三菱商事が洋上風力発電撤退! 原発再稼働の機運で注目の企業は?【坂本慎太郎の街歩き投資ラボ】

構成/西田哲郎 撮影/榊 智朗

1924年創業。本社は兵庫県尼崎市。長期案件の受注残(注文を受けたが未納品の商品。今後の売り上げになる)が多い1924年創業。本社は兵庫県尼崎市。長期案件の受注残(注文を受けたが未納品の商品。今後の売り上げになる)が多い

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
三菱商事の洋上風力発電撤退(木村化工機)

8月に三菱商事が洋上風力発電事業からの撤退を発表。日本のエネルギー戦略に激震が走った。これにより、原発再稼働の機運が高まりそうだが、原発関連銘柄といえば何がある?

助手 三菱商事って洋上風力発電からの撤退を8月に決めてたんですか! 政府の肝いりで運営事業者を公募したときに、並み居るライバルとの競争を制して"勝ち取った"みたいな感じでしたよね? 

坂本 千葉県沖と秋田県沖で進めていた洋上風力発電プロジェクトのことだね。確かに2021年の公募当時、三菱商事を中心とした企業連合はライバル企業に比べて破格の安さで応札して受注を射止めました。「なんとしても手に入れたい」という案件だったのは間違いない。

助手 なのに、なんで撤退を?

坂本 インフレによるコスト高に金利上昇、施工船や港湾の制約など、いろんな条件が重なって採算の想定が崩れたとか。

助手 撤退で国家プロジェクトの見込みは狂わないんですか?

坂本 まぁ、影響はあるだろうね。洋上風力発電の運営事業者は改めて公募されるけど、2050年のカーボンニュートラルを目指して再生可能エネルギーを主力電源に育てる政府の計画には痛手になりそうです。低炭素と安定的な電力供給の両立を狙って、原子力発電所の再稼働や新設の流れがさらに強まる可能性はあるんじゃないかな。そうなれば面白くなるのは木村化工機です。

助手 どんな会社なんですか?

坂本 大型の工場設備、いわゆるプラントのエンジニアリングを手がける会社です。同社は設計から調達、据えつけや試運転までの一連の運用に対応でき、さらに主要機器を自社工場で製作できます。図面だけでなく造る工程まで自前で担当できちゃうから、品質や原価、納期を自社でコントロールしやすいんです。

プラント装置はオーダーメイド色が強い。だから現場の制約に合わせて一気通貫で調整できれば提案力と採算性を高められるわけ。さらに納入後の点検や保守、改造などでライフサイクル収益を積み上げられるという強みもある。

助手 すごそうな企業ですけど、原子力発電との関係が見えてこないんですが......。

坂本 実は同社は福島第一原発の廃炉処理にも関わっていて、日本でも有数の原発関連銘柄なんですよ。

坂本 プラントで培った技術を原発に応用できるってことですか?

坂本 そう。同社は鉛加工や遮蔽の技術を基に、1950年代から原子力関連装置に参入しているんです。今では核燃料輸送容器や使用済み燃料の検査装置、遠隔操作作業室など、原子力の"運ぶ・閉じ込める・処理する"に関わる機器を幅広くカバーしています。こうした装置は規制が厳しいから、製造力と現場対応力の両方が必要。プラントで強みにしていることが生きそうでしょ?

助手 確かに!

坂本 原発関連の案件は、再稼働や新設に伴う安全対策・設備更新から、将来の廃炉や核燃料サイクルまで、数十年にわたる収益化が見込めます。しかも、規制で参入障壁が高いから木村化工機の装置が他社に置き換えられる可能性も低い。今から投資しておけば、長く安定的に利益を享受できると思うよ。

助手 なるほど。......って、26年3月期第1四半期の経常利益は前年同期比で79%減じゃないですか! 本当に大丈夫です?

坂本 大丈夫。業種の特性として、装置の引き渡し時期次第で業績がブレるんです。でも同社には通期売り上げ計画を超える約268億円の受注残がある。問題なく投資できますよ。

今週の実験結果 
経常利益が激減していますが、心配は無用。今のPERは歴史的に見ると安い水準です

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