宿のランドリーサービスに出した洗濯物が半乾きのまま(泣)、私は次にフローレス島最大の町と言われるマウメレへ向かった。
この島で出会った旅友ルイーザは私と一緒に安宿へ、マークは"インドネシア新首都移転先"として話題のカリマンタン島へ向かうためマウメレ空港でお別れ。
インドネシアは世界一、島の数が多く約1万4000島もあるので、島から島への移動は国内といえど空路も多く交通費がかかる。ちなみに島の数はフィリピンが世界2位で約7100島、日本は3位で6800島! わが国ながら、こんなあるとは知らなかった。
マウメレの安宿に着くと、ヒッピー風の宿主ミスターヘモン(オランダ人)が迎えてくれた。
「奥さんがインドネシア人でね、こっちに14年住んでるよ。宿業を始めて2年弱だよ。その前は東ティモールでJICAのプロジェクトで活動していたんだ」
東ティモールは2002年5月にインドネシアから独立を果たした新しい国で、実は今回の旅で狙っていたのだが行くのがなかなか難しい。
インドネシア領西ティモールに隣接してるというのに、空路だとバリから往復約6万円と高かったり、陸路だと事前にビザが必要だったりと厄介だ。目と鼻の先にあるのに残念だが今回は断念し、次は"第2のバリ"とも言われるビーチリゾート・ロンボク島へ行くことに決めた。
財布のインドネシアルピアも底をついてきたので、どこかで両替するか、ロンボク島行きの航空券をオンラインで購入するか......。
「Wi-Fi? うちの宿にそんなものはないさ。近所にもないし。空港でクレジットカードが使えるかって? うーん、そうは思わないな。両替屋もないよ」
え? 本当? マウメレは総人口27万人でこの島最大の町と聞いていたので、もちろんそれらは揃っていると油断していたのだが。観光地でもなければ、Wi-Fiはそれほど普及していないようだ。
しかたないのでオジェ(バイクタクシー)に乗って、手あたり次第やってみるか。
「まず空港行って! それからインターネットができるところか携帯屋に連れてって!」
運転手のアルンのバイクにノーヘルでまたがり空港に向かうと、クレジットカードは使えて難なく航空券をゲット。一安心したところで次に携帯屋に連れて行ってもらうと、日曜なのでオフィスは閉まっていて、外にあるテーブルで2、3人がネットをしていた。
「外じゃん......。しかもここでしかできない......」
想像していたのとはちょっと違っていたので、ネットは諦めることにして、せっかくなので少しだけ町を案内してもらうことにした。
開店前のフィッシュマーケットや日曜でゴーストタウン化したマーケットの前を通り過ぎ、アルンが連れて行ってくれたのは、一見なんの変哲もない港。
「インドネシアのツナ食べたことあるでしょ? ここで獲れたやつだよ」
本当かどうかわからないが、今後ツナ缶を開ける時はこの町を思い出しそうだ。そしてバイクを走らせながらカタコトで会話を進めると、アルンは言った。
「君は中国人かい? マウメレには中国人がいっぱいいるよ。オランダ人よりもっとね!」
へえ、一度も中国人を見ていないけど、やっぱりいるんだね! そして私はジャパニーズです。
「お腹は空いてる? 僕が一番ウマイと思うバクソ屋に行こう!」
店に着くとアルンがバクソチャンプルー(ごちゃ混ぜって意味)とアイスティーをふたつずつ注文した。バクソはゆで卵やジャガイモと混ざって細かく刻まれ、タフ(豆腐)入りと、これまで一番ボリューミーで確かに安ウマ!
お腹も満足し会計を尋ねると、シレっとアルンの分も入っている。コスパ最強だし元々ご馳走しようと思っていたので全然良いのだが、ふたりの間に一瞬、変な間が......(笑)。
その後もアルンは親切にWi-Fiのありそうな場所へ連れて行ってくれたが、「Wi-Fiは月曜までない」と言われたりして結局ゲットならず。
「ダメだね。僕は12年前までバリの携帯会社で働いていたんだけど、切れたケーブルを直したり24時間体制で本当にハードだったよ」
宿に戻ると、先ほどのバクソ代のことを気まずいと思っていたのか、「オジェ代は要らない。君は特別な友達だから明日も空港まで車で送ってあげる」と言われた。
「君はラッキーだね」。横で見ていた男がそう言った。
夜はルイーザと最後の晩餐を楽しみ、いよいよ2週間のフローレス島の旅も終わりだが、彼女は相変わらずサバサバしていて、そんなに別れを惜しむ感じでもなく眠りにつく。
翌日早朝、私はルイーザのかわいい寝顔にさよならを呟き、ひとりサンライズを眺めながら少し切ない気持ちでコーヒーをすすった。
アルンは早朝にも関わらず約束通り空港まで送ってくれたので、私はこんな時のために用意していた扇子をプレゼントしてみた。
ロンボク島行きのフライトはラブアンバジョ経由。マウメレから一緒に乗ったローカルの人たちが降りると、機内に残されたのは私ひとりだけだった。
不安で落ち着かないそこへ、少しテンション高めでGoProなどを持った欧米人観光客がワラワラと乗り込んできて座席は埋まった。ラブアンバジョやロンボク島がいかにリゾート地なのかがわかる。
そしてついにロンボク島に到着すると、バゲッジクレームにはフリーWi-Fiが飛んでいて、私は水を得た魚のように宿を予約したりネットに時間を費やした。
そして、やっと両替をし、この5年半の旅で初のSIMカードを購入すると、8GBでたったの4万5000ルピア(約360円)! もっと早く買えば良かったな。って、初心者か!?
それから久々に空港タクシーの勧誘に緊張するが、おおよそとなる金額メニューは統一されていて、そこからどの会社も少しディスカウントしているようだ。
私が向かうのは、ロンボク島の南海岸にある海辺の町クタである(バリのクタと同じ名前で紛らわしい)。タクシーはどこも大体9万ルピア(約720円)だったが、ひとりだけ7万5000ルピア(約600円)を提示してきた男がいたので、私は少し疑いながらも即決した(日本円にして見ると大差ないけど!)。
「僕の名はハリー、25歳。ちょうどクタ方面に行く予定があったから、安くできたんだよ。君はラッキーだね!」
そしてフローレス島と同じくキリスト教9割だと思って話していたら、ロンボク島はイスラム教が9割で、残りの1割はバリヒンドゥーだそう。ハリーもモスリムだそうで、モスクにも行くし1日5回お祈りするらしい。なんだか元気がないと思っていたらラマダン中だって! 空腹によるパワーダウンだったってわけね。
インドネシアは島によって雰囲気も宗教も異なるので、また新しい気持ちで旅が始まるなぁと、バックパックを開けると、半乾きの洗濯物の臭いに悩まされるのであった。
まずは洗濯だ。
【This week's BLUE】
マウメレのサンセット。水色とオレンジのグラデーションきれい。肉眼だともっと!
★旅人マリーシャの世界一周紀行:第237回「ロンボク島の"秘密の楽園"に一人旅女子が集まるワケ」
●旅人マリーシャ
平川真梨子。9月8日生まれ。東京出身。レースクイーンやダンサーなどの経験を経て、SサイズモデルとしてTVやwebなどで活動中。スカパーFOXテレビにてH.I.S.のCMに出演中! バックパックを背負う小さな世界旅行者。オフィシャルブログもチェック! http://ameblo.jp/marysha/ Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】