あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、タレント・女優の坂下千里子さんからご紹介いただいた第42回のゲストは芸人の三瓶さん。
大のサッカーファンとしても知られ、最近では日本代表・長友佑都選手と女優・平愛梨さんのキューピッド役として注目されたが、その意外な素顔とは?
大学に進学せず、福島から上京して名門の服部栄養専門学校に入学。調理師免許を取るも料理人の道には進まず、お笑い芸人をめざすことになった経緯から、社会逃避しまくりの自由人っぷりまで前回は明かされたがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―逆に、そのまんまだからよかったんですね。自分を作らずに、他と同じことやってないみたいな。
三瓶 ガツガツしてたらこうはなってないですよね、たぶん。未だに変えてないですけど。自分の中で、前に出ることがちょっと…って思ってるのもあるんで。
―だって、ガツガツするのはイヤなんですもんね。カッコ悪いって。
三瓶 イヤです。カッコ悪いっす(笑)。ていうか、出てく人がいるんで面白いんですけど、僕がやるのはちょっと違うなと。まぁガツガツ行きたくもないしっていう感じです。
―ある意味、それはそれで強気というか、偉そうですよね(笑)。
三瓶 はははは(笑)。そうですね。確かに図太そうには見られるんで。「全然、緊張とかしないだろ」とかよく言われますし。
―それで『(笑って)いいとも!』に起用されたり、シンデレラストーリーじゃないですか。僕の中でも正直、「いつの間にか…えっ、この芸人はなんの人?」って印象でしたけど。
三瓶 そうですよね。そのおすピー(おすぎとピーコ)さんが当時、『いいとも!』出られてて、リハーサルの時に僕のことを話題にしてくれて。スタッフみんなでV(ビデオ)を観てくれたっていうのは聞きました。それでタモリさんが本番中に誰も知らない僕の真似をしてくれて。たぶん、「タモさん、ハマってるぞ」みたいに勘違いされて、すぐ次の週にいきなり呼ばれてっていう。そんな感じです。
―それが2001年ぐらいで。それこそシンデレラストーリーと言わずして何を言う、みたいな。
三瓶 自分では全然わかってないですけど、その時は全く。まだ2年目だったんで、別に何も考えないで欲も出してなくて、呼ばれたから行ったみたいな…。
―『いいとも!』に出たいって人がいくらでもいるところで、その何様?的な(笑)。「とんでもないとこにステージ上がっちゃった」みたいなのも感じず?
三瓶 意外とスタジオ狭くて。普段、ルミネの劇場出てたんで「あ、劇場より狭いな」と思ったら、そんなに緊張もしなくて。でも、周りは変わってく感じはなんとなくあったんですけど。
―人見知りだ、田舎者だと言いながら、確かに心臓強いですね(笑)。
三瓶 ははは(笑)。なんか、切り替えじゃないですけど、「それはそれ」って感じなんですよね。「仕事は仕事」ってなっちゃってるだけで、はい。
「どうせこれ以上はない」と思ってるんで
―それで、周りの妬(ねた)みとかひがみもすごくあったはずでは?
三瓶 多少…今思えばですけど、たぶんあったなって感じですよね。でもあんまり…ちょっとしたイヤがらせみたいなのはありましたけど。
―意外と気にしないというか、『鈍感力』みたいな?
三瓶 あー、はい。もしかしたら…いい意味で。当時はあっという間すぎて、状況もわかんないんで。
―(笑)。イヤがらせくらいあっても、手応えがないとかね。自分からウケを狙うわけでもなく、ガツガツいくでもないわけですから…。
三瓶 (笑)。自分でもこうなると思ってないですからね、本当に全然何も。
―ちなみに「三瓶です」のキャラ作りみたいなネタもたまたま? 考えて考えてじゃなく。
三瓶 あー。その(吉本の)養成所行ってる時に、ネタは毎週やらされるんですよ。「作ってきなさい」って講師の人に言われて。だから、当時は本当に考えてはいたと思うんですけど。やっぱり怒られたくないじゃないですか? 怒られるのイヤなんですよ。
―ははは。料理人の世界に行かなかったのもそうですけど、基本的に叱られるのが苦手と。
三瓶 ほんとイヤなんで、そこだけはちゃんとしようと思って。毎週なんかしら試行錯誤はしてましたね。そこは努力してました、ちゃんと。
―でも、それでいきなり人気が出て、名前も知られるようになって。逆に今度は守りに入るというか、「ここから落ちたくない」みたいなのもあるじゃないですか?
三瓶 ありますね、みんな。
―みんなはあるけど?(笑)
三瓶 なんとなくですけど、「どうせこれ以上はない」と思ってるんで。TVに出だして、わーってなっても自分の中で「絶対これ以上、どうにもなることないな」って。だから、『いいとも!』出てても、お客さんに声かけてもらって、手を振ってる自分が小寒(こざむ)いっていうか…。
―冷静に客観視してますね(笑)。
三瓶 小寒いんですよ。「何、おまえ、手振ってんの?」「何、調子乗ってんの?」って。
―肩のあたりで見てる自分が? 天使と悪魔が囁いてるみたいな(笑)。
三瓶 はい。第三者がいるんですよ。だから、手とかも振らずに会釈とかばっかりしてて。そしたら同じ出演者の方が「おまえ、冷めてんな」みたいなことを言って。確かにそうなんですけど、実際、これが続くわけないじゃないですか?
「あの芸風で図に乗ってたらヤバいですよ」
―いやいや(笑)。そこは自虐的というかニヒルな…。
三瓶 だから、別に何も怖いものもないっていうか。有頂天になるとかも全くなかったですね。あの芸風で図に乗ってたらヤバいですよ、ははは(笑)。それはずっとわかってたというか、これ以上ないなと思ってずっと仕事してたんで。
―よく言えば謙虚なんですけど。ほんと冷めてるなという。
三瓶 謙虚なんですけど、言い方変えれば、ちょっとあれですよね。だからインタビューとか取材受けると、「新しいネタないすか?」みたいに聞かれるのが一番イヤだったんですよ。やったところで「三瓶です」を超えないし。別に全然それでもいいと思って。
―欲がないんですかね。逆にそのガツガツしない佇(たたず)まいが他の人とは違う最大の強みでもあり?
三瓶 なんですかね。ちょっとそれもあるかも。
―鈍感力というか『達観力』みたいな。あるいは『冷観力』?
三瓶 はは、冷めちゃってる。でも昔からなのか、あんま変わってないですね、根本の性格は…。なんなんすかね、それで続いているのが不思議ではあるんですけど、はい。
―それこそ自分の運だったり、恵まれてる巡り合わせみたいなものを信じられるのでは…。
三瓶 運、でしょうね。たぶん、はい。運と…なんすかね、人柄なのか。自分で人柄っていうのもあれですけど(笑)。気に入られない人ももちろんいますし、僕も好き嫌いはあるんですよ。「この人とはご飯行きたくない、絶対やだな、気遣うな」っていうのはハッキリしてるかもしれないです。
―そこで嗅ぎ分けるというか、面倒を見てカワいがってもらえる相手がいて、人に救われるタイプなのかなという気はしますね。
三瓶 あーっ、イヤなとこにはいかないっていうのは、自分の中でちゃんとラインみたいなのはあって。そこはしっかりしてるっていうか、それもよくないとは思うんですけど。
―ある意味、動物的勘で…自分が居心地よくいられるところを本能で見つけるという。
三瓶 ですかね。カワイがってもらいたい好きな先輩のとこにはやっぱ行きたいので、はい。逆に、ハマりたくないって言ったら失礼ですけど、まぁそこは絶対行きたくないですね。誰彼構わず行くやつもいますからね。
―ははは。ある意味、また偉そうな(笑)。自分は人を選ぶぞと。イヤな相手に無理におもねったりもしない?
三瓶 そうですね。僕がやっぱ先輩のお酒とかもつげないんで。先輩後輩の前にまず同じ人間だろって思っちゃうんですよ。人間だったら、自分でできるじゃないですか。酒つぐとか、あんな制度、面倒くさくないですか? 自分のペースでやっぱ食べたいし飲みたいし、いちいちそういうの僕、全くできないんです。はい。
―へー。そんなキャラだとは意外でした。もっと周りに気を遣って立てるタイプかと。
三瓶 あ、ちょっと違いますかね(笑)。
「彦摩呂さんでは絶対ないですね」
―なんか、以前にゲストでお話しさせてもらった蛭子(能収)さんにも近いものを感じました。
三瓶 あー。でも、蛭子さん見てたら、確かに自分と似てるかなってとこはあります。歳取ったら、ああなるかもしれない。なんでも平気で…。僕はまだTVとかでは「偉そうに」ってなっちゃうんで、ハッキリ言わないんですけど。蛭子さんぐらいになっちゃうと…。
―場の空気とか関係なく本音でね。みんなが「この人、好き勝手に思ったこと言って、なんなの?」って呆れるみたいな。三瓶さんにそういうイメージはなかったんですけど、うまくカモフラージュしてきましたね(笑)。
三瓶 はははっ(笑)。毒があるとは言われてたんですよ、周りの先輩とかに。「その毒はいいよ」みたいな感じなんですけど、僕は別に毒とは思ってないんで。
―でも、蛭子さんも本当に達観してるし、イヤなことはイヤとか。その上で、お金は欲しいし、稼ぐために仕事はなんでもやりますって。それで今また、あの年齢でブレークしましたから。三瓶さんも10年、20年後にありですね。
三瓶 そうですね。あそこまでギャンブル、僕は好きじゃないですけど(笑)、はい。
―蛭子さんも怒られるのイヤなんですって。だから、好き勝手言ってるように思えて、本人は一所懸命頑張ってるつもりなんです(笑)。
三瓶 そうですよね(笑)。そっか、ポスト蛭子さんなんですね。いや全然好きですもん、蛭子さん。
―あの立ち位置までいって、自由でいられたらだいぶいいですよ。
三瓶 そうですよね。ほんと、確かに。もしかしたら憧れの人になるかもしれないですね。
―彦摩呂さんにも出ていただいたことがあって、僕の中では勝手に蛭子さんより彦摩呂さん的な。料理も得意で、愛想よく面倒見よく、周りにも気を遣ってというイメージだったのが…。
三瓶 はははっ(笑)。僕、真逆だと思います。彦摩呂さんでは絶対ないですね。あんなサービス精神、一切ないです。本当にドライです。
―でも、その料理学校で1年間やったのが活かされて、番組とかでも披露してるわけですよね。根本的に人に振る舞うのが好きだとかいうのもない?
三瓶 プライベートでですよね? それはないです。そもそも責任を負いたくないんで。その重要なポイントを握りたくないというか。実際に調理学校の時も重要なところは絶対やらなかったです。ずーっと補助的な役割で、洗い物やってたり、そっちのポジション。もう味付けとかは他のコに任せて、自分は一切見えないところで頑張ろうと。
―「見えないところで頑張る」って言えば聞こえはいいですけど…。
三瓶 はははっ(笑)。サボり癖ですね。
―責任持たないのもそうだし、主体的にいかないのってズルい人じゃないですか?(笑)
三瓶 ズルいですよ。逃げて逃げて、目立たないようにずっと。中学の時、野球やってたんですけど、そん時も別にレギュラーでもなくて、練習とか他の人を邪魔したくないって口実で、隅のほうでずっと柔軟やってましたもんね。
―何もやんないでサボってると叱られるし?
三瓶 なんにも責任を負いたくないっていう。あんまり身に降りかかってほしくないんですよ。
「このルックスでそれだったら地獄です」
―番組や仕事でガツガツ前に出ないのもそういうバックグラウンドが…。やられました(笑)。勝手に彦摩呂さん的なイメージで、家に呼んでご飯を作ってあげたり。平(愛梨)さんと長友(佑都)さんの“恋のキューピット”とされたのもそういう感じで繋いであげたのかなと。
三瓶 あの愛梨ちゃんの件に関しては、もう僕がサッカー好きなんで「なんとか繋がれ」と思っただけで。だから全然、そこはもう自分の欲ですよね。
―はははは(笑)。
三瓶 とりあえず、そこが繋がってくれれば、サッカー観に行けるしと思って。下心があったんですけど。なので、誰かを家に招いて自分でやるみたいなのも一切ないですね、本当に。
―逆に、坂下さんとこ行って、ご飯をご馳走になってみたいな。
三瓶 そうです。ちりちゃんは、なんとなくやっぱ…。決して上手ではないんですけど、全然やってくれる。どっかで食べたことある味しか作れないんですよ。「ファミレスで食べたことあるな、この味」って。
―ご馳走になっておいて、また言いますねぇ(笑)。それTVでも言ってください。
三瓶 ははははっ(笑)。いや、だから彼女は気遣わなくていいんですよ。
―それも蛭子さんと近いじゃないですか。バス旅でどっかのお店入って、食べたご飯に「これ、あんまり美味しくないね」とか言って。店からもスタッフからも激怒され、炎上するみたいな(笑)。
三瓶 あははは。蛭子さんぐらいになっちゃうと、それ言えちゃうんですけど。まだ僕、そこまではいけてないですよね。ちりちゃん相手くらいだったら、はい。全然いけるんですけど。
―やっぱり、そういう面倒見いい人に乗っかるほうが得意な(笑)。でもそれだと、女のコウケはどうなんでしょう。
三瓶 いや、もの好きもいるんじゃないですかね。いないんですかね、そういう人。
―結構、尽くされたいみたいなコは多いじゃないですか。
三瓶 あっ、そこに繋がるんですね。そうですよね。マメな男って言いますよね。
―だから料理男子がウケるとか。昔は男がオラオラでもよかったですけど。
三瓶 そっか、料理しなきゃいけないですよね、本当なら。そういうことで言うと、もしかしたら僕、ちょっと横柄なのがどっかで…。そこに関してはあんま考えてなかったっていうか、確かにこのルックスでそれだったら地獄ですよね。
なんの取り柄もなくなっちゃうから、マメに連絡ぐらいはしないとってことですね。料理も作ってあげたり…。お互いに対等な立場がいいんですけどね、そこはもう。
―それは理想でしょうけど。一番難しいような(笑)。対等な関係ってよく言いますが、そんな相手がいれば、みんなくっついてるよっていう。
三瓶 ははは(笑)。ちょうどいい相手とか言って、これすらも贅沢なんでしょうね(笑)。
●語っていいとも! 第42回ゲスト・三瓶「人を好きになったら、人って変わるんすかね?」
●三瓶 1976年11月23日生まれ。福島県出身。NSC東京校5期生。服部栄養専門学校卒業後、アルバイトで生活をし、22歳の時にNSCに入学。その後、「三瓶です。」の自己紹介ギャグで大ブレイク。大のサッカーファンとしても知られており、代表チームやクラブチームなど様々なサッカーのユニフォームを着用するキャラも定着。「もしもツアーズ」のレギュラー出演など多方面で活躍し、今年は横澤夏子と共に「よしもと福島シュフラン」のサポーター芸人にも。
(撮影/塔下智士)