日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『クラブゼロ』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。「食べない」のが最も健康的!? 不穏すぎる食事スリラー!

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『クラブゼロ』

評点:★4点(5点満点)

Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023

人間はものを食べなければ絶対に死にます

金持ちの子弟が通う全寮制の学校に(といっても週末には帰宅できる)、新任の栄養学の教師がやってくる。

彼女が説くのは「コンシャス・イーティング(意識的な食事)」で、呼吸法などと合わせて、丁寧に少食にすることが、健康を改善し、環境破壊を食い止め、「マインドフルネス」をもたらすという教えである。

感化された生徒たちはどんどん少食になり、しまいには食べるのを止めてしまう。なぜなら「ものを食べなければ生きてはいけない、というのは教え込まれた嘘で(背後には金儲けしか頭にない悪の食品業界がある)、真理を受け入れれば何も食べなくても生きていけるのだから」というのである。

ちなみにこの主張は本作のオリジナルではなく、実際にそういうたわけたことを抜かす人々は実在するのだが、人間はごはんを食べなければ「マインドフルネス」の前に絶対に確実に死ぬので、うっかり本気にされないよう注意されたい。

危険なカルトは例外なく「エネルギー」とか「波動」とか「真理」とか「浄化」とかいう言葉を好んで使うが、本作はブラックコメディの手法でそういう危険な「食がらみのカルト」「健康カルト」のヤバい世界を描き出しているのだ。

STORY:名門校に赴任してきた栄養学の教師は「少食は健康的であり、社会の束縛から自分を解放することができる」と生徒たちに説く。生徒たちはその教えにのめり込み、「クラブゼロ」と呼ばれる謎のクラブに参加することになる

監督・脚本:ジェシカ・ハウスナー
出演:ミア・ワシコウスカほか
上映時間:110分

全国公開中

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