南アフリカのケープタウン。駅に着いてものの5分で強盗に遭遇したのがトラウマで、外を歩くのが怖い。
やっとアフリカ大陸の最終地点に辿り着いたというのに、どうしたものか。
「そうだ、Uber(ウーバー)乗ろう」
ウーバーとはご存じの通り、最近、世界中で流行している配車サービス。個人が自家用車でタクシーのように人を乗せて収入を得ることができるシステムだ。
アフリカでは2013年から南アフリカのヨハネスブルグで営業が開始され、現在ではケニアやタンザニアなど他アフリカ諸国にも進出しているという。外国籍の人でも登録ができるため、ナイジェリア人、ジンバブエ人、マラウイ人など周辺諸国のドライバーも多いのだとか。
WifiさえあればアプリからUberを呼ぶことは簡単だし、ケープタウンは都会なので宿やカフェのWifi環境はバッチリサクサク♪ 2分でお迎えがやってきた! カップ麺ができるよりも早い!
そして試しにドライバーに「出身はどこですか?」と尋ねると、マラウイだと言う。マラウイはアフリカ大陸南東部にある共和制国家で、できれば私も行きたかったけれど、移動が大変で行くのを諦めた小さな国である。
「マラウイはバスの移動で3日とかかかるところでしょ? 今回は行けなかったけれどいつか行きたいと思っているよ!」
世界を100ヵ国以上周っているというのに、こうやって行ってない国の人に会うことも多く、なんだか悔しくて、いつか行ってやろうという気持ちが湧く。
ドライバーとの会話は弾み、怖い思いをすることもなく目的地に着いた。Uberは登録してあるクレジットカードで自動的に決済されるので現金のやり取りもないし、ルートはGPSに記憶されていて明朗会計。
途上国ではタクシーに乗る時に値段交渉が必要だったり、ぼったくり被害に遭うこともあるが、Uberを使えばそれらを避けられる利点があり、とっても便利だった。安全の保障があるわけではないけれど、アフリカではタクシーより安心かな。ドライバーへの評価制度もあるので対応も良く、星5つです!
つぶらな瞳のダッシー君に遭遇
そんなUberで快適に訪れたテーブルマウンテン。ケーブルカーで標高1086mある頂上まで登ると、山には雲がかかっていて目の前真っ白。
なんの景色も見えない雲の世界を歩いていると、突然、つぶらな瞳をしたカワイコちゃんが現れた。「ダッシー」という愛称で親しまれている、野生の「ケープハイラックス」だ。
見た目はビーバーみたいな感じで、ちょっと強気な表情とデブっとした丸い体型がなんともかわいいらしく、愛嬌いっぱい。派手な景色も見たいけど、こんな小動物との触れ合いや見たことのない植物をじっくり観察するのも悪くない。
そしてUberだけでなく、市内観光バスツアーでボルダーズビーチまで足を延ばすと「アフリカペンギン」の群れ。ケープ半島に生息するので「ケープペンギン」とも呼ばれていて、世界で18種類いるペンギンの中でも、ここでしか見れないアフリカ原産唯一の種だそう。
大人ペンギンは目の周りがピンク色で、胸には銃弾のような黒い斑点があったり、赤ちゃんペンギンはまだ毛が灰色でフワフワ~。正直、見た目は他のペンギンと大差ないけど、絶滅危惧種らしいので「ここまで来てキミに会えてよかった」というキモチ。
動物や自然との穏やかな触れ合いで、少しずつ南アフリカの魅力を感じ始める私。
世界一周の中では些細な出来事のようにも思えるけれど、実はひとつひとつの瞬間が旅の1ページであり、後からジワジワと感動がやってくる。
旅人・憧れの地「喜望峰」へ
そして、ついにアフリカ大陸縦断のゴールに辿り着く時がやってきた。そう、アフリカ大陸最南端とされる「喜望峰」だ。
ここは旅人にとって憧れの地。ユーラシア大陸を横断したらポルトガルの最西端ロカ岬を目指すように、アフリカ大陸を縦断したら南アフリカの最南端喜望峰でしょう(厳密にはユーラシア大陸最西端はサンヴィセンテ岬、アフリカ大陸最南端はアガラス岬なので、“ほぼ”最南端ということらしいケド!)。
ゴールのテープを目指すようにケープポイントの展望台に登ると、そこにはずっとこの目で見たかったアフリカ大陸、最後の景色が広がった!
大西洋とインド洋が交わる大海原に突き出た喜望峰。海にはイルカの群れやクジラの背中のような影が悠然と動いているのが見える。圧巻…!
旅を3年半も続けていると、世界遺産も見飽きたり、絶景にもいちいち驚かなくなったりもするが、ここは違う。アフリカ大陸縦断というハードルの高い旅を無事に終えた「達成感」からだろうか、その景色は特別、私の胸に突き刺さった。
そして達成感とともに、いつかこの旅が終わるのではないかという不安や寂しさも同時に感じていた。地球は丸くてどこまでも続いているように見えるけど、陸地の断崖絶壁に立たされると、道の「終わり」を感じるのである。
「この先、私はどこへ行けばいいのだろう」
…なーんてセンチメンタルな気分に浸ってみたけれど、私はまた地図を広げ、新しい土地へと旅へ出る計画を立てるのであった。
さよなら、アフリカ!
★旅人マリーシャの世界一周紀行:第159回「100ヵ国を制覇した旅人がグアムに行ったら“普通の旅行”が下手になっていた!」
【This week’s BLUE】 カラフルな色が立ち並ぶボ・カープ地区。かつてオランダ人によってアジアやアフリカ諸国から労働者として連れてこられた人々(ケープマレー)の多くの子孫が住んでいる。
●旅人マリーシャ 平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】