「親の介護はまだ先」だと思いがち。しかし、44歳以下で、すでに3人にひとりは介護が始まっていたりと、意外と身近な話。そして突然襲いかかってくる介護トラブルは、時に家族の絆(きずな)さえ容赦なくむしり取り、精神的にも経済的にも疲弊させていくのだ。具体的にどんな問題があるのか。典型的な〝介護のリアルガチな話〟を専門家の解説と共に見ていこう。

【トラブルケース】母の介護を放棄。悪意なき悲劇

母(60歳)の持病の心臓病が悪化し、介護のために弟が同居。だが数ヵ月後に帰省すると、そこにはやつれた母の姿が。弟は介護どころか、食事や身の回りの世話まで母親にさせていた。弟は仕事も辞め、母の年金で暮らしていた。

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「このケースは極端ですが、ただ弟さんに悪意はなく、『介護と言われても何をどうすればいいかわからず、身動きが取れなくなっていた』そう。その結果、介護放棄(ネグレクト)状態になってしまったと」

そう説明するのは、30年近く介護の現場を取材している介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子(さえこ)さん。

このケースでは、最終的に行政や福祉サービスを頼り、母はデイサービスに通い、弟も仕事を始め、解決した。

「お母さんも『どうしようもなくなったら、きっと手を貸してくれるはず』という希望的観測も含めて、ひたすら耐えていたそうです。家庭内の問題を隠そうとする親は少なくありません」

介護における予算と労力には当然、限りがある。それを無視するから、各所に歪(ひず)みが生まれてトラブルになる。介護で大切なことは、決してひとりで抱え込まず、あくまで無理のない範囲で〝マネジメント〟することなのだ。

★他にもさまざまなトラブルケースが
・40代ですでに始まる"親の介護" 無知がゆえに家計破綻の危機も!
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