モーリー・ロバートソン「挑発的ニッポン革命計画」 『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、日本社会におけるジェンダー平等の実現に向けて必要な「インターナル・バイアス」の克服について考察する。

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3月8日の国際女性デーに合わせて、各自治体が女性活躍に関する課題の提示や啓蒙を行なっていました。ただ現実として、日本のジェンダーパリティ(公正)推進の先頭にいるのは、都市部の大企業でしょう。グローバルでビジネスを展開する以上、パリティやアファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)を進めることは当然の責務、コンプライアンスの一部と見られるからです。

そして、その流れに追いつけない中小企業は人材を確保できず、男尊女卑的価値観から抜け出せない地方はより疲弊する。これも避けられないことです。すでに女性の"脱出"は各地で進んでおり、例えば内閣府によると、東北、北関東、甲信越地方では20~34歳の未婚男女比が男性のほうが高い自治体がほかの地域よりも多い――つまり"男余り"の状態にある。

こうした外圧の力もあり、雇用も給与も管理職割合も、数値化できる部分はパリティが加速していくでしょう。では、人々の「意識」まで同じスピードで変わるでしょうか?

今回注目したいのは、男性から女性への偏見ではなく、いわば女性同士の「インターナル・バイアス(内なる偏見)」。古い価値観で自身を規定している女性が、変わろうとする女性と連帯できない現象のことです。

例えばモデルやタレントの女性がジェンダーギャップについて発言すると、一部の男性から誹謗中傷が飛ぶだけでなく、思いのほか女性の共感も得られないことがあります。生まれながらの美貌という"優待券"を武器に活躍する"特権階級"と見られてしまうようなニュアンスでしょうか。"丸腰"の私が戦場に出ても無駄死にするだけだ、それなら従来の価値観に適応して生き抜いたほうがいい、というような感覚もあるかもしれません。

もう少し一般社会に間口を広げ、あえて極端にデフォルメして言うなら、自分で道を切り開ける一部の女性は、国際標準のプラットフォームで権利を主張できる。周囲の男性も多くは理解があり、その中で力を伸ばしていける。理解のあるもの同士で家庭を築き、仕事と育児・家事の役割もシェアして人生を歩んでいける。

でも、現実的にはそこにたどり着けない女性がたくさんいる。そういった人たちが現状を追認してしまう――そんな構図です。

まず必要なのは、男性がこの構図の奥底に何があるかを理解することです。多くの男性は学歴が良かったり、仕事ができたりすれば、年齢を重ねるに従って上がっていくことができる。社会における努力が一直線で済むのです。

しかし女性はそうではなかった。"かわいげ"があるだのないだの、職場や結婚相手に理解があるだのないだの。これは男性には不要な努力、あるいは"ガチャ"です。

今、権利を主張し、連帯を呼びかけている女性の中には、確かに成功と美貌に一定の関連があった人も多いかもしれません。だとしても、その人たちが小さくこじ開けたドアには大きな意味があります。

多くの女性がその点にまで理解を示し、連帯し、男性を巻き込んでいけば、点が線となり、面となる日は遠からず訪れるでしょう。美しいモデルやタレントが「ルッキズム反対」と主張することにも、この問題に関しては間違いなく意義があるのです。

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