好きだな、私。
夜はスペイン人カップルとビーチフロントの前で1杯やることにした。身長2mほどあるふたりの職業は、彼女がバレーボール選手で彼はポリス。彼がタバコを買う時にマリファナを勧められていたが、苦笑して「ポリスですから(笑)」と断っていたのが印象的だった。
こうしてアフリカの楽園を堪能して……次はいよいよ100ヵ国目!
しかし、空港に向かうと、なんと! 「お客さん少なかったから、飛行機飛ばすのやめちゃったみたいよ」。そんなことあり? あるんですね…。
もう驚きが隠せませんが、なんとか日本の支店に連絡をして対処してもらい、別の飛行機に乗せてもらうことになった。
久々に度肝抜かれたけど、おかげでアフリカ大陸の最高峰・キリマンジャロを上空から拝むことができたので、これも何かの縁?
【This week’s BLUE】 ザンジバルから出る飛行機で上空からキリマンジャロが見えた! ラッキー! ●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。バックパックを背負 う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】