「親の介護はまだ先」だと思いがち。しかし、44歳以下で、すでに3人にひとりは介護が始まっていたりと、意外と身近な話。そして突然襲いかかってくる介護トラブルは、時に家族の絆(きずな)さえ容赦なくむしり取り、精神的にも経済的にも疲弊させていくのだ。具体的にどんな問題があるのか。典型的な〝介護のリアルガチな話〟を専門家の解説と共に見ていこう。

【トラブルケース】親のワガママに翻弄されて......

父親(70歳)の認知症が発覚。家族で介護方針を話し合うも、両親は「子供たちには迷惑をかけたくない」と言う一方で、デイサービスや施設の利用はかたくなに拒否。

結局、兄夫婦による在宅介護が始まったが、慣れない介護に両親も兄夫婦も不満が募っている。

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「ご両親の言っていることは矛盾していますよね(苦笑)。ですが、赤の他人に体を触られることなどに抵抗感を抱く高齢者は多く、このような親のワガママに翻弄(ほんろう)される子供は少なくありません」

そう話すのは、30年近く介護の現場を取材している介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子(さえこ)さんだ。

「両親の望みをすべて叶(かな)えるのは無理。次第に増長していきます。一時的に無理をしても、経済的、精神的に潰(つぶ)されてしまいます」

同居している主な介護者の介護時間では、要介護3以上になると負担が激増する。「ほとんど終日」や「半日程度」が急激に増え、一日の大半を介護に費やしていることがわかる
この場合、親が抱く介護のイメージを変えていくのが手だという。

「『なぜいやがるのか』という、根っこを探ってみてください。もしかしたら、高齢者施設に偏ったイメージを持っているかもしれない。

それを解決した上で、どうすればコストパフォーマンスよく、介護をマネジメントできるのか。自己犠牲の道を突き進むのではなく、改めて親の介護のあり方を見直すべきでしょう」

★他にもさまざまなトラブルケースが
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