10月からの最低賃金アップで恩恵を受ける企業は?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】

構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗

2018年にサービスを開始し、24年7月に上場。初日の終値ベースでの時価総額は1000億円を超えた。小川嶺代表は当時27歳だった2018年にサービスを開始し、24年7月に上場。初日の終値ベースでの時価総額は1000億円を超えた。小川嶺代表は当時27歳だった

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
最低賃金アップ(タイミー)

10月から最低賃金が上がる。過去最大の引き上げ幅で、全都道府県で時給が1000円を超えることになるという。この改定が棚ボタとなる企業はないだろうか?

助手 10月から順次最低賃金が上がるとか。前年から66円上がって全国平均で1121円になるんだそうで。僕の給料も上がるんですかね?

坂本 会社員はすぐには影響ないと思うけどね。恩恵が大きいのはアルバイトや非正規雇用の人だよ。

助手 ぜひ僕の給料も上げてほしかったんですけど。よく考えると、人件費が増えれば企業業績にはマイナスですね。投資先は大丈夫かな。

坂本 人件費が上がる局面で逆に得をする会社もある。人材ビジネスとか。人材ビジネスにも紹介とか派遣とかいろいろあるけど、どれも労働者の賃金に一定の料率をかけたサービス利用料を得るビジネスモデルだから、賃金が上がれば儲かるわけ。

助手 なるほど。所長が期待してる人材ビジネスの会社ってどこです?

坂本 スキマバイトの「タイミー」です。さっきも言ったように、最低賃金の引き上げはバイトや非正規雇用者の賃上げ効果が大きいからね。

助手 タイミーって空いた時間にすぐ働けるサービスでしたっけ。

坂本 そう。同社は、急に人手が必要になった企業と、ちょっとした"スキマ時間"に働きたい人をつなげるマッチングプラットフォームを展開しています。面接なしで即マッチングするし、仕事が終わればすぐに入金される。その便利さで働く人の支持を広げており、9月現在の登録者は1190万人を超えています。

助手 それだけの登録者がいれば、急に人手が必要になっても誰かしら見つけられそうですね。

坂本 勘が良くなったなぁ。プラットフォームビジネスは、登録者や流通量が多いほど便利になります。つまり、人材ビジネスならマッチングしやすくなる。タイミーは事業所も36.9万拠点が登録しているから、働く側にとってもマッチングがしやすい。その環境がより登録者・事業所を呼び込んで業績は急成長中なんです。直近の25年第3四半期決算は営業利益が前年同期比82.5%増ですよ。

助手 すごい勢いだ! ただ、それだけ伸びてるビジネス、新規参入企業が増えて競争が激化しません?

坂本 確かに参入してきた競合もいるけど、タイミーを追い越すのは難しいと思うよ。同社は先行者として無断欠勤防止や評価制度、即時支払いのシステムを整えてきました。同じような仕組みを整えると莫大な投資が必要になるからね。何より、働く人や事業者の間で「スキマバイトといえばタイミー」という第一想起が確立されつつある。スキマバイトで働く人を指して「タイミーさん」って呼ぶの知ってるでしょ?

助手 そうらしいですね。

坂本 だから、働く人も事業者もスキマバイトといえばタイミーを検討するわけ。しかも、法律が定める労働時間の上限の問題があって、事業者が複数のスキマバイト系サービスを併用するのはリスクがある。

助手 なら「タイミーでいいか」となりそうだから安泰そうですね。最低賃金の上昇でタイミーの利用料も増えるなら業績も引き続き期待できますよね?

坂本 ええ。業績に期待できる理由がもうひとつあるんだけどね。賃金上昇で、企業が固定人員を減らして必要なときだけスキマバイト要員で賄う可能性もある。そうなればタイミーにますます追い風が吹くわけ。

助手 確かに!

坂本 スキマバイトは社会的なインフラになる可能性があると思うよ。株価は高めだけど、高成長企業として長期投資すると面白いと思います。

今週の実験結果 
「タイミーさん」という呼称は長い目で見ると大きなプラス。長期投資がよさそうです

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