あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、俳優の林遣都(けんと)さんからご紹介いただいた第53回のゲストは俳優の駿河太郎さん。
バンド活動を経て、30歳で俳優転向。11年のNHK朝ドラ『カーネーション』でヒロインの夫役に大抜擢された後、ドラマ・映画に出演作多数の個性派バイプレイヤーとして活躍。知る人ぞ知る、国民的タレント・笑福亭鶴瓶の息子でもある。
前回はそのミュージシャンから転じて俳優をめざした経緯、父親の七光りをよしとせず、我が道を歩んできた自らの性分などを伺ったがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―ちょうど僕が干支(えと)でひと回り上になるんですが、78年生まれですよね。
駿河 午(うま)です(笑)。
―やっぱり昭和な匂いを感じさせるというか。ブログとかいろいろ見させていただいても、反骨の人なのかなと。今、お話を伺っても無骨というか(笑)。この連載はテーマのないトークなんですけど、今回はその“反骨”という言葉がある意味、テーマなのかなと思いながら…。
駿河 僕もずっと“なにくそ精神”でやってきてるから。特に役者に関して、始めたのが30になる前かちょうど過ぎてくらいだったので、そこに後ろめたさというか…技術的なことでは20代前半からやってるコたちとも違うってところでね。
もちろん、いろんな経験してるのでは僕にしかできないこともあるし、人生いろいろ見てきてるのもあると思うんですけど。
―また違うステージでね。「おまえらが知らん世界を俺も行っとんや」っていう。
駿河 そこの自信もあるけど、やっぱ技術を知らん後ろめたさっていうのはずっとあるんで。最近でこそ、だいぶ薄れましたけど…「見とけよ!」っていう精神でずっときてるから、確かにそうかもしれないです。
―まぁ、その若い頃からやってるコたちにもキャリアを積み重ねる中で毀誉褒貶(きよほうへん)あって。前回のゲストだった林遣都さんもまさに「なにくそ!って感じで20代前半はやってた」と。あれだけ最初からトントン拍子で主役を演じて、恵まれた王道を進んできたように見えても、そんな言葉が出てくるかと意外でしたが…。
駿河 だから、本当に遣都もね、熱いんですよ。基本的にはあんまり出さないですけど、すごい考えてるんだなって一緒にいて思うし。まぁ、歳もひと回り違うんで悩みはまた別なんですけど(笑)。で、弟なんだけど、お兄ちゃんみたいな。「俺、もうちょっとしっかりせえよ」って思うけど、なんかいろいろ言える感じなんですよ(笑)。
―その前の太賀さんとの繋がりもですが、この時代の風潮の中で役者や芸人の世界も職人的な熱い“昭和”が残っているというか。ウザいくらい体育会系ノリの熱さだったり…。
駿河 遣都もずっと野球やってて。僕もバリバリの体育会系で生きてきてるんで。なんか、歳は違えども、そこは近いかもしれないですね。
―学生時代はバスケやボクシングをやられて、今はサーフィンですか。その一方で、芸大に行かれて音楽の道に進んで。言い方があれですけど、体育会系のアクティブな面と文化系のアートなのと両刀遣い的な(笑)。
駿河 音楽やってみて、自分の中でわかったことはクリエイティブなことが好きなんですよね。好きやけど、才能はないんです。だから音楽とか監督とかゼロからイチにする才能が必要なものはもう諦めて捨てました。
ただ、クリエイティブなことは好きなので、役者好きだなって思うのもそこなんですけど。イチあるところに駿河太郎が演じることによってどうなるかっていう。ちょっと脚色されたり、プラスαみたいな。
―でもどちらかというと、頭で考えて行き詰まったら、体動かしておこうっていうタイプなのでは…。
駿河 そうですね。体動かしてとりあえずリフレッシュしようかなっていうのはあります。一番上手かったのバスケで、ずっとチーム競技が多かったんですけど。でも、ひとりでいることのほうが楽なんですよね。
―自分と向き合って、あれこれ想像したり、自分の世界を作っていくのも好き?
駿河 最近はそうだと思います。特に、歳いけばいくほどそうなってきてる感じがする。もっと前は社交的やったんですけどね(笑)。なんか、逆にそういう部分の幅が徐々に狭まってきて、自分ひとりで考えることのほうが多い気がしますね。前はもっと外出て、いろんな人に会いに行ってた気がするんですけど。
俺はもう「やる」と覚悟しちゃったから…
―サーフィンにハマってるのも、役に向き合ってそれこそ自分の内面を深く掘り下げていくようなところに通じるのでは…。
駿河 うーん…通じてるのかな? でも毎回そういう役柄がくるとも限らないんで、役によってそういう突き詰めたりもするんですけど…全てが全てではないし。
―では、その30代のスタートで遅いということもありますが、さっき仰った生業として稼ぐ手段でもあり、好きで面白がれるクリエイティブなものでもあり、ご自身にとって役者とは? それこそキャリアでは長い太賀さんや林遣都さんが「一生続ける覚悟でとは簡単に言えない」と同様に語っていましたが…。
駿河 そうなんですね。でも俺はもう「やる」という覚悟しちゃったからな。続けられるかは別として、自分の中での覚悟は決めてるかもしれない。これでずっといくっていう。
―それはやっぱりこれまでの経験から、いろいろやった末に性根を据えたみたいな。
駿河 結局、それも覚悟の問題ですよね、何するにも。あと、やってきたことを捨てられるかどうかっていうのも重要で。例えば、『カーネーション』のことでも言ってくださるのは嬉しいけど、そこは一旦捨てて次にいくっていう。
『半沢直樹』もそうだし、去年でいえば『小さな巨人』もありがたいことに巡り合って、世間的な知名度も上げてもらっている気はするんですけど。そこは全部捨てて、次に何するか決めていくという。そのために捨てて諦めることができれば続けられるなって。
―以前の成功にしがみついて執着しても次に進めないしと。いい意味で、気持ちの断捨離をしていかないと?
駿河 断捨離、大好きなんですよ。精神もそうやし、ものに関しても結構バンバン捨てるほうなんで(笑)。執着ないから、昔のものとかほぼ残ってない。
―そうなんですか。潔いですね。
駿河 俺が持ってたら捨ててまうから、例えば、取材とかで「昔のなんかないですか?」って言うので探し出したものがあったら、それ全部、事務所に置いてます。
―(笑)過去にすがったり、思い出を見返すのがカッコ悪いとかもあるんですかね。
駿河 思い出も大事なのかしれないですけど。でも過ぎたことはもういいやってタイプなんで。今が一番で、その先どうなるかもわからないし。
―それだから、まだまだ先に進めるのもあるでしょうね。いちいちストレス溜めたり、シビアな業界で潰されそうになる人もいる中で、切り替えないとやっていけないという。
駿河 この仕事始めた時、オーディション散々受けて落ちまくったんですよ。半年くらい全然受からなくて。さすがにマネージャーにも申し訳ないし、向いてへんのかなとも思って。一番最初に受かったのがCMの仕事やったんですけど、オーディション行ったら、めっちゃハーフみたいな顔したモデルっぽい人ばかりやったんですよ。
マネージャーに電話して「絶対落ちるけど大丈夫?」みたいな(笑)。場違いすぎるっていう話もしたんですけど、とりあえず受けようと。「すぐ落ちるわ」って思ってたら、受かったっていう連絡がきて。あんなイケメンばっかりやったのに、なんで俺?って。
で、現場入った時に聞いたら、着てた服とか、この話し方とかもフランクな感じがよかったと。そこで振り返った時に、それまでオーディションやからって、すげーかしこまってた自分を思い出したんですよ。そこから、こんなんでもいいんやって覚悟ができたというか。
どのオーディションに行ってもこのスタンスでいこうって感じになっちゃって、そうしたら自然にちょこちょこ受かり始めたというか。
アカンかったら、もうしゃあないわって
―その他大勢と同じく、流行りっぽい感じに合わせないからこそ自分の個性が違って発揮されるんでしょうね。
駿河 そこに気づかせてもらったというか、そのラインでしか俺はムリだなって。それがアカンかったら、もうしゃあないわっていう諦めもね。
―だからこそ、流行り廃り関係なく長くやれるのではという期待もあるのでは…。
駿河 まぁそうですね。僕が役者として好きやなって思うのは、誰かの真似をしてない、その人にしかできない立ち位置でやってらっしゃる方々がカッコイイなって。それは小林薫さんをはじめとしてね。
―個性派俳優と言われ、主役でも脇役でも長年ずっと存在価値を発揮されてね。
駿河 そう。その人にしかできないことを、たぶん頑固になる部分と、ちょっと諦めてる部分と上手いバランスでいってはる人を好きになるのが多いから。自分もその路線じゃないと、たぶん無理だし。それで飽きられたらしょうがないなと。
―ちなみに、ふと思い出しましたけど、90年代くらいにある雑誌で筑紫哲也さんと黒澤明監督が対談されていて。そこで『七人の侍』の話になって、黒澤さんが「今、あの映画は撮れないよ」と。その理由が「あんな顔してる役者、七人いないでしょ?」って。
駿河 確かにそうかもしれない。
―みんな洗練された美形ばかりになって、あんな浪人風情のゴツゴツした芋みたいな野武士顔した男がいなくなったでしょと…。
駿河 いや、今もいるんですけど、実際そういう人らを集めれば…。でも難しいのかな?
―その中で客を呼べるイケメン俳優をメインに配さないと?
駿河 一概には言えないと思いますけど、誰か入れないと、まず金が集まらんみたいなところのジャッジになってるから。今は無理やと思います(笑)。
―今の発言にも反骨が出てますね(笑)。俺たちの世代にもいないわけじゃない!って。
駿河 深夜ドラマでもいいけど、こういうキャスティングで作ったら面白いよねって役者さんはいるじゃないですか。そこに出てる方々が培ってきたものがあるし、その人らが長いことやってきて、今になってできたことなんだと思いますけど。
―話題になった『バイプレイヤーズ』ですかね。それこそ脇役で存在感を放ってた個性派たちがクローズアップされて。そこにスポットライトが当たるのは救いというか、報われた感もあるなと。
駿河 そう。まだ捨てたもんじゃないなっていうところを考えさせてもらえる。
―常に時代も揺れ動きがあると思うので。どっかに光があたって、メジャーとマイナーがひっくり返ったりもね。
駿河 そこに左右されたくないっていうのもありますけど。
親も「自分でどうにかせえ」ってスタンスで
―結局、どの仕事にも言えるでしょうけど、自分の信念でやり続けられるかどうか。続けてこそというのはスゴく実感して。先ほどのCMオーディションのお話でも、他と違う個性で今も『七人の侍』顔のほうが人目を引くのもありでしょうし。
駿河 僕はじゃがいもや思うてますからね(笑)。今、売れると全員イケメンみたいに言われるのもすげー違和感あるし。「どう見てもちゃうやろ」って(笑)。まぁ、そこらもいろいろ面白いなって見てますけど。
自分が小さくまとまりたくはないなと。今のところ、そのスタイルを貫いてる気ではいるんで。そりゃ、器用にできればね、親父の名前ももっと使えばとかあるんでしょうかね。
―それこそダークサイドに転ぶというか(笑)、悪魔の囁(ささや)きが両肩であっても不思議ないですけど。
駿河 でも結局、僕は思ってないんですよね。さっきも言ってた通り、続けることが一番難しいじゃないですか? 自力がないのにパッて出たとしても、潰れるし潰されるし。時間かかっても、徐々に徐々に力つけてったほうが…一歩づつ階段登らないとダメな性分なんで。
これいけた、これまだあかんか、じゃあまた次やってみよう…ってのがちゃんと自分の中でね。雪道じゃないですけど、足跡つけて歩いていかないと自分が納得できないから。
―今まで歩んでこられた全部がそういうプロセスで。自分を作る糧(かて)になって、俳優業にも活かされてるでしょうし。
駿河 まぁ、いろいろ経験してきた…海外行かせてもらってとか、それが色になればいいなって思いますけど。
―それが許される環境であったのも、ありがたいのではと…。
駿河 はい。だからそういう親でよかったなとは思いますし。僕も子どもがいるから、やっぱ親になってわかるんですけど。まぁ苦しい時もあるんですよ。こっちがやったほうが早いって時もあるけど、そこを我慢してやらすっていう。そのイイ距離感で放っといてくれたのは、今考えるとありがたいなって。
―よく言いますけど、自由っていうことは、当然そこに責任が伴ってくると。自由にされればされるほど、自覚がないといけないものですよね。
駿河 そういう面では、甘やかしてくれなかったからよかったかなって。イギリスから帰ってくるまでは、金銭的には甘やかされたのもありますけど。帰ってきてから、俺も「自分でやる」って言ったし、親もそれでいけって…「自分でどうにかせえ」ってスタンスでいてくれたから。そこはよかったですね。
―それも「こいつは大丈夫や」って信頼があってのことなのではと。
駿河 そういう願いもあると思うんですけど。あとはやっぱ、僕が大学卒業する時に「どうすんねん」ってなって。イギリス行って音楽やるって言い出したアホがいるわけですよ。で、そこから2年間…まぁ奇跡的に巡り巡って、日本のレーベルと契約決まって帰ってきたんです。
それが初めのデビューなんですけど、親としたら結構でかかったっぽくて。ようわからんけど勢いだけで、メジャーと契約決まって帰ってきよったぞっていう感じはあったらしくて。最近話したんですけど、よっぽど嬉しかったらしいですね。そこで「まぁ、放っといてもいいか」って気になったとは言ってました。
次のお友達は、世に知られていない…
―それで今は役者に行き着いて。やっぱり生き様的にロックというか、それこそ反骨で一貫してる気がしますけど。
駿河 まぁでも、誰も役者をそんな長くやると思ってなかっただろうし…「30で役者なんか始めて」って。そこを納得させるっていうのは自分の中で思ってきたことやけど、まだ僕のことを知らない人らにも「いい役者だね」って言ってほしいのがやっぱあるから。そのためには続けていくしかないなと。
―「覚悟はもうあるんで」と仰ってましたし。この先、ますます楽しみというか。
駿河 それは僕もそうなんですよ。これからどういう役者になっていくか。
―自分自身が一番楽しみにしてる?
駿河 自分でも楽しみなんですよね。自分の中に絶対曲げられないもんはあるんで、どうなるかわからないですけど。曲げられないものも曲がっていく可能性もあるので(笑)。年いくと変わっていくじゃないですか? それも含めて、楽しみやなって。
―役者としてどう生き永らえていくか、見させていただければ(笑)。
駿河 まぁ、生き永らえるとも思ってないですけど、何かにしがみついてまでっていう気もないし。続けてはいこうと思うけど、そこの微妙なニュアンスが違うのは確かですね。
―でも、本当にこれから出てくる味も含めて、追っていきたいなと気になる存在ですから。
駿河 本当ですか? そう言っていただけるとありがたいです。
―いや、こんな大雪の中、お時間いただいて長々と(苦笑)。でも、やはり反骨なのかなと感じるのが、次のお友達候補もそうで。実は事前に5人挙げていただいたんですよね。このラインナップがまた骨太というか(笑)。
駿河 あははは(笑)。でもまぁ、知ってほしいっていうのもあるんですよね。全員オススメの人なんで。
―すごくそうなんだろうなというか…この人達を世に知らしめたい、もっと知られるべきみたいな思いが伝わるような。
駿河 そうですね、世に知られてないイイ人っていっぱいいるんですよ。「あぁ、カッコイイな」っていう人が。スポットライト当たってるところだけじゃないと思うし、この対談企画自体がそうやと思うんで(笑)。少しでも僕が好きな人達が広まってくれたら嬉しいなと。
―そこまで考えていただいて逆に恐縮というか、感謝ですけど。そういう男気もまた魅力が伝わりますし。そこでまた5人が5人、みんな男というね(笑)。
駿河 いやいや、言ってくれたら、女のコも中にひとりくらい入れてました(笑)。
―ブログとか見ると、女性もおるやん!とツッコミ入るとこですが(笑)。その中から、ある意味、今までで一番迷った末にミュージシャンの浜田ケンジさんということで。
駿河 浜田ケンジは僕、曲のPV出させてもらってるんですよ。まぁ、無骨な感じにいきすぎるかもしれないですけど(笑)。
―ありがとうございます! では、浜田さんで繋がせていただきます。本日はありがとうございました!
●語っていいとも! 第54回ゲスト・浜田ケンジ「鶴瓶さんにラジオでこんなに怒られるの!?って(笑)」
(撮影/塔下智士)
●駿河太郎(するが・たろう) 1978年6月5日、兵庫県生まれ。バンド「sleepydog」の活動を経て、30歳になった08年に俳優に転向。11年のNHK連続テレビ小説『カーネーション』でヒロインの夫、川本勝役に抜擢、注目される。2月17日公開の映画『サニー/32』、2月24日公開『たまゆら』、5月12日公開『孤狼の血』、9月28日公開『散り椿』他に出演