あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、タレント・歌手のはるな愛さんからご紹介いただいた第38回のゲストはモデル・タレントのIVANさん。
ファッションモデルとして男性誌を席巻、パリコレにも選ばれランウェイするなど活躍し、13年9月の『有吉大反省会』で初出演すると自ら「トランスジェンダー」であることを告白。
今ではバラエティーなどにも引っ張りだこで、昨年には週プレ本誌の袋とじグラビアに登場し話題になるなどマルチな魅力を発揮。前回までは性転換後の不安定だった気持ちや自らのルーツ、最近のモテすぎ事情などを明かしてもらったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―あははは、そうやって女性になった今を楽しんでると。そこでまた、役者としての演技の幅も広がってるような。
IVAN 増えました、本当に! 今まで女のコに熱をあげる気持ちがわからなかったんです。私は男のコに熱をあげるじゃないですか。毎回、自分がいく側で、相手からくることが一切なかったから、今ようやく男のコの熱っていうか、私を落とすための頑張りを感じて。
―今は新鮮でいいけど、またいろいろいろ考えすぎて疲れてイヤになっちゃうとか(笑)。
IVAN うん。で、結構、男がハマるんで気を付けないと、ストーカーとかになったらどうしようとか(笑)。
―それは、男の頃でもよくあったのでは?(笑) でも、両方の世界を見られるっていうのも得難いですね。
IVAN 確かに。だから私の人生、ほんと思うんですけど、結構、図太く生きてきて。短命だと思ってるんですよ。なんか神様って、人に与える幸せの分量がみんな平等に決まってるって聞いて。ただ、その幸せのもらい方が違うだけで。
カート・コバーンとかじゃないけど、若いうちに有名になったり、そういう人たちは幸せをぶわーってもらってるし、そうじゃない平凡な人は少しずつ小まめにもらって長生きするみたいな。私もすごい経験してるし幸せをめっちゃもらってるから、たぶん50、60歳で逝くんじゃないかなって。
―いやいや、美輪明宏さんなんかも、だいぶイイお歳だし。
IVAN でもあの方は苦労してるじゃないですか。今ですよ、たぶん幸せ感じてるのって。
―それでいうと、僕は振り子の理論なんですが。有名になるとか、振り幅が大きいかどうかで、最終的にはプラスとマイナス、トントンで。メリットもデメリットもあり、みんな結局は真ん中ぐらいでおんなじじゃないかという。
IVAN 確かにそうかも~。
―すごい世界にいっちゃった分、普通の人の平穏は得られないとか。得られたものが大きい分、失うのも相応にという。失敗した時の反動もね。
IVAN この間、それをすごい感じた出来事があって。酔っ払ってカラオケ行って、男のコと結構、淫らな感じになって、チューしようとか思った時に初めて「待って、カメラあるよ、ここ!」って。最近怖くなった、何撮られてるか。「大丈夫だよ」って彼が言ったんですけど、それがすごい「あ、世界違う。大丈夫じゃねーよ!」って。
「前は姉さんって言われるのもイヤで」
―ほんと、そこが一般人と世間に顔が知れた人間とではリスクがね。特に芸能人のスキャンダルは自分も周りも…。
IVAN そう! 怖い~。だからその自分の気持ちを抑えてる時、「あ、すごい芸能人」って思った(笑)。それまで結構、自覚とかマジでしてなくて、フライデーも撮られたことあるし写真売られたことあるし。
でも、やっぱ今のSNSもそうですけど、影響力を目の当たりするようになって。あと、自分も周りにいるイイお友達なんかに汚い見え方するのがイヤだとか、だんだんと思って。
―信頼してる人を裏切りたくない、みっともない自分を見せたくないとか?
IVAN そうそう。ってなってくると、セーブするのが自分の中で当たり前になってきて。どこかで急にハッてなるんでしょうね。
―それがまぁ大人になるというか。それこそ自分を汚すのもカッコいいことだって、ガキでなんでもやっていい時代の考えとは違うね。
IVAN そう。だから、最近は受け入れたんだと思う、年齢とかも。老い…?
―ははは。でも30代ぐらいは、まだイケてるじゃんって。40代入って半ばから本当に来始めますよ。怖さとか。
IVAN 本当ですか? 何が? 全然まだイケてるじゃないですか。
―見た目云々以前に、それこそ膝が痛いとか目が見えなくなってみたいな(笑)。そんなの自分にはありえないと体に自信があった人間だと尚更ショックですよね。
IVAN やば! めっちゃ現実的ですね。すげーリアルなやつ!
―いや、本当。山登ってトレッキングするのも、車の運転とかまで怖くなったり。そういうのがリアルにくるわけで。
IVAN そっか。私はだから…32で去年(性転換)手術してるんですけど、ちょうどタイにいたから誕生日も誰も祝ってくんなかったし。逆に祝われるのもなんかイヤで、よかった~って。でも今年、この間の(2月)9日が誕生日だったんですけど、すごく嬉しかったんですよ。若いコたちがぶわーってお祝い来てくれて。
で、前は姉さんって言われるのもイヤで、年齢も言いたくないしとか。でもそれが記事になっちゃって、日本って絶対、名前の横に年齢つけるじゃん? (33)みたいな! それ見た時に「あ、受け入れよう」って素直に。男のコとかがお姉さんを口説くってスタンスでくるのも受け入れようみたいな(笑)。
―それはいつしかそうならざるを得ないし、早く認めるほうがね。自分でコントロールできないどうしようもないことは。
IVAN (膝を叩いて)そうなんです! それに気付いて。23、4とかの女のコと勝負しようなんて、もうあのコ達の体とでは絶対に比較できないから。今までは「こいつ、絶対負けない!」とか思ってたけど、そこは負けるから、違う所で勝ってやろうって頭になって。
「人生って、読めないもんですよね」
―他人にどう見られるとか、そこはさっさと切り捨てないとっていう。…なんか、いろんな差別とかトランスジェンダーとして受け入れ続けてきた人に、偉そうに言えることでもないですが(笑)。
IVAN あははははは! そんなことない! 全然ありがたいですよ。私はまだね、膝は痛くならないし目も見えてるから。これから出てくるんですよね。まだまだ生きるなって思ってます。
―だからさっきの振り子の話じゃないけど、同じ生きてる中で振り幅の差こそあれ、自分なりにやれることをやり尽くそうとか。動いて行くことが必要なのではと。
IVAN そうですね。私も今の環境がちょっとポジション的に落ち着いてきたというか。だから新しいこともいっぱいできるし、結構ワクワクしてますね。次、何が来るんだろうって。
―役者もそうだし、それこそまた今の体で写真集を出すのでもありでしょう?
IVAN そうですね。熊田曜子さんとか、この間、一緒に仕事したんですけど、すごいスタイルよくて。やべーって思いました。私もそれぐらいできる人間だし、体を絞るとか、もう1回ちょっと気合い入れ直さなきゃな。
プロのモデルだったから、そこはプロフェッショナルのことなのに。今パって鏡見たら、だるだる!みたいな。
―(笑)だるだるになる自分も現実なんだと気付かせてくれたわけで。そこで気持ちからオッサン化するかどうか、分岐点かも。
IVAN そうそうそう、本当にマジで! やだな~。これから新しい仕事もいっぱいしていきたいし。…ちなみに、編集長は今、お子さんは?
―唐突ですねえ(笑)。それが50歳になった今もいないんですよ。
IVAN 作らないんですか? 作るつもりではいたの?
―まぁこの歳まで子供のいない人生になるとは思わなかったというか。当たり前に父親になってると思ってましたけど。
IVAN 人生って本当にね、読めないもんですよね。
―ほんとに。この語っていいとも!でも、以前に出ていただいた高橋ひとみさんともこういう話になって。彼女は当たり前に結婚すると思ってたのがずっと独身で、まさか50歳過ぎての出会いで初めて結婚するとは、っていう。
なんか、いろんな巡り合わせでそんな話をさせてもらうのも、テーマもなくお仕事でやってる感のない、この企画ならではの面白さではと。
IVAN 確かに。最初話し始めた時と全然、私のリラックス度が違いますもん。
―(笑)そう言ってもらえるのが理想的です。
IVAN 楽しいです、マジで。だって、結局自分の話をここまでするのって、どうしてもお仕事ってなると「これ言っていいのかな。別にここで言うことじゃないな」とかありますけど。結構、喋っちゃってますもんね(笑)。
「生まれ変わるならもう1回、IVAN」
―ははは、それはほんと嬉しいですね。ざっくばらんな茶飲み話風でと言いつつ、やっぱり毎回ドキドキ、こちらもどういう話になるか怖いんで。
IVAN 本当ですか? 全然見えない!
―いやいや、見た目は動じなさそうって言われますが(苦笑)。それはもう皆さん、ほぼ初対面でお話しさせていただいて。だから最初のお友達だった作家の北方(謙三)さんに言われましたから…「とんでもない所に手出しやがったな」と。
IVAN あららららら。
―「『笑っていいとも!』はタモリさんが司会で、TVでやるメリットがあるから、みんな出たがったんだ。こんなのすぐ終わったらどうするんだ?」って。
IVAN え~、あははは!
―まぁでもそれは重々承知ですからと。初めから終わること考えてじゃなく、こういうライブ感のあるガチな企画がなかなかない中、挑戦するだけでも面白いじゃないですかと。そしたら「わかったよ、次の友達を俺が誰に繋ぐかが大事だな。どうする?」って。
IVAN 巡り合わせですね、本当に。それで、はるな愛ちゃんから私まで来て。
―本当にそうなんです。ガチでお友達を紹介してもらって、スゴいタイミングで毎回こんな人と!?っていう。ほんとドキドキの綱渡りですけど(苦笑)。
IVAN でも、私もまだまだ人生、これからいろんな濃ゆいことが待ってるんだろうなって。自分でもニオってるので。だから、自分の芯はブラさない人間でずっといたいなと思ってるんです。男のコから女のコになる時が唯一、生まれて初めて芯がブレたから。でもそれは体と心の問題だからしょうがないって、今またこうやって自分の脚で立って。
―さっきお話に出た『アナザーストーリーズ』って番組で、最後に「あえて生まれ変わるなら男と女、どっち?」って皆さんに問いかけてたんですよ。そしたら、IKKOさんも愛ちゃんもみんな「どっちでもない」って。「男と女、両方。この自分がいい」って答えていて。すごいなと。いろいろ大変なことはあったけど、そうやって自分の人生を受け入れて、悪くなかったと言えるのが素敵だなって。
IVAN ほんとそうですね。私もそうなのかな…。生まれ変わるならもう1回、IVANがいいし…。もっと計画性のある人間で生まれ変わりたいけどね(笑)。もっとちゃんと勉強できるコとか。
―(笑)でも、それができてたらIVANじゃないかもしれないし。行き当たりばったりかもしれないけど、沖縄アクターズスクール行っちゃう、カリフォルニア留学しちゃう、パリコレ出ちゃう…それが自分を作って、今そう思えるから、これからは計画性をって(笑)。
IVAN マジ、それはほんと! だから、これからは計画してこ!みたいな(笑)。
「根拠なく有名になるって、ただそれだけ」
―『有吉反省会』に出てブレイクしたのも、反省人として起用されて、トランスジェンダーを告白してね。大きな分岐点だったはずですが。そもそも迷いはなかった?
IVAN 結構、その時はなんでもいいから出たい、世に出たら当たるからっていう変な根拠のない自信しかなくて。カミングアウトした時も、何も考えずにIVANの全てをこの番組で出そうと思ってたから。それがたぶん、みんな何コイツ?ってなってくれて。
単純にチャンスっていう。私がもう一回芸能界で復活する…。
―それで色物として扱われるんじゃないかとか、怖さもなかった?
IVAN いや、世に出たらこっちのもんっていう変な根拠ですね。後はなんとかなるじゃないけど。変な話、業界は長いわけで、大体はわかってはいるんですよ、何が当たるか、世間は何を欲するのかとか。そういう嗅覚みたいなのはあるんで。
だから、私が世に出たら、いろんな意味でタイミングがいいっていうか、海外にいる時から思ってて。LGBT然りでそうなんですけど。だから、とにかく出たくて仕方なかった。それから考えよう、とりあえず根拠なく有名になるって、ただそれだけでした。
―自分の人生を肯定的に信じられるというか。選んだ道を進めば大丈夫みたいな…。
IVAN そうですね。どういう流れでも私は世に出る人だからっていう。でも、もう3年、4年目に突入しますけど『有吉反省会』は私の中でいまだに緊張します。なぜかね、毎回もう「はぁ~はぁ~」ってカメラ回るまで。ずっとそれがなくならないから結構、厄介ですね。なくなってくれよ、早くって思うんですけど。
―それだけある意味、原点みたいな。起用されたのも巡り合わせの縁で、分岐点となったわけだし。パリコレでランウェイまでした人がね(笑)。
IVAN だからTVに出たり、IVANの名前がひとり歩きしてるけど、有名になるっていうのが自分の中でもすごく漠然としてますね。今、逆に人に知ってもらって、まだまだ…やっぱ人間って欲深いんですよ。
この間、ニューヨークに行って来たんですけど、私のこと誰も知らないわけ。当たり前ですけど。また活力が湧いてくるんですよね。私のステージ、こっちかも?って。地下鉄乗ってても、男にナンパされるだけ(笑)。それじゃねーし、今!って。
―それも日本で有名になってこその気持ちで。最初にカリフォルニア留学した時はまだ満ちてなかったんでしょうね。
IVAN そうですね。なんかちゃんとすごい自分の固まったものがないと、その時は海外では勝負できない人間なんだなって私、気付いてたんだと思う。
―やっぱりゲッターズ飯田さんの占い通り「IVANは造っては壊し、造っては壊しの人生を送っていく人だよ」っていう。それで次は、役者で世界的にビッグに…。
IVAN そうなんです。次へ次へって、大きくなりたくてしょうがない。欲は一生止まらないですね、きっと。だから、まだまだ頑張ります! これ、また出させてください。はははは! すげー話したよね、たぶん。
―今日はありがとうございました。次のお友達がまだ決まってないということで、たくさんいらっしゃる中でまた繋げさせていただきます!
★語っていいとも! 第39回ゲスト・元ちとせ「島から離れて、また恩返しに帰るって当たり前に思ってきた」
●IVAN(アイヴァン) 1984年、2月9日生まれ、奈良県出身。父親が日本人とスペイン人のハーフ、母親がメキシコ人のクォーター。98年に沖縄アクターズスクール東京地区第1期生に選ばれ、約1年間歌やダンスのレッスンを受ける。18歳でモデル活動を開始し、2004年にはパリコレのモデルにも選ばれるなどトップモデルに。13年9月の『有吉大反省会』に初出演した際、「トランスジェンダー」であることを告白、世間を驚かせる。現在、モデル、タレント、役者として幅広く活躍中。
(撮影/塔下智士)