みなさんこんにちは! 旅のできない旅人マリーシャです。あっという間に年末ですが、冬になるとお風呂の大切さをひしひしと感じます。
旅の間はバスタブにつかれることなんてなかったし、シャワーもお湯が出れば御の字で、水シャワーだって何度浴びたことか。そんな中でも、たまに温泉チャンスってのがありました。そのありがたみと言ったら、どんな秘境や僻地だろうが
「いい湯だな、あははん~♪」
って......、なるかー!?
世界で有名な温泉といえば、アイスランドのブルーラグーンとかハンガリーのセーチェニ温泉とか、フィンランドでサウナと湖のセットとか、そういうの想像しますよね?
私もそれらの国々に行ったはずなんですが、なぜかそれらの温泉と縁がなく、行ったことがあるのは秘境ばかり......。
■世界最高所の温泉! タティオ間欠泉群(チリ)
一番インパクトがあった温泉といえば、チリのアタカマ砂漠からボリビアのウユニ塩湖を目指すため、3日間の国境越えツアーの途中で立ち寄った「タティオ間欠泉」。標高約4500mにある世界最高所の温泉である。
視界には火山が臨め、どこか別の惑星に来たかのような広大な土地には80を超える間欠泉と噴気孔が水蒸気を噴き出している(数は諸説あり)。そしてそこに温泉があるのだ......!
着替えのできる小屋の前には大地にむき出しのプールがあり、肝心のお湯は水温35℃程度とヌルめ。標高のせいでちょっと下向いたりするだけで頭がぐわんぐわんする中、各国の旅人たちは、お湯の中でジャンプしたり、タバコを吸ったりと自由に入浴を楽しんでいた。日本人の私からすると
「ちょっと待てぃ!」
とツッコミたいところですが、薄い空気にフラフラ、ハァハァしてしまい、足は千鳥気味。酸素が足りんのじゃ!
■天空都市マチュピチュで温泉! アグアス・カリエンテス(ペルー)
それから南米といえば、ウユニ塩湖と並んで死ぬまでに行きたい絶景と言われる天空都市マチュピチュ。ここもまたね、温泉があるんです。
標高約2400mの尾根に位置する古代インカ帝国の遺跡で、未だ多くの謎に包まれているミステリアスな場所。起点となる街クスコからは断崖絶壁のデスロードを車で6時間と、通称「スタンド・バイ・ミーコース」と呼ばれる線路道を徒歩10km。「ウェンザナイッ♪」とか言ってる余裕ないっ。
フラフラで辿りついたマチュピチュ村は、どこか日本の温泉街に似たひなびた雰囲気。
それもそのはず、初代村長はなんと日本人! 1917年に日本から移民団としてペルーへ渡った野内与吉という人物である。1935年にはマチュピチュ村初の木造建築ホテル「ホテル・ノウチ」を開業したそう。残念ながら検索しても情報は出てこない。
さっそく疲れを癒すため温泉施設アグアス・カリエンテスに向かう。受付で入浴料を払い、ロッカーに荷物を入れる。
風呂場は屋外プールのようになっていて、水深1m程度の湯に人々が水着でつかっていた。
夜だったため景色は拝めないが、火山起源の天然温泉で硫黄の香りが漂っている。肝心の水温はヌルめで日本人には物足りん。そして洗い場のようなところも一応あるのだが、お湯はアカだらけ。せっかく温泉街感があるだけに、いろいろ惜しい! 第2の野内さんが必要だ!
■ローマ時代の温泉郷! パムッカレ石灰棚(トルコ)
お次はピューンと飛んで、トルコ。日本と同様に火山国で随所に温泉が湧き、温泉好きの国民性でも知られている。
南西部にある世界遺産パムッカレ(「綿の城」という意味)は、雪のように白い石灰棚に温泉水が湧き、白と青の幻想的な景色を作り出している。
景観保護のため入水できる場所は制限されており、温泉として楽しめるのは足湯くらい。水着なのは子供と、たまにビキニのツワモノを見かけるぐらいだ。
棚田部分は立ち入り禁止となっているおかげで無人の美しい絶景が拝めるのだが、時期によっては湯量が調節されているらしく、常に絶景が保たれている訳ではない。一部では「がっかり世界遺産」などとも言われている。お湯が足りないなんて、温泉としては大問題だ。
しかし、同じ敷地には世界遺産ヒエラポリスもあり、お得感は満載。ローマ遺跡が沈んだ温泉施設アンティークプールも併設されているので、肩までつかりたい人はこちらを利用すれば良いだろう。
■世界最古の温泉プール! セリャヴァトラロイグ (アイスランド)
アイスランドといえばブルーラグーンが有名だが、私が行ったのは1923年に建てられた世界最古の温泉プール。
無人の25mプールで更衣室が併設。風光明媚な自然の中での温泉につかるのはさぞかし気持ち良さそうと思ったが、プールをのぞくと緑色のコケのようなものや正体不明の浮遊物がいっぱい。
え。入るのやめようかな。そう思ったけれど、勇気の鈴が鳴ったよ。恐る恐るつかるとお湯はヌルいし、ヌルヌル気持ち悪い!
毎年夏に一度掃除されるそうであるが、それじゃ掃除が足りないって! そして旅友のふたりはここまで来て、入るのをためらった。勇気が足りないって!
■少数民族が住む秘境の温泉! マラナゲ温泉(インドネシア)
あったかい温泉はないのかーい!
あるんです! インドネシアの秘境にね!
フローレス島中央の山の中にある、標高約1000mの町バジャワ。見所は少数民族の村と天然の温泉である。
現地人ヨハンの案内で「マラナゲ温泉」へ向かうと、生い茂る木々の隙間からモヤモヤと白い湯気が見えた。入水しているのは10人程度。着替え用の小屋は一応あるが、岩の上には服が脱ぎ散らかしてあり、石鹸やら歯ブラシやらが入っている洗面器が置かれていた。
お湯に触れると、
「アチチ! けっこう熱いじゃん!」
体感では45℃くらいあるだろうか。熱くて動けないくらいだ。場所によって冷たい水も湧き出ているので、ちょうど混ざり合うポイントにポジションを取り肩までお湯につかると、顔に蒸気を感じ、身体中の毛穴が開いていく感覚が妙に気持ち良い。やっぱり日本人だなぁと感じる瞬間だ。ついに
「イイ湯だなぁ~♪」
である。体をこすると、旅のアカが川に流れていくのがわかるが、流れのある川タイプの温泉なら汚れが溜まることもなく......。
「マラナゲ温泉」で検索したら結果はたったの8件! 誰も知らない秘境温泉にたどり着いたのは旅人冥利に尽きる。
こうして世界の秘境温泉を巡ったが、多くに共通するのは水温がヌルいこと。私たち日本人がイメージする「温泉」ではなく「温泉プール」に近く、また水着着用なことでよりプール感が増す。「疲れを取りに行こう」なんて思わないほうがいい。
そんな条件でも、わざわざ温泉につかる魅力といえば、やはり非日常感を味わえる「絶景」と「個性」だろう。
日本の銭湯に富士の絵が飾られているように、風呂×景色は鉄板の癒しであり、世界の秘境のそれは唯一無二で非常に贅沢である。そしてその土地ならではのお湯につかることで、全身で異国情緒を感じ、旅をしていると実感できる。旅の中でも秘境温泉体験はスペシャルであることに違いない。
★冬休みは動画三昧! ステイホームで旅したい映画・ドラマのロケ地 ~旅人マリーシャの世界一周紀行:第287回
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】