大谷(右)も鈴木(左)もバットのグリップを耳の横に近づけるスタイルだが、これによって最短距離でバットが出るという 大谷(右)も鈴木(左)もバットのグリップを耳の横に近づけるスタイルだが、これによって最短距離でバットが出るという

昨年のオフシーズンから今季開幕後の現在まで、MLBの話題はドジャース・大谷翔平が中心だが、ほかの日本人選手たちも目覚ましい活躍を見せている。今、知っておくべき注目ポイントを一挙紹介!【日本人メジャーリーガー大奮闘ワイド③】

■速球に対応するため打ち方が進化

大谷翔平が日本時間4月24日に放った今季6号の打球速度が約191キロを計測し、その時点で今季のMLB最速本塁打となったが、実はそれまでの1位は鈴木誠也(カブス)の約185キロだったことが大きな注目を集めた。

鈴木はその後、ケガによる離脱もあり、今季はまだ目立った数字を残せていないが、昨季は日本人史上3人目、右打者では初の20本塁打をクリアし、一皮むけた感がある。

そんなふたりをお股ニキ氏は「足上げとテイクバックを同時に行ない、上半身と下半身を同時にひねる"和式バッティング"からの脱却に成功。日本人でも的確な打撃フォームを身につければ、パワーや瞬発力で勝負できることを示しました」と称賛する。

「大谷はMLB1年目のオープン戦で結果が出なかったことから、足上げをやめて、足先をつけたまま、かかとだけ上げてスイングするフォームに変更。

さらに、46本塁打を記録した2021年頃には、明確に"和式"から脱却し、別人のようにバッティングが変わりました。『あんな打ち方でも飛ばせるのは大谷だから。普通の日本人では無理』という声を聞きますが、それこそ日本人特有の思い込み。大谷じゃなくても飛ぶんです」

それを見事に実践したのが鈴木だ。打ち方の変化は、足元以上に構えたときのバットの位置に表れているという。

「アメリカでは『バットを耳の近くに置け』が打撃理論の基本。バットのグリップを耳の横付近に近づけ、そこからただ振るだけ。最短距離でバットが出るからMLBの速い球にも対応できます。

この構えになる前、鈴木は速いストレートへの対応が遅れ気味でしたが、今はだいぶ間に合うようになりました」

鈴木が"脱和式"に至ったのは、MLB1、2年目の失敗経験がきっかけのようだ。

「MLB1年目は打率.262で本塁打14本。そこで2年目は肉体改造で巨大化したもののケガにつながってしまい、その反省から打ち方を進化させました。昨季途中ぐらいでいい感覚をつかみ、最終的に20本塁打、打率.285の好成績を残せたのです」

実は日本球界でも、"脱和式"で結果を出す選手が増えているという。

「ソフトバンクの柳田悠岐も耳の横で構えていますし、同じくソフトバンクの山川穂高も大谷のようにバットを肩に乗せてグリップを耳に近づけ、そこからバットを立てているだけ。今年のソフトバンク打線が打ちまくっているひとつの要因だと思います」

*成績は現地5月27日時点

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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